星雲に夢うつつ
▼藍色から紺色に空は変わり、雲が消えて星が点々と月を中心に散りばめられていく。
そんな空を見上げながら、座り込み、一つの墓石に寄り掛かる。
いつまでも綺麗で輝く星たち。暗い空に自分の場所を明確に照らす月。今日は半月の日みたいだ。
その半月を目に映したまま、ゆらゆら、ゆらゆらと自分の体が心臓の鼓動に合わせて揺れるのを、心地よく受け入れる
ゆらゆら、ゆらゆら。
ゆらゆら、ゆらゆら。
「ん…」
今頃、皆さん…は、いつも通りの生活をしているのだろうか。お酒を飲み、笑い、歌って、食べて。温かい夜を過ごしてくれてるだろうか。
皆さんに、何も言わずに出てしまった私を、後からになって…探してくれるのだろうか。
…いや、諦めてくれるだろうか。
そう考えれば、考える度に、罪の意識と溢れ出る謝罪だけが彼女の脳を支配し、眠気が更に、それを忘れさせないと言わんばかりに、揺らめいて、際立っていく。
▼規則正しく一秒に一回の鼓動を繰り返すそれを、身体中に響いていくのに、同時に心地よい眠気もやってきて。シキミの意識を低下させる。
『よーうシキミ!今日も元気に歌うかぁー?』
『おはよう、シキミ。今日はこの本を一緒に読もうか』
『シキミ様、お菓子を作ったので良かったらどうぞ。』
そんな落ちていく意識の中、脳内に罪の意識とは別に、今まで自分を良くしてくれた、優しくしてくれた、オルガやルーファス、ユキノの声がこだまする。
『シキミ。よく寝れたか?昨日は五月蝿かったからな。心配だったんだ。』
『フロー、シキミ、すきー』
『シキミさんが好きそうなもの、僕、調べてみましたよ!』
そうして、ふわふわ、泡のように次々と浮かんでいく温かい言葉の声の数。ローグ、フロッシュ、レクター…、そして最後は
「…っシキミ!!!!」
あと少しで眠りに落ちるシキミの意識の中。不意に頭の中でこだまするよりも先に、直接耳に入ってきたのは、大きな彼の声。
その、直接耳に、頭に、体に響いた声にビクンッと一気に身体中が反応して、うつらうつらと閉じかけていたの瞼がパチリっと開く。
マ、スター…?