消えた事実は僕らに爪痕を残す

▼バタバタと、レクターが俺たちの元へ走ってくる。その彼の表情から、とても深刻な、額に冷や汗を流したままの焦りがただ漏れていた。


「どうしたんだ、レクター?」

「あ、あ、あの、スティングくんは…!?」

「スティングなら少し前に出掛けてしまったけど」


俺の足元までやってきて、はあはあと息切れに苦しそうに顔を歪ませながらも、彼は顔を上げる。

その様子に俺とルーファスが首を傾げれば、レクターから切羽詰まった声が張り上げられた


「シキミさんが!シキミさんがいなくなってしまったんです!!!」


その言葉を聞いた瞬間、俺とルーファスは一瞬にして驚きのあまり目を見開いた。同時にサアッと血の気の引く感覚が体を襲ってくる


▼「っ何があったんだ!?」

「それが、先程気が付いたら扉が開いてて…!医務室の中へ入ったらシキミさんの姿がなくなって…!」

「ついさっき気付いたんだね?」

「は、はい…」


落ち着く間もなく、不意に声が荒げるローグにレクターからの説明が入る。それに顎に手を当てて考える素振りをしながらルーファスもそれに聞き入れる。

そして、未だ落ち着きのないローグの肩を叩き、ルーファスは静かに「取り敢えず皆にこの事を伝えよう」っと言い放つ


「いつ扉が開いていたかが明確じゃない。もしかしたら、今まで僕らが「医務室にいる」って誤認識してしまった可能性も高い。」

「それって…」


ルーファスの落ち着きのある。凛とした声が二人に掛かる。そしてルーファスの言葉は、同時に更に不安を掻き立たせるものであった。


「…最悪の場合、僕らの探索が不能になる場所まで行ってしまうかもしれない。」


そうなる前に、一刻も早く彼女を見付けないと。

そこまで口にして、キュッとその口を結ぶルーファス。それには彼の中への自責が落ちていて。

交代で彼女の様子を見に行くとき、一度は扉に触れるべきだった。扉の異変に気付くために記憶しておけばよかった…と、


▼「っ、あくまで可能性の話だ。今はいち早くシキミを見付けよう」

キリがない、と自らのその自責を名残惜しくも断ち切り、ルーファスは首を小さく横に振る。


「レクターは皆にこの事を伝えてくれ。俺はこの事をスティングに伝える!」

「はい!」

「僕は先にシキミを高いとこから探してみよう」


そしてルーファスの切り替えに、レクターとローグもそれに乗るように迅速に足を動かした。

同時に、直ぐ様ルーファスは外の方へ走り出した。






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