懺悔と殺意は紙一重

▼依頼主いわく、どうやら今回の仕事である盗賊討伐。その盗賊たちはいつも真夜中を狙って街へ繰り出し金品など奪うらしい。

人を見掛けては邪魔されぬように、多勢でナイフなどで脅し、傷付けることもあって本当に困っていたようだ。

俺は噴水広場にいたローグとシキミ、フロッシュの方へ向かい、それをあらかた説明する


「どうやら此処に根城があるみてぇだな」


そして、街の外れ。洞窟の、岩肌だらけのそこを崖の上から見下ろし、言葉を吐いた


▼シキミを連れての初仕事。いつものような気だるさは無く、むしろ俺はヤル気満々でぐるぐると肩を回す。

へへ、シキミに良いとこ見せてやるんだ


「あ、の…私は…何を、したら…」

「そうだな…、フロッシュとレクターと一緒に此処で待っててくれ」

「おうよ!此れくらい、俺とローグで片付けてくるぜ」


俺とローグの後ろ、きっとローグが買ってあげたのだろう金平糖を片手、シキミがおどおどした様子で俺らの背を見やる。

そして、そんなシキミに顔を向けてニカッと笑いかければ、「で、も…」っとシキミは口接ぐんだ


「わ、私も、なに、か…お手伝い…し、たい…です…」


お二人、に…任せて…ばかり、じゃ…っと控えめにそう発し、俯く彼女。俺とローグがそれに一回顔を見合わせた。


▼あくまでの今日のこの仕事は、シキミにどんな感じか、お手伝いを兼ねて教えるために選んだもの。

盗賊討伐を選んだのは俺たちだが、元はシキミの仕事になるんだろう。それを全部俺たちがやっては意味がない。

それをローグと顔を見合わせてから思い出し、お互いに「「あ…」」っと間抜けな声が漏れた


「で、でもよ、あぶねぇよ?」

「だから盗賊討伐にするなと言ったのに…」

「だってよぉ」


シキミに俺のカッコいいとこ見せてぇじゃんー、っと口を尖らしローグにブー垂れてやる。すると彼からは予想していたため息で。

それを聞きながらにシキミは首を傾げた


「マ、スター…は、カッコいい…です、よ…?」

「えっ、えっ、そうか!?!?」

「…スティング、いい加減にしろ」

「スティングきもいー」


けれどもシキミのきょとんとした顔で、ハッキリと言ってくれた言葉についつい鼻の下が延びてしまう。あ、やべ、顔引き締めなきゃ。


▼「じゃあシキミは、根城の出口の方にいてくれねぇか?」


一度ぐるりと洞窟を見回してみれば入り口の大きな穴と後ろにも穴があり、二つある。

「俺とローグが入り口から仕掛けるから、もし残党が出口から出てきたら、シキミのお札で皆の動きを止めてくれ」

「は、い!」

「なるべく残党を出さないよう、俺たちも全力でいく」


じゃなければシキミに何か起きてしまうからな、という心配をローグは内に落とす。

彼女を信頼してないわけではない。魔導士なのも分かってはいる。だが、第一印象として、シキミはきっとこんな経験をするのは初めてだろう。

ましてや、こんな臆病な彼女にそんな事態にさせたくはない


▼じゃ、後でなーっとシキミたちと二手に分かれ、俺とローグは直ぐに洞窟の入り口へ向かう。

そして、入り口を目の前、俺は入念に準備体操を施す


「…スティング」

「…分かってるって」


ローグが腕を組むのをやめて、たち直す。その隣、パァンっと自分の両頬を叩き、俺は目をキリッと変えた。

もし残党が出たら、シキミに負担を掛させちまう。いや…もしかしたら彼女を傷付けさせてしまうかもしれない。


臆病で、小さくて、肌の白い、何も知らない無垢で純粋な彼女。まだ触れることが出来ないのに、それを傷付けられたら…俺は…


▼シキミが傷付けられるのを想像し、ギッと一気に眉間にシワが寄る。

まだ討伐前だと言うのに、身体中に力が篭り、逆にギギッと筋肉が強張る。そして、その身体中に浮き出ていく血管たち

毛が逆立つように、ざわざわ、ざわざわ、と自分の体を纏う魔力が揺れ動いた。


「…ローグ」

「なんだ」

「この仕事選んで悪かった…」

「…分かれば宜しい」


同時に、あーあやっちまった、と今更になって自分の不甲斐なさをローグに呟いた







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