▼ああ、そうか。コイツらは…
さっきのが俺たちの実力だと、自分たちで品定めして決め付けたんだ。
この襲撃がナツの本気だと勝手に決め付け、それがナツの実力だともう見切り付けやがった。
「(こんなもんじゃねぇ…!)」
それを…襲撃だけでしか垣間見ていないのを、仲間たちもこんなものだと、ギルドにまで重ねやがった。
大好きで、大事で、皆で護ってくれた、この妖精の尻尾を。
俺の大切な家族を、馬鹿にしやがった。
「(ナツの実力も、仲間たちの実力もこんなもんじゃねぇよ…!!!)」
▼俺はナツと同じように、自分の怒りを耐えようと必死に拳を握り締め、熱を逃がす。
力を加えた時にミシミシ、ギシギシと自分の力に耐えきれなくて骨が軋む音も、痛みも、今は何も感じ取れなかった。
そのまま骨が折れても構わない、それほどの侮辱をされたと認識したからだ。
▼「…ナツ」
それでも、声はあまりにも酷く冷静に出せた。対照的に右拳は真っ赤なのも知らず。
今にも殴り掛かってしまいそうなナツを宥めるつもりでも、自分で冷静な声を出せたのは幸いだった。
「あぁ!?」っと表情は最早青筋を立てた爆発寸前な怒りが露で。その表情のまま、ナツは食って掛かるように俺の方へ勢いよく振り向く。
それでもあくまで冷静に。
▼「…なんでお前は、ここに殴り込みに来たんだ?何か理由があるんだろ?」
「っそれは…!」
俺がナツに問い掛けた、その瞬間だった。俺の言葉が起爆スイッチだったのか、ナツがこれでもかっ、と吼える勢いで怒号を響かせた。
▼「コイツらは!!!たった一度の敗北で仲間を捨てやがった!!!支えてやることも、迎えてやることもせずに!!!ひでぇ仕打ちをして!!!」
建物がまるで震動するかのように、ナツの怒号がビリビリと辺り中を轟かせる。
そして怒りの感情の狭間に、ナツの中で垣間見えるのは、自分の目の前で足を崩し、泣き崩れたユキノの姿。
『もう帰る場所なんてない』っと全てが消えてしまったと、一度の敗北で絶望に涙する彼女。
それが更にナツの怒号を掻き立てる。
▼ギルドってのは、互いが互いを支え合って成り立つもんだろ!!俺はそんな中で育ってきた!!!
温かくて、優しくて、互いに競い合って、笑い合って…ギルドってのはそういうもんだろ!!!
「だから!!!てめぇらみてぇな、仲間を大切に思わねぇ奴等が許せねぇんだよ!!!」
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