▼もう多くの人が寝ている時刻、その深夜の暗闇の中、ドォンッと突然の爆音と火柱が一瞬にして建物を覆った。
その衝撃があまりにも近くに耳に入り、微睡みをかき消して俺は反射的に起き上がる。
「起きろスティング!!!侵入者だ!!」
「侵入者だぁ!?」
その瞬間、ベッドから飛び出るも先に、扉を勢いよく開けたのはローグだった。
▼「剣咬の虎全員が泊まっている宿だぞ!?一体誰が!?」
「さぁな!ただ…生きて帰るつもりはないらしい…!」
バタバタと忙しなく準備をし、直ぐ様上着を翻す。同時に突然のことに思わず冷や汗を溢す
そんな自殺志願者、今時笑えねぇぞ!っと内に思いながらローグと共に廊下を掛けていく。
すると自分たちの目の前で、他の奴が爆風と共に飛んでいくのが目に入った。
その爆風が俺の冷や汗を撫でる。
▼次から次へ、剣咬の虎の奴らたちが燃え盛る火と爆風に蹴散らされていく。そしてその中で、聞き覚えのある声が聞こえた。
「マスターは何処だ…?」
建物内に広がっていく煙が徐々に風に靡いて、横に流されていく。
煙たい、喉が焼け爛れたような消炎の香り。その香りと煙が晴れたその中心には、あの…ナツ・ドラゴニルが立っていた。
▼「妖精の尻尾?」
「ナツ…さん」
「……」
なんでこんなところに…っと目の前で、眼孔鋭くさせたナツさんとその怒りに満ちた雰囲気。
「マスターにケンカを売りに来た、だと?」
それに俺とローグ、ルーファス、オルガ、そして周りの連中はまるで蛇に睨まれた蛙のようにその場を動けなかった。
だらだらと次々に冷や汗が滴り落ちる。体が動けない代わりにギリッと歯を軋ませる。
「ワシに何か用か、小童」
それを取り払うように、負けじと強きオーラを放ったマスターが俺達の前から一歩先をに踏み出した。
▼マスターの姿を見た瞬間、ゴォッとナツさんの周りに纏われた炎と間量が一気に渦を巻いていく。
そして、殺気立った彼の表情から出た言葉は、ユキノの事が放たれる。
「(何言ってやがるんだ、この人は…?)」
アンタには関係ねぇ事だろ!?どこで何を知ったか知らねぇけど…そんな事で乗り込んで来るかよフツー!?
それでも目の前でマスターに静かに睨みを効かせるナツさん。
その彼からは冗談何てものは微塵も感じなくて。瞳からは、本気と言わんばかりの気持ちが篭って。
逆にそれが理解できなくて、代わりに現れたのは震える唇だった。
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