はじめてのおしごと
▼今日は、マスターとローグさん、レクターさん、フロッシュさんと一緒にお仕事。
ギルドに入るのも初めて、右も左も判らない私に付き合ってくれる皆さんに、申し訳ない、と自分の無知さに恥ずかしさが込み上げる。
けれども、それを気にする素振りもなく、ローグさんが手を引いてくれて、マスターが楽しそうに笑っているのを見て、自然と安心が胸に広がった。
「良かったな、隣町で」
「だな、馬車は御免だぜ」
「ば、しゃ…?」
きゅうっと私の手を握ってくれるローグさん、そしてマスターの会話に私はきょとんと疑問を浮かべる
馬車って…、絵本の『シンデレラ』で出てたカボチャの馬車のことかな…?っとふわふわ、頭の中で思い浮かべる。
他の馬車っていうの、見たことない…。
▼「スティングくんや、ローグくんのような滅竜魔導士は乗り物酔いが酷いんですよ!」
「そ、うな…の?」
「きたないのー」
それを見ていたらしいレクターくんが、説明してくれるように声を掛けてから、フロッシュさんも声を上げた。
「こら!恥ずかしいことシキミに教えるんじゃねぇっての!」
聞こえてたらしいマスターが、それに顔をちょっと赤くして声を荒げるのに、何だが可愛らしい場面が見れた…と、少しばかり嬉しい気分になった。
「(そういや、私は乗り物、乗ったら…どうなるんだろう…?)」
そして、レクターさんの言った『滅竜魔導士は乗り物酔いが酷い』を聞いて、未だに拭いきれない疑問だけが、私の頭のなかに残った。