▼バチィ、バチィ、と次々と雷がナツ目掛けて放たれる。それを避けながらに、ギルドへ向かおうとして、またナナシのベルトに拘束されて逆戻り。


「ナツぅうう!!!!」

「ナツ!!!メェーン!!!」


何とか拘束を逃れようと、また身体中に炎を纏う。それでも、またぐるんぐるんと新しくベルトを巻き付けられてしまう。まるで「逃がさない」と言うように。

そして、もがくナツを目の前、ラクサスとナナシが声を張り上げて一斉に飛び掛かる


「く、そ…」


それを目にして、ナツは覚悟を決めたのだろう。唇を噛み締めたまま、ゆっくりと、彼は瞼を閉じた。


▼「……?」


瞼裏の真っ暗な世界。まだ瞼は開いてない俺は、何故か不思議な気分になった。

なんでだ?なんで殴り掛かってこない?

そう、それはこれから来るであろう衝撃と痛みが来なかったから。

俺は確かに、ラクサスとナナシが殴り掛かってくる瞬間に目を閉じた。痛みと、覚悟を決めて。

なのに、痛みも衝撃も、クンクン匂いを嗅ぐ動作も感じられない。

何が…起きた…?


▼未だに自分に襲い掛かってくる筈の恐怖がやってこない。ナツはそれを不思議に思いながら、ゆっくりと瞼を開く

同時に、いつも嗅いだことのある、温かい優しい匂いが鼻を掠める。

そして、瞼を開き、そこに広がっていた世界は、頼りになる、広く力強い、男前な白い背中


「っ母ちゃん!?」

「ちょっとお痛が過ぎるんじゃねぇのか…?ラクサス、ナナシ!!!!」


そう、そこには、ギリギリとラクサスの拳を手のひらに受け止め、ナナシの刀を腕で防ぎ、踏ん張りながらニヤリと笑った、塑琉奈の姿があった






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