今だけ君が見れる
▼スティングさん、ローグさんにベットから起こされて、私はよろけながらも二人の後を付いていく。
そして、その先には色んな人がお話してたり、歌を歌ってたりと、賑やかな光景が広がっていた。
初めて見たその楽しそうな光景に、私は思わず唾を飲み込んだ。
「皆、俺たちと“剣咬の虎”の魔導士だ。」
「え、あ…」
「これからコイツらも、俺たちもシキミの仲間になんだぞー?」
先ほどまで背を向けていたスティングさんがくるり、とこちらに顔を向ける。にんまり笑顔で。
未だに状況が掴めなくて、あわあわ、と手を空中に揺らすだけの私に、ローグさんは優しく肩を撫でてくれた
「落ち着け、シキミ」
「…どうした?嫌か?」
「あ、あう…」
ローグさんの手が私の肩を撫でた時、スウッと混乱していた私の思考が徐々に落ち着いてくる。
凄い、ローグさんはこんな力を持ってるのか、なんて思って、ぼうっとローグさんを見つめる。
すると今度はスティングさんが、少し残念そうな顔でこちらに近付いてきた。
▼あ、れ、なんだろう、今…スティングさんが怖くない。眩しいけど…何だか落ち着いて彼を見れる。
改めて見てみると…凄い綺麗な人だなぁ……
「シキミ?」
「あ、あの…!わ、たし…は、魔法が、あんまり…使え、ないです…」
ヌッとその綺麗な顔がこちらを覗く。流石にそれにビクッと肩が揺れる。その拍子に出た言葉に「(これで伝わる…かな、)」っと自信が無くて、スティングさんの顔を見れず俯いた。
「んなの関係ねぇよ!」
すると、私の頭に掛かる陽気な声とポスンッと彼の手が置かれた。わしゃっと柔く撫でたスティングさんの手は大きくて、そして温かくて。
人に頭を撫でられた。それは、私の初めての経験だった
「それに、また野宿で寝られては困るしな」
「ハハッ、言えてるな!」
「あ、あれは…」
肩に手を置いたまま、ローグさんが隣でフッと笑う。それを聞いてスティングさんも釣られて笑うのに、恥ずかしくて口を覆う
「よろしくな、シキミ」
「あ、う…、は、い。」
そうして、またスティングさんの満面の笑顔が私の視界に広がる。
ああ…眩しい、と思いながらも、不思議と恐怖は無かった。