※現代幼馴染みパロ
▼小さい頃、家の近くにあった公園で俺はよく遊んでいた。家庭のせいか男勝りに育った俺は男子ともっぱらチャンバラするのが毎日の楽しみだった。その時だった、金髪が綺麗な紺色の瞳の少年とあったのは。
▼見ただけで分かる外国人であろう彼、彼の見た目から男子たちは未知なる遭遇とでも言うように、彼と会話出来るのか不安で、臆して彼の存在を無視して遊んでいた。
けれど俺は知ってる。いつだって金髪な彼が、俺達と遊びたいという視線を送っていたのを。
『一緒に遊ぼう!』
俺は、他の男子のように逆に無視する勇気なんてなかった。分かっているのに知らないフリなんて酷いと思う。むしろ男の子なら、腕くらい引っ張ってやれよ。そんな気持ちで、俺は彼に話し掛けた。
『うん!』
あの時の彼の嬉しそうで、とても綺麗な笑顔。まるで漫画から出てきたような輝かしいもの。あの瞬間に、俺は彼のあの笑顔が大好きになった。
▼「寒い」
あれから十数年、俺は変わらず、小さい頃から育った地元で暮らしていた。
もう何十回目の冬に差し掛かり、流石に半袖じゃ外にも出れない寒さの中、俺は仕事を終えて、サラリーマンやカップルが行き交う賑やかで忙しない街に、帰るために駅へ向かう。
「(帰ったら椎たんに連絡しなきゃな)」
駅へ向かう道すがら、ぼーっと思うのは今の友達のこと。今日は椎たんとオールナイトゲームをする予定なのだ。
▼小さい頃に遊んだ金髪の彼とは、気が付けば俺が中学校を上がる頃には忽然と、姿を消していた。
いつもなら決まった時間に来る筈だったのが、いつまで経っても来ない。痺れを切らした男子たちは先に遊んでいたけど、それでも俺は彼を待った。
夕方に差し掛かって皆が帰っても、ずっとずっと。でも結局最後は、母ちゃんに無理矢理帰らされてしまって…
それからずっと毎日、彼を待ったけど、ずっと彼は来なかった。
▼小学校の頃の友達とは、彼らの中学デビューで疎遠になり、気が付けば赤の他人で全く会ってない。まあ、思春期や葛藤、部活、その諸々が一気にやってくれば、小学校の記憶、関係なんて直ぐに薄れていく。別にそれが悪いとは思わない。
けど、代わりに昔からやんちゃでガキな俺に集まってくれたのは、行く年も遊び心いっぱいの友達だ。椎たんはその一人。
早くこの寒さから逃げて、温かいこたつに入り、ひたすらゲーム。ああ、最高に楽しみ。
ただ、ひとつだけ寂しいと思うことは
あの時の金髪の彼との記憶が、時を重ね、心情の変化と共に、胸奥から薄れていくこの感情だった。
▼「(そういや名前、聞いてなかったなぁ)」
まあでも、どうせ何処かで楽しく暮らしてるんだろう。あれだけ綺麗な子だったんだ、きっと女の子にモテモテなプレイボーイになったに違いない。
小学校の頃の友達と同じように、今の俺と同じように、今が楽しければ昔のことなんて、俺達のことなんて、とっくに忘れてるだろう。人間ってのは、この点に置いてはここぞとばかり薄情で前向きだ。
人間なんてこんなもんだ。
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