本当は抱き締めたかった
▼「俺はシキミの手助けになるなら、いくらでも手伝うさ」
「ローグ、さん…。」
「それにオルガなんかは、未だに分かって無さそうだしな。」
だから、気にしないでいい。そう言って、また綺麗な顔が私に向けて微笑む。
そのローグさんの笑みは、優しくて、温かくて…、不意にとくん、と私の心臓を鳴らす。
▼「シキミ」
「は、い」
君がスティングを避けるのも…、俺とオルガに頼るのも…彼女には、彼女なりの理由があるんだろう。
それは一番、彼女が判っている。
だからこそ、判っているからこそ、君はもがいているんじゃないんだろうか…。
自分で、殻を破ろうとしているんだろう?
「俺のことは嫌いか?」
もう震えの止まった小さな肩。そこから伝わる淡い温もりに心地よさを感じさせる。
俺の質問に、ぷるぷる、と首を横に振り、「嫌い、じゃない、です!」っと初めて真っ直ぐ俺を見つめるシキミ。
それについ、ピクリと少しだけ自分の手に力がこもった。
「(…いつかは、シキミのこと、いっぱい知りたいな…)」
そんな、内に零れた小さな願望を、頭の片隅に追いやりながら、俺は彼女の肩から手を離した。