掌に罪が落ちる前に

▼「スティングやめろォオ!!!」


そんな魔力の渦の中、シキミの目一杯映るスティングの姿。それを切り裂くように、ローグの怒号が響き渡る。

同時、黒い魔力の煙を纏ったローグが一瞬にして、スティングの左頬を勢い付けて、殴り掛かった。


「ぐお…っ!?」


ドォンという、大きな衝撃音がスティングとローグを中心に、波紋のように広がっていく。そして、ローグの剣幕と怒号に、辺りにいた鳥たちがバサバサと木々から飛び立っていった。


「っか…、がはっ…!はっ…!?」


ローグの渾身の拳が見事に当たり、スティングの体は一気によろけ、力を込めていた手から男の首がずり落ちる。

男は、スティングの目の前で膝からガクンっと力なく落ちれば、あまりの苦しさに、嗚咽と咳を繰り返し、もがくように震える体を丸めた


「さっさと逃げろ!!!殺されたいのか!?」

「ひ、ひぃい…!」


そして、バッと男の前に立ちはだかり、ローグが声を張り上げれば、男は恐怖を目に写したまま、素早く立ち上がる


▼「…ローグぅう…!!」


その場をバタバタと逃げていく男。その様子を視界の端で確認して、ふう…っとローグは息を吐く。

すると今度は立ち直ったのだろうスティングが、素早く彼の襟を掴み上げ、これでもか、と物凄い剣幕で声を張り上げた


「どういうつもりだテメェ…!!なんで逃がしやがった!?」

「冷静になれと言った筈だスティング!!!あの状態で貴様は人を殺そうとしたのだぞ?!?」


シキミの目の前で!!!

そう食って掛かるスティングに負けじとローグが声を張り上げた瞬間だった。

彼の一言に、一瞬にして舞い戻されるのように我に返り、スティングの瞳には殺意が徐々に薄れていく

それと同時に、先程まで白く渦巻く風と共に逆立っていた髪がふわりと垂れ下がり、ビシビシと頬に張り付いていた竜の鱗もバラバラと崩れ落ちた






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