▼「な、何言ってんだよ母ちゃん?!」
ジエンマとミネルバを前、そして周りに人がいるのにも関わらず、腰を下り頭を垂れる塑琉奈。
その行動に、あまりにも予想外過ぎてナツが声を荒げる。それでも、塑琉奈はその体勢を崩さない。
「ほう…?」
「ぬう…」
慌てて塑琉奈の傍で「なんでだよっ!」っと声を荒げるナツ、そして周りはその塑琉奈の行動に困惑を落とす。
同時に神妙な面持ちでミネルバは彼女を見やった。
▼「まさかお主のギルドの中に、利口な者がおったとはのう。」
「ぐ…」
「なぁに、気にするでない。攻めてきたのがそちらであったにせよ、お主の煽りに父上も部下の手前、少々熱が入り引くに引けぬ状況であったのは事実。」
「……」
静かにミネルバが口を開く。「ウチのマスターが大魔闘演武の出場者を消しては立つ瀬がない」っと続けた彼女の言葉、それに拳を握り締めナツはミネルバを睨み、塑琉奈は黙ったまま。
「だが主らからそう申し出てくれるのは、実に有難い。この件は勿論不問にしてやろうぞ。」
そこまで言い、くすりと笑うミネルバ。その瞬間だった。
▼ズゥンッとでも言うような地響きが、一気に建物に襲い掛かる。そして、それと共に建物内にいた人たちの背に、重力がのし掛かってくるような重みが襲った。
「ぐっ…!?」
「な、んだこれ…魔法…!?」
それはその場にいたミネルバもジエンマも、スティングたちも、ナツも例外ではなく。
あまりの重みに、ローグが歯を軋ませて踏ん張る。その隣で何が起きたか分からないスティングが、疑問を口にする。
「…勘違いするなよ」
そのあまりの重みに周りにいた人間たちが徐々に膝を付く。それと同時にゆらり、と塑琉奈は顔を上げた。
「こっちは仲間を返してくれれば、全員潰さないでやるって言ってんだよ」
その顔は、目を据わった、ひどく静かに怒りを露にしている、鬼神そのものだった
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