▼あと少し。この道を曲がって真っ直ぐ言ったところに確か酒場があった筈。

その酒場まで、あと少しという道すがらに、チャプンっと俺の目の前に現れたミント。その口から彼の伝達を聞いて「だよなー」っと苦笑いするしかなく…。

流石にもう時間も時間だし、と思うと、少しだけでも待たしてしまったラクサスに対して、申し訳ない気持ちになった。


▼「取り敢えず酒場の片付けでも手伝うか」


どうせここまで来たんだし、っと少しだけ口を尖らせる。

そして、ちゃぷちゃぷと歩幅を合わせるように隣で浮いてるミントに「なっ」っと同意を求める。

するとキュウっと一鳴きして頷いてくれた。


▼「やっと着いた」


然程遠い距離を歩いたわけではないのに、何故だか長い時間さ迷っていた感覚。それが目の前にある酒場を見て取り払われる。

何だかんだ話し込んでしまったり、新たな発見に嬉しくなったりと、この酒場までの帰路に意外と色々あったものだ。

それは勿論、時間がそれを報せてくれたようなもので。


▼さてやっと入るぞー、とうーんっと体を伸ばす。そして酒場の扉に手をつけようとすれば。


「ミント?」

「キュ…!」


俺が入ろうとした動作をして、隣にいたミントが未だ酒場の前でピタリ、と動きを止める。

そんな子の視線は何故か酒場ではなく、自分の後ろの遥か先。


「どうした?」っとそれに首を傾げ、手に掛けた扉から離す。そしてミントが見てる先を辿ってみる

「なんだ…?」


その遥か先には、暗く真っ黒な空の中にある月を差すように、ユラユラと立ち上がる一線の煙を捉えた。






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