こちらにおいで

▼どうやら彼らは墓地で寝ていた私を、自分のギルドに連れてきたらしい。 「クエストの依頼があってな」っとそこまで説明してくれたローグさんに、つい申し訳ないと内心ごちた

少しあの墓地に居座り過ぎてたんだろう。周りの住民に迷惑かけてしまったなぁ…


「なぁ、お前の名前は?」

「ひっ…!」


ぴょこっと柔らかい表情でこちらの顔を覗くスティングさん。それに私は未だにびくり、と肩を震わせる。

話を聞く限りと、彼の雰囲気的にも悪い人ではない筈なのに…スティングさんには何故だか強張ってしまう。

それに彼はキョトンっと不思議そうな顔をする。


「さっきからどうしたんだよ、俺のこと見るなり驚いたりして」


なんか顔に付いてるか?っとペタペタ自分の顔を触る彼。悪気はないのに、どうしてここまで私もスティングさんに脅えるのだろうと不思議が過る


「シキミ…。」

「え?」

「名前…、シキミ…」

「シキミか。」


一旦胸を落ち着かせ、はあっと息を吐く。そしてゆっくりと自分の名前を言う。 …そう、いえば…人に名前を名乗るのは初めてだ…。

私が名前を名乗ると、ローグさんとスティングさんは二人顔を合わせて、頷いていて。

なんだろう?っとそれを見ていたら、スティングさんがこちらに振り向いてまたニッコリ笑った


「…なあシキミ!」

「う、あ…、は、い」

「俺のギルドに入らねぇか?」

「…え、?」


この言葉が、私を沢山の初めてと出会うきっかけになるなんて

今の私には思わなかった。




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