▼この者が発した言葉、…恐らく先程妾が捕らえた猫のことを言っているのだろうか。

妾がもしも、のための切り札として一応捕らえたものが、まさかの仇になるとは…。何処かで見ていたにしろ、随分と怒りを買ってしまったようだのう。


「“仲間”って…、母ちゃん…!?」


理解をしていないのだろう、魔力に当てられながらも、余裕を残しながら焦り顔をする桜髪の男性。

どうやら、妾たちほど重みを感じてないのだろう。それが妖精の絆とでも言うのだろうか。

その男が、魔力を上げた張本人に言い寄る姿を見て、そこに便乗しようと思い立つ。


▼「っ、察しが良いの」


重々しい魔力の上昇に左右された空気の中。妾はゆっくりと左手を上げて“絶対領域”を発動させる。

そして『敵意はない』と意思表示のため「はじめからそのつもりであった」っと付け足し、先程捕らえた青猫を彼女と桜髪の男の前に落とした。


「ハッピー?!!」

「うわぁん!ナツぅーごめんよぉお!!!」


すると、やはり男は気付いてなかったのだろう、その青猫の姿を見て驚愕に目を丸くさせる。そして直ぐ様青猫に駆け寄り、縄を解いていった。


▼「オイラ…入り口で捕まっちゃって…」

「そうだったのか…。ごめんなハッピー…。いや放っておいた俺が悪かった。」


縄を解いてもらい、泣きじゃくりながら男に抱えてもらう青猫。申し訳ないと眉を垂らし、言葉を漏らす男。

その姿を妾と女は静かに見やる。


「これで分かってくれただろうか?」

「………。」


そして「母ちゃん、ごめん」っと桜髪の男と青猫が、その女に頭を下げる。その瞬間、先程まで重々しくあった大きな魔力の上昇が一気に消えていった。


▼一気に軽くなった世界の中。重みの原因だった女は、直ぐに先程までの殺伐とした雰囲気を消し去り、明るく笑いかけると、ポスンッと二人の頭を軽く撫でる


「二人とも無事で良かった。ほら、行くぞ!」


これ以上遅くなっちまったら皆が心配しちゃう、と先程までの姿など皆無。

まるで悪夢だったかのように現実を帯びないほど、女には『怒』の一欠片も消え、揚々とした態度で妾たちから背を向けた






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