▼彼が仕事へ行って何日経っただろう。1日、2日、3日…まだまだ、彼は帰ってこない。

合鍵を持っていても、彼がいない家に行っても何の意味もない。それは別に寂しいから、恋しくなるからなんて、可愛らしい理由でもない、ただ現実的な「意味がない」という理由だから。

いつもなら彼の家に寝泊まりばかりして疎かにしていた自分の部屋。動かすのは衣服くらいで、他は触らず使わず動かさずで気が付けば埃が少し乗っていた。

「(たまには掃除しなきゃな)」

っと軽く机を手のひらで拭き、手のひらにフウッと息吹き掛ければ、ヒラヒラと月明かりで反射した埃が輝くように床に落ちた。


▼他人の家やギルドじゃちゃんと掃除やらしてるのに、自身の部屋だけほっぽかし。全く、これはこれで自分を棚上げだ。

「埃っぽい」

寝ようと、ばさりとキルティングを動かせば、同じように埃が舞い、同時に乾燥を思わせる臭くはないが鼻につく匂い。俺はその中に潜り込む。

そして、更にもわりと広がるその匂い。嫌いじゃ、ないけど


▼「(いつもお前が呼び止めるからだ)」


いつからだろうか、彼が一人暮らしを始めてからは、毎日会うことはあっても、毎日彼の家に居座ることはなかった。

あったとしても週に3日程だ。

その時は「一人の時間」を尊重していたのが暗黙の了解だった。

けれど、それは何十年と一年前の話。

落ち着いた頃には、気が付けば彼の家にいる。ご飯を作り、風呂を沸かし、一緒にだらけたり。
……嫌じゃないけど。いや好きだからやっちゃうけどさ。


▼「俺が甘いのかなぁ」


普通に帰ろうとすれば不機嫌になって、家にいなければ聞いてきて、いつだって…いつだって、子供みたいに離してくれない。

ああ、それが分かっていて喜んでる自分がいるのが悔しい。惚れた弱みって奴なのかな

「(ラクサスが帰ってきたら、俺の部屋の掃除手伝わせてやろ)」

お前がいつも俺を側に置かせたがるから、俺の部屋が汚くなるんだ。ラクサスが悪いんだからな。

いっぱい、いっぱいコキ使ってやる。


▼そう頭のなかで、塑琉奈は彼の背中姿を思い浮かべる。

そして、無意識に口を緩めたまま「早く帰ってこいよ、ゴリラ」っと呟き、彼女は静かに眠りに付いた。



▼診断メーカーより。
【貴方はラクソルで『全部全部、君のせい。』をお題にして140文字SSを書いてください。】

140字じゃないのは気にしない気にしない

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