弱点は彼にあり
▼初めて私のために開かれた歓迎会。初めて人に囲まれて、びっくりして上手く喋れない私を、皆は気にすることなく温かく接してくれた。
人って凄い温かいんだ…っと緩む口をひたすらマフラーで隠しながら、私はそれを堪能した。
▼ルーファウスさんは、少し眩しい。けれど、スティングさん程では無かった。 本をよく読むらしくて、何だか先生みたいな人に私には見えた。
本を読んだことない私を「では今度、読み聞かせしてあげよう」なんて、優しく笑ってくれたのに、私はとても嬉しかった。
読み聞かせ。人にやってもらうのは初めてだ
▼オルガさんは、どちらかと言うと、ローグさんと同じ雰囲気を感じた。 滅神魔法を使うらしく、黒い電気を見せてくれた時、思わず胸が踊ったのを覚えてる。
そして、みんなオルガさんの歌は変って言うけど、私は好きで…、気が付いたら、歌に合わせてゆらゆら揺れていた。
▼ユキノさんは綺麗で美人な、優しい人だった。まるで昔、本を読み聞かせしてもらった時のお姫様みたいで。
「シキミ様、よろしくお願いします」なんて、かしこまって言われて、私は慌ててつい正座で応対してしまった。
そのあと、ユキノさんには笑われてしまったけど、その笑顔も綺麗だった。
▼ローグさんは、私と何だか似てる。性格とか、見た目…とかじゃなくて。彼の魔力や雰囲気が、私にとって、心地いいものだった。
そして、彼から“影竜の滅竜魔導士”っと聞かされた時、心の奥底から納得した。私の母と影竜は似てるとこが多いから。
ローグさんが連れている、フロッシュさん。彼女はとても可愛い。カエルの着ぐるみ着てるけど、猫らしい。スティングさんにも猫さん、レクターさんがいるらしく、それが少し羨ましいなっと思った。
私は、今までずっと一人だったから…
▼そして、スティングさん。彼はこの“剣咬の虎”のマスターらしい。今度からはマスターって呼ばなきゃ…っと決心した。
彼は……とても眩しい。まるで全てを浄化してしまうのじゃないかと思うくらいに、私にはその眩しさが苦しかった。
良い人なのに、判ってるのに、何故か彼を見ると、話すと、近付いてくると、内から恐怖が溢れ出す。
そして、ローグさんから教えられた、スティングさんは“白竜の滅竜魔導士”ということに、私の体は一気に震え上がった。
「(だから…眩しいんだ…)」
私とは正反対で、白く輝く魔法を身に付けた彼。全てを光で浄化する力。そして、唯一の私の弱点。
だから、私は彼が……怖いんだ……