▼ゆっくりと、なるべく音を立てないように慎重に扉を開く。そして未だ明るい灯りが灯された部屋を見渡し、そろりと俺は扉から隙間を縫って入っていく。

時間は意外と進んでいなくて、まだ23時少し前。それに安心するも、俺は未だに抜き足差し足で部屋の先、五つ並べてあるベッドの方へ向かった。


▼ギリギリ、ギリギリ、聞き覚えのある耳障りな音。ガジルの歯軋りだ。それを耳にして「あいつは寝たのか」っと直ぐ理解した。なんて分かりやすい。

ちらり、壁をつたい歩きベッドで寝ている姿を確認してみる。

するとそこには案の定、歯軋りしているガジルと、それに魘されながらグレイ人形を抱き締めているジュビア。そして酒場でもう寝ていたミラがいて。

ん?あれ?もう一人肝心な奴が…

一番寝ていてほしい金髪ゴリラがベッドにいない。なんでだ、と首を傾げた瞬間、後ろから、何者かにがしり、と頭を掴まれた。


▼「………」

「あ、あはは、たたたただいまぁラクサスさーん…!」


ぐぎっと半ば無理やり首を動かされ、そちらに顔を向かされる。

そして目に映ったのは、もうシャワーを浴び終わり、少し髪のしなれたラクサスが、物凄い怖い形相で俺を睨んでいたのだ。


「…遅くなるなって言ったよな?あ?」

「いだだだだごめんごめんん!!あれだったら先に寝ててよかったのに!!」

「あ゙??」


ギリギリ、ミシミシと頭を掴まれた手に力を込められて、あまりの痛さに腕を右往左往してもがくも、ラクサスはかなりのご立腹なようで。


「いぎぃい!だからごめんって!ごめんぴょん!ごめんぴょん!ぴょん!」

「ぴょんぴょんうるせぇ」

「ぴょぉお゙お゙ん゙!?」


容赦のない締め付けに、涙目になりながら謝るも逆にまた力を込められて、寝ている奴等が近くにいるのに叫びそうになった


▼「…っち。」

「いてて…」


充分満足したのだろうか、舌打ちと共にパッとラクサスは手を離してくれた。同時に俺はあまりの痛さに頭を抱えて泣きそうになる


「何してた」

「あー……話し込み過ぎたというか、あっ!でもそんなに時間経ってないからオールOKじゃね??」

「どの口がほざいてやがる」

「あ゙い…ずみ゙ま゙ぜん゙」


そんなこと言える立場じゃねぇだろ、と言わんばかりに、またわしっと頭を掴まれて、俺はしょんぼりと肩を落とした。






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