貴方への「ごめんなさい」

▼スティングさんと、一緒にお片付けをした。これも初めての経験だった。


昨日、私はスティングさんのとても失礼なことをしてしまって、彼は…なにも悪くないのにっと一人自責に駆られていた。

私を拾ってくれた恩人なのにっと彼に対して何度も謝罪を溢す。


「(ごめん、なさい…)」


それでも…、貴方の光に消されちゃうって思って…怖い……怖いの……


そうして、のろりのろりとお掃除をしていた私の耳に入ってきたのは、心から何度も私が謝罪していた、スティングさんの姿だった。


▼朝の光が、彼の背中に掛かり、更に眩しさが際立って、私は思わず目を細める。

ざわ、ざわ、と背筋を走る恐怖がまた私を侵食しようと疼きだす。本能が「逃げて」っと囁く。

震える手を握り締め、私はぐっとそれを堪えようと唇を噛んだ。


「(ダメ、このまま、じゃ……)」


ここで、逃げてしまったら先ほどの謝罪の数は何のため?となってしまう。

……大丈夫、大丈夫だ。スティングさんは、優しいんだ。悪い人…じゃないんだ…。

皆…言ってた。私も、本当は…分かっている…


「お、はよ、う…ござ、います…」


ぐるぐる、ぐるぐる、頭の中で何度も自分を奮い立たせ、言い聞かせる。

そして私は震える体と恐怖を無視して…やっと、スティングさんに言葉を出すことができた


▼「(声…、聞こえる、かな…)」


私と彼との距離は遠い。

それでもやっぱり、まだ…怖くて…声がもっと小さくなる。

それに不安になって、あんまりスティングさんの顔を見れることは出来なかった。


「…俺も手伝うよ」


けど、スティングさんは、そんな私の声でも、ちゃんと聞いてくれていた。

それだけで、体から力が抜けそうなのに……、彼の、私に掛けてくれた言葉は、声は、とても優しくて温かいものだった。


「(ごめん、なさい…)」


スティングさんの、その声に触れて、また心から謝罪が漏れる。

それは「私に優しくしてくれてありがとう」という意味が重なっていた




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