それからの彼女と彼は
▼「…まだ出てこないのかい?」
「ええ…、食事も手付かずで」
あれから一週間が経った。
あのクエストで意識を失ったシキミを医務室へ連れて寝かした後、1日が経ってから、彼女の様子を見ようと、ユキノが食事を片手に医務室のドアノブに手を回した時だった
医務室のドアには鍵が掛けられたのか、いくら回しても扉は開けられなくなっていて…。それはシキミが掛けたものだと直ぐに分かった。
▼それから一週間の間、はじめはルーファスが扉越しに声を掛けようとも一切の返事はない。
続けてオルガが歌を歌っても、ローグが「少しでも顔を出してくれ」と頼んでも、彼女は、シキミは…一向に顔を出す他、返事さえもしてくれなくなった
「スティング」
「…なに?」
「…いや」
そしてスティングは、それを知ってから、彼から扉へ近付くことをやめた。
同時に、いつもは明るくて意気揚々とした彼が、とても静かになったのを、ローグをはじめ、皆内心気付いていたのを、スティングは知らない。