▼「お、らぁっ!」
「ぐっ、…?!」
「がふっ!?」
バチィ、と受け止めた双方の拳と刀を前に押し退け、一瞬よろけるラクサスの顔に、一気に渾身の拳を振り上げる。
同時に左腕で止めたナナシの刀を手に握り、バキンっと握り潰す。そしてそのまま、ナナシの懐に凄まじい右足の蹴りをお見舞い。
すると、あまりの勢いと、塑琉奈の攻撃の風圧に、ラクサスとナナシは小さく呻きながら、地面にズササッと落ちていった。
「母ちゃん…なんで…」
「ナツの作戦を手伝いに、な!」
塑琉奈の姿にポカンッとしながら、彼女を見やれば、塑琉奈は此方を向いてニカッと笑い掛ける
そして、彼女は宙に浮いたノートを光らせ、「絵描入門、トライデント」っと唱えた。
▼どんどんと地面から矢印の形をした光の槍たちが無数に飛び出てくる。
その槍たちは幾度か屈折しながら、まるでバリケードを作るように、円を描きながら塑琉奈とナツの間に光の壁が作られていく
「ここは俺が食い止める」
そう視線を前に戻し、塑琉奈が目の前でゆっくりと立ち上がるラクサスとナナシを見やる。
その二人を見ながら、ゴキ、ゴキ、と肩と首を鳴らす塑琉奈。
「けど母ちゃん…!」
「行け…!」
どんどんとギルドが見える道。そこに集まろうとする一夜化した人々を遮るように、トライデントはラクサスとナナシ、そして塑琉奈だけを取り残す
そして、塑琉奈の言葉と同時に、ナツの体が途端に浮き上がる。
それは、一つのトライデントがナツを乗せて、シュバッと動き始めたから。
「母ちゃんーーーー!!!!」
そして、そのナツを乗せたトライデントは、カッカッカッ、と何度か屈折しながら、確実にギルドの方へ向かった。
▼「…ったく…」
ナツを先に行かせ、トライデントで作った壁の中。もう邪魔も入らないこの空間の中で、塑琉奈はすうっと深呼吸。
ミントにたくさん魔力を注いだから、恐らくいつも以上に回復速度は速いはずだ…。
俺がコイツらを相手をしながら、ミントが街の人たちを治していけばいい。足止めだけで充分だ。
それにまだナツの作戦っていう希望だってある…。
「(何より…ラクサスの攻撃も、ナナシの攻撃も受けたくねぇし、極力こっちも攻撃したくねぇ…)」
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