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決勝リーグが来週にある中、その前にあるもの――実力テスト

明日の実力テストは成績には関係ないけど、進学校である秀徳は中間試験と同様に下位の順位になると補習がある。

まあ正直それほど心配はしていないんだけど…手を抜くようなことはしたくない。

緑間君の様に何事においても人事を尽くしている訳ではないけど、ただ慢心して適当にやるというのは性に合わない。

だから例によって図書室で勉強しようと思ったんだけど…


「ん?どうかしたか苗字?」

『いえ…何でもないですよ』

「そうか?何かあったらすぐに言えよ」


そう言いながら私の頭をポンと撫でるのは蜂蜜色の少し長い髪の持ち主――宮地先輩。

そう、私と宮地先輩は今、2人机を合わせて向かい合って座っている。それも宮地先輩の教室で。

どうしてこうなったのかと聞かれれば、図書室に行く途中で偶々先輩に会ったら何故かさも当然の様にそのまま連れて来られた。

それにも関わらず当の本人は何事もなかったかのように黙々とペンを動かしている。

しかも放課後とはいえ、何故か教室には私達しかいない…一体他のクラスの方はどこへ…?

…色々と思う所はあるけど、とりあえず今は集中しよう。

考えることを半ば諦めて私も自分の問題集を解くことにした。



暫く集中して解き進めていると、ふと視線を感じた。

それはもちろん目の前の先輩のもので…


『あのー先輩、そんなに見られるとやり難いんですが…どうかしましたか?』

「ああー…いや…お前、頭良いのによくやるなーと思ってよ」

『別にそんなことはないと思いますけど…』


率直に聞いてみたら思わぬことを言われてしまい少し返答に困る。あっ、でも。


『先輩だって成績良いのにしてるじゃないですか』

「まあ受験あるしなー…けど俺はお前みたいに天才って訳じゃないからな」

『…じゃあ天才の緑間君は練習しなくてもいいんですか?』

「そんなわけねーだろって…あ」

『そういうことです。それに私、自分を天才なんて思ったこと一度もないですよ』


以前にも言ったが私には正真正銘、本物の天才の友人がいた。

彼は私なんて足元にも及ばないくらい頭の回転が速く、幼いながらにこの子には敵わないと直観的に思ってしまったのだ。

それに帝光に入学してからも、赤司君という完璧なまでに完璧な後輩も目の当たりにしたので余計そう思うようになった。

劣等感というのではなくこれは紛れもない事実に過ぎないのだ。


『良くて秀才止まりです。だからこうして勉強してるんですよ』

「何つーか…俺からしたら十分凄いけどな」

『褒めても何も出ませんよって…ん?』


机に置いといたスマホが急に振動するので見ると…


『あれ?黄瀬君…?』


画面に表示されてる名前は黄瀬涼太、しかもメールではなく電話だ。

無視するわけにもいかないので出ようとした時。


『えっ、ちょっ…宮地先輩!?』

「………」


何故か先輩が私からスマホを奪い取り電話を切った。

そしてどうしてか気まずい空気に包まれる…え、何で?

明らかに不機嫌な先輩に私はどうしていいかわからない。


「…お前、黄瀬と仲良いのか?」

『へ?』


突然口を開いた先輩に思わず間抜けな声が出てしまう。いや、でも本当に唐突だったから…。


「どうなんだよ?」

『普通に中学の先輩後輩ってくらいには仲良いですけど…どうしてです?』

「この前も一緒にいただろ」


そういえば宮地先輩に黄瀬君と(笠松さんも)一緒にいる所を見られていたのを思い出す。


『あれは偶々、会場で会っただけです』

「ふーん…」

『ふーんって…本当に後輩ってだけですよ?』

「じゃあ、俺は…俺はお前の先輩ってだけか?」


真剣な瞳でそう問われる。

本能的にこの目を逸らしてはいけない、そう思った。


『先輩は違います。先輩ってだけじゃないです』

「………」

『私は先輩がバスケしているのをこの間初めて観ましたけど、それでも先輩がどれだけ真摯にバスケに打ち込んでいるのか分かりました』

「………」

『それは勉強だって同じで、人にも厳しいけどやっぱり自分に一番厳しくて…そんな先輩がただの先輩なんてありえないです。尊敬できる凄い先輩です、宮地先輩は』


言い切ってから思ったけど私結構恥ずかしいこと言ってるのではないだろうか…。

でもこれに嘘偽りはない。

努力し続けること以上に難しいものはない。でも、今目の前にいるこの人はそれをあたり前のようにやっている。

そんな人を尊敬しないはずがないのだけど…

先輩は先程から一言も発しずに黙っている。少し、いや、かなり不安になる。


『あの先ぱ…「お前はさー…」


沈黙に耐えかねて口を開くと宮地先輩の言葉にかき消される。


「言葉が本当にストレート過ぎんだよ…」

『そんなことを言われても…本当のことですし』

「…〜っ!あぁぁーー…」


急に叫んだかと思うと先輩は少し顔を赤くして頭を抱え込んでしまった。

かと思えばいきなり顔を上げて


「お前、そういうの俺以外に言うんじゃねーぞ…っ!」

『は、はい…』


何故かキレ気味にそう言われて思わず頷いてしまった。

けど…


「ほら、さっさと続きやるぞ」


そう言いながらもまだ少し赤い顔を見ると可愛いく思える。

まあそんなこと言ったら怒られるのは目に見えてるので黙っているけど。

でも、心の中で思うくらいは許してくれるでしょ?

そんなことを考えながら私達は再び机に向かって勉強を再開したのだった。


(おまけ)


その頃の黄瀬はというと。


「名前センパイにまで見捨てられた…もう本当にどうしたらいいんスかーっ!?」


緑間、黒子からテストの秘密兵器(緑間特製コロコロ鉛筆)を借りることに失敗した黄瀬は最後の頼みである名前に勉強を教えてもらおうと思ったが、それも宮地によって呆気なく阻止されてしまった。

果たして彼の運命(実力テストの結果)や如何に。

…それは知っての通り。


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