▼トライデントの外で、ああ、ああ、っと唸りを上げながら、ベタベタと壁に引っ付く一夜化した人々。


「んん…塑琉奈か…、いい香りだ、クンクン…」

「母さん…メェーン…」


そして、目の前には、体勢を直し、こっちを見据えて魔力を上げてやがる一夜化したラクサスとナナシ。


「くそ…、二人とも随分イケメンになりやがって…!」


そんな二人が揃ってメェーンと言うのに、塑琉奈は顔を引きつらせながら、一気に身構えた


▼「バインド!メェーン!」


シュバッとナナシの右腕のベルトたちが伸縮自在に伸び、次々と塑琉奈に襲い掛かってくる。

それをピョンピョンと身軽に避けながらに、そのベルトに向かって「トライデント!」と叫ぶ

すると壁となった槍たちとは別に、壁の空間の中で別の無数の槍たちが、ズバァッとベルトたちを千切っていく


「メェエエーン!!」

「っく…!」


同時に背後から、直ぐにラクサスの鉄拳が飛んでくるのを、塑琉奈はしゃがんで避ける。

そして、地面に両手を付けたまま、ぐるんっと体を曲げる。そのまま足をしならせて、背後にいるラクサスの顎を、パァンっ、パァンっと一発、二発っと蹴りあげた


「らぁっ!!」

「…っくう!?」


その蹴りで、ぐわんっと顔を上に上げ、体ごと怯んだラクサス。その隙を逃さんと、塑琉奈は素早く足払いしてラクサスの体勢を更に崩す。

そして、地面に膝を付いた彼に拳を振り上げる。

けれど同時に、視界の端に赤い一線を捉えた


▼刹那、ズバァッと何かが斬られる、不穏な音が辺りに響き渡る。ふわっと、斬られて出来た白い布の残骸が…空中に舞い上がった


「く、そ…!」


黒い髪を靡かせ、塑琉奈はギリッと歯を軋ませて、目の前の、刀を持ったナナシを見つめる

彼女の纏っていたTシャツは一瞬にして斬り刻まれ、所々ボロボロとなっては、床に落ちていく。

間一髪避けたのだろう、塑琉奈の腹には切り傷は出来ず、代わりに顎に、縦に赤い一閃が刻まれた






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