▼酒場に付いてみたら、これがまたもう宴会はお開きのようだ。
ミントに運んで貰った酒の樽はもう少ししかなく。逆にこの短時間でよく飲んだものだ、と所々寝ている仲間たちにそう溢す。
「ラクサス!良かった止めてくれ!」
「いやぁあグレイ様ぁああ!!!」
「逃げることは許さんぞグレイ!」
その酒場の中で未だに一悶着してやがる、グレイとジュビア、その他の顔触れ。全く…もうマトモなのはいねぇみてぇだ。
「自分でなんとかしろ」っと助けを求めたグレイをあしらい、さてどうしたものか、と酒でダウンしている仲間の海を見渡す。
▼「(一応、待った方がいいか)」
そう呟いたものの、時計を確認してみればもう時刻は深夜と紙一重。もう子供なら寝てもいい時間だ。
「こう静かだと、逆に調子狂うな…」
酒を飲む気分でもねぇし、まあたまにはこういうのも良いかっと、俺はまだ騒がしいグレイたちを見つめた。
つい「先に戻ってる」と塑琉奈に言ったものの、案外傍にいねぇと改めて、どうしたものか、とぼうっとしてしまう。
すると、俺の左側。腕と脇腹の間から、ぐいーっとミントが顔を出した。
▼「おっと。まともな奴が一人いたな」
「キュ?」
ギョロリと大きな目を此方に向かせ、俺の腕の中でいそいそと顔を出す姿。そんなミントの鼻先を撫でてやる
「もう来そうか、塑琉奈は」
「キューキュッ」
擽ったそうに目を細めるミントを見下ろしながら声を掛ける。すると少しうーん、とでも言うように首を傾げる。
それに「遅くなるなよ」っと言ったんだがな、とごちる。
「仕方ねぇ、ミラを連れて宿に戻るか」
塑琉奈に伝達頼むぜ、と更に鼻先を撫で繰り回し、きゅうきゅう、と鳴き声を漏らすミントから俺は離れるように立ち上がった。
そして、寝ているミラの方まで歩み寄る。
よいしょ、と軽い彼女の体に腕を回し、一度ミントの方に振り返る。そこにはもう奴の姿は無くて。
どうやら了解、したようだな。
俺は、ミラを抱えながら「全く…」っと塑琉奈に対してため息漏らし、俺は酒場を後にする。
途中から「待ってくれラクサスー!」っとグレイの助けが聞こえたが、聞かなかったことにした。
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