▼ナツの激情に任せた怒号が響き、ゆっくりとフェードアウトしていく。それを口を開かずに聞いていた剣咬の虎たちは、各々が眉を潜ませナツを睨み付ける。

その中で、ローグだけが彼から小さく目を反らした…。


「(支え合い、大切にしていく…。それが…仲間…)」


揺れ動く感情、これでいいのか、と自分に問い掛けていた、小さな痛み。しこりのように残っていたそれが、ナツの言葉で仕切りに広がっていく。


俺たちとは全く違うギルドの在り方。強さを定義にしていた俺たちにはない…、温かくて堅い絆。他人であっても、思いやる心…。

これが、妖精の尻尾…。


▼「…っはは!」

「…なっ!?なんで笑うんだよ!母ちゃん!?」

「ごめんごめん…、何だか嬉しくて…!」


ナツの思いの丈。怒りの理由。それがやっと理解したと同時に、何故だが途端に胸が怒りで熱かったのが、今度は温かく染まっていった。

その拍子に表情筋が緩み、ついにんまりと笑ってしまう。ああ…ナツ、お前は本当に真っ直ぐで、優しくて、とても良い子だよ…。

そして、少しでもナツと同じような感情を持って怒っていたのが…俺は何よりも嬉しいよ。


▼「俺たちが勝った時の条件だけど」

「よい。何でも申せよ」


怒り一杯で握り締めていた手も、気が付けばもうさっぱりと解いていて。代わりにやってくる指の痛みが逆に今は心地よい。

そうして、何故だが爽快とした気分で、未だに余裕で俺たちを見据える剣咬の虎たちを見渡す。


「お前たちのギルドを、仲間を思いやり、大切にし、互いが笑えるような、楽しくて明るいギルドにしてくれ。」


それが俺たちの条件だ。






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