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06



「苗字〜すまんがこれ体育教官室に持ってってくれ」

『ええー先生人遣い荒いですよー』


昼休み、トイレから教室に戻ろうとしたら担任の先生と遭遇してしまい雑用を押し付けられてしまった。駄々をこねたところでどうにもならないのは分かっているので、私は素直に体育館に向かうことにした。

体育館へと繋がる渡り廊下を歩くと、昼下がりの太陽が射す。
今日は五月晴れの穏やかな天気で、見事なまでに澄んだ青空だ。陽のぬくもりに、これは午後の授業は睡魔との戦いに襲われる人が多そうだ。


「あれ?名前さんじゃないっすか?」

『え?』


突然自分の名前を呼ばれて声がした方を見ると、そこにいたのは、先日本屋で出会った高尾君だった。
当たり前だけど、この前とは違って学ラン姿の高尾君は相変わらず人懐っこそうな顔で駆け寄って来た。


『高尾君!』

「やっぱ名前さんだったんすね!お久しぶりっす!」

『久しぶり…かな?それにしてもよく私って気付いたね。そこからだと結構見えにくい位置だと思うけど…』

「俺、人よりほんの少し目がいいんすよ〜だから気付けたんです」


視力が良いって事だろうか?それにしても一度しか会っていない私に気付くなんて、やっぱり凄い子なのかもしれない。


「名前さん次体育っすか?」

『ううん。さっき担任の先生に捕まってね〜これ体育教官室に届けてってパシられてるところ。高尾君は?』

「俺も似たようなもんで…これ買って来いってパシられたんすよ」


見せてくれたのは、缶のお汁粉。

冬じゃないのに何で売ってるのかと思ったけど、そういえば中学の時にも年中売ってたのを思い出す。夏はちゃんと冷たいのが売っている徹底ぶりに驚いたこともあった。でも、主な購入者は私が知る限りは1人しかいなくて、リクエストされたのでよく買いに行ったけど売り切れてることもなかった。

そういえば、彼も秀徳にいるらしいから案外高尾君に買いに行かせた張本人かもしれない。

まあそんな偶然ある訳ないか。春にお汁粉を飲みたくなるような人は彼だけではないかもしれない。

そう思った矢先──


「何をやっているのだ高尾、遅いのだよ」


神様というのは時々、


「おおー緑間!ワリ、ちょっと知り合いに会ってな」


その人の思いや願いとは、


「フン、それより早く俺の汁粉を…」


全く正反対のことをもたらす。


「はいはい…ってどうしたんだよ?」


それは運命なのか、それとも試練なのか。


「名前さん…」


どちらにしても確かなのは、


『…久しぶりだね、緑間君』


向き合わないと前には進めないということだ。


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