騎士に憧れた成れの果て

▼それを目の当たりにして、一瞬に俺の頭の中が真っ白になる。

自分では触れること叶わない彼女が、盗賊に捕らわれて、頬には一つの傷口から彼女の新鮮な血液が垂れる。それはシキミが…盗賊に傷つけられたことを意味していた。


「(ふざ、けんな…!)」


先程まで自分のしてしまったことに、ひたすら彼女に対して謝りきれない懺悔を落としていたというのに、

それは、捕らわれたシキミを見て、目がかっ開く。同時に沸き上がるような熱く煮えたぎる憤怒へと一瞬にして塗り替えられる


▼ごめんな、ごめんなシキミ。
俺が君との距離を縮めたいばかりに、こんな目に遭わせちまって…。

結局、俺は自分のことばかりで、君のこと考えてやれなかった。俺は…どうしても、君の側にいたすぎて…焦っちまったみてぇだ…。

『これからだよな』っと自分で言い聞かせたくせに。

…ああ、早くそこから助けてやる!!!君を傷付けたソイツをどんなにしても、滅茶苦茶にしようとも…!!!


▼「ホワイト…ドライブ…!」


暫くの緊迫した雰囲気が、周りに流れ込む。

それを切り裂くように、肌にピリッとくるような痺れが全員に走った。その発現元は、静かなまま口を動かさないスティングからで。スティングの足元、その周りから凄まじい白く輝いた魔力の渦が巻き上がった。


「ひっ…!やめろっ、来るな!!」


バチバチと辺りの空気が揺れ、ウネウネと魔力が彼を包みながら、スティングの体にはビシッと白い鱗が無数に浮き上がる。

それをシキミを片手に見た盗賊は、あまりの魔力と気迫に、彼女に突き付けていたナイフが震え上がる


「スティング…!馬鹿者!!落ち着け!!」

「……」

「ぐっ!?」


同時に「しまった!」っと舌打ちを溢し、ローグが彼の肩を掴むも、直ぐ様ローグをグイッあしらう。
その拍子にローグはズササッと地面に投げ付けられる

そして、スティングは何も発せず、鋭い殺意に満ちた眼孔をただひたすら、前に向けていた。






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