▼「お待ちどー…っうわ?!」


料理も出来て、レバニラ炒めとオムライスを手にひょこっと顔を出した瞬間、突然ドンッというぶつかる音と同時に、グイッと直ぐ様誰かに抱き上げられる

いきなりのことにバランスを崩し、せっかく作った料理が手元を離れてガシャンッと床に皿の割れる音が響き渡る

俺はそれにああー!っと声を上げて直ぐ様自分を抱き上げただろう奴の顔を見やれば


「おい?!いきなりなんだよラクサス?!離せ!!」

「黙ってろ!!」


抱き上げた本人、ラクサスの表情はあまりにも深刻な切羽詰まった顔をしていて。

俺を抱き上げて素早く二階へ足を進める。


▼そんな彼に「どうした…?」っと声を掛けてみれば、代わりに返ってきたのは周りに響き渡る「メェーン」という声。


「ななななんじゃこりゃあああ!?!みんな一夜さんになってるぅうう?!?!」


それに顔を前に戻して、俺は一気に顔を歪ませた。何故なら、ギルドにいた面々たちが、みんなみんな、一夜さんの顔になってやがる。

しかもポーズ決めてメェーンとかくんくん匂いを嗅ぎながらこっち来てやがる!!おいおい…俺が料理してる間に何が起きたんだよ?!?!


▼「ラクサス!説明しろ!なんだよアレー!!みんなイケメンになってるよ?!」

「てめぇの目は節穴か塑琉奈!?」


どこがイケメンだっと吐き捨て、俺を抱き上げたままに、ラクサスは一気に二階へ駆け上がる。はあはあ、と全力で走ったのか、たらりと彼の頬に汗が垂れた。

そして「よく分からねぇが、匂いを嗅がれるとああなっちまうらしい」っと焦りもそのままに、素早く俺を床に下ろす。


「さっさとミント出せ!此処はもう駄目だ!」

「お、おおお、おう?」


未だに状況は把握出来てないが、目の前にこれ程焦りを顔に出しているラクサス。そして階段から徐々に聞こえてくるメェーン、という声。

それに、流石に四の五の言ってられねぇみたいだ、っと俺は言われるがままにノートを宙に浮かした。


▼その瞬間だった。

バリンッと二階の窓ガラスが音を立てて割れて、破片が一気に周りに飛び散る。

そして、その窓から誰かがバッと華麗に入ってきて、俺とラクサスの前に立ちはだかる。

マントを翻し、右腕のベルトを魔法でウネウネと動かし、俺たちを見るそいつ


「母さんメェーン…」


そう、それは一夜の顔をしたナナシの姿だった





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