▼「はぁ…はぁ…」
全力で逃げてきたのだろう、息切れを落ち着かせようとロメオは、一人、壁に手をつきトントン、と胸を軽く叩く。
そこに「ロメオ…くん!」っと上空からシャルルと一緒に逃げて、一夜化した人々を避けたのだろうウェンディが、駆け寄った。
どうやら彼らはまだ無事なようだ。
「無事だったんですね…!」
「ああ…、けどもうギルドはダメだ…。父ちゃんも、ワカバおじさんもやられた…」
「そんな…!」
合流に互いに安否を確認する間もなく、二人の顔には焦りもそのまま、額には冷や汗が流れ落ちる
そして、彼から発せられた現状にウェンディとシャルルは、ショックのあまり顔を歪ませた
▼「一体なんでこんなことに…」
「何か、策はないのかしら!?」
「策…ってほど自信はねぇけど、思い付いたことはあるんだ…!」
二人が悲しみを半分に、複雑そうに眉を潜ませる中、ロメオがまだ諦めないっと言わんばかりに、凛々しい顔へ変える。
そして、「それって…」とウェンディが問い掛けようとした瞬間、三人の周りから「メェーン」という、あの恐怖の声が響いた。
同時にぞろぞろ、ぞろぞろと一夜化していった人々がゆっくりとロメオたちに襲い掛かる
「囲まれた…!」
「くそ…!」
一夜化した人々たちは四方八方からやってきて、直ぐにウェンディたちの退路を塞いでしまう。
それにウェンディとシャルルが身構えたと一緒に、ロメオは舌打ちを溢した
▼「ウェンディ姉!シャルルと一緒に飛んでくれ!」
「けど、それじゃロメオくんが…!」
「オレのことはいい!!!行って!!」
ロメオの言葉に、ウェンディは直ぐ様に彼の背を見やる。それでも、彼は振り向かずに続けた。
「空に上がったら、ナツ兄と塑琉奈母ちゃんを探してくれ!きっとあの二人なら…何とかしてくれる!」
「でも…!」
「母ちゃんなら呼べばきっと来てくれる!」
エルザ姉がナツ兄に渡した消臭ラクリマ…、きっとそれならコイツらを倒せるかもしれない…!
それに…あの時、母ちゃん言ってたもんな…。『何かあったら、直ぐにお前たちんとこ来てやる』って…!
鮮明に思い出すのは、ナツと自分の体臭について、エルザが注意をして、何かを渡した記憶。
それと一緒に、塑琉奈の魔法を説明してくれた時に、ロメオとルーシィに笑い語りかけた、彼女の言葉。
その二つに、ロメオは望みを掛ける
「行けぇえ!!!!」
そしてロメオの大きな声と共に、シャルルが身を切る思いでウェンディを抱えて空を飛んだ。
空を飛び徐々に地上から離れていくその瞬間、ロメオが一夜化した人々に飲まれていったのをウェンディは、ああ…っと涙を溢した
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