愛のしるし 安椿(安形誕生日記念2012)

何日も前からずっと考えていた。
今日、何をすべきなのか。

今日は会長、安形惣司郎さんの誕生日。
今年はこの場所であの人の生まれた日を祝える最後の年だ。
あと少しであの人はここからいなくなってしまうから。
だから、最後に。

何か、特別なことをしてあげたい。

どうするべきか考えながら昼休みのはじまったばかりの騒がしい廊下を歩く。
すると、丁度二年と三年の教室を繋ぐ階段の前で、そこから降りてきた人物と目があった。
「会長・・・」
「おほ?椿じゃねーか。なんだよこれから昼飯か?」
「あ、はい。今パンを買って、これから教室に戻るところです。」
「そっか・・・なぁ、暇なら俺と屋上こいよ。だめか?」
「いえ、特にこれといって用があるわけではないので。ご一緒します。」

こうして、僕は教室に帰るという予定を変更して大切な恋人と昼休みを過ごすことになった。

食事をすませ、二人で景色を眺める。
「さすがにこの季節ですし、少し肌寒いですね。」
屋上の冷たい風邪を浴びながらなんとなく呟く。
「そうだなー」
「・・・・・・・。」
どうすればいいのかわからず会話が続かない。
本当は隣にいる人物の生まれた日を誰よりも祝いたいのに。
心臓が「早く何か言え」と鼓動を速める。
が、自分よりも先に相手の方が先に口を開いてしまう。
「なあ。」
「はっはい!」
「さっきからどうかしたのか?寒いならもう行こうぜ。」
「はい。」
屋上からでて、教室へ向かう階段へと足を運ぼうとしてその時。
「会長!」
思わず呼び止めてしまった僕の前を歩く相手。「ん?どした?」
「あ・・・」
相手に振り向かれ、また言葉を失う。
「椿?」

ただ一言「おめでとう」といえばいい。
他の友人になら何の抵抗もなく言えるのに。

僕の様子を心配して数歩先を歩いていた会長が戻ってくる。
「どうした?」
「あ、・・・わっ!」
「おい!」
がたっ!とやや大きめの音がして端の方に積まれていたいくつかの机や椅子が倒れてきた。
言わずとも原因は僕がそれらにぶつかったから。
間一髪、二人してそれをよけたものの、逆にそのせいで机たちが階段の踊り場に転がり落ちた。
「あーあ・・・」
「すみません・・・」
謝る僕に会長はポンと頭に手を置いて。
「わざとじゃねーし、やっちまったもんはしょうがねぇだろーが。」
「でも・・」
「それより、お前の体に傷がつかなくてよかった。」
ぎゅうと優しく前から抱きしめられる。
大好きな感触に思わず甘えて顔がほころぶ。
「あの・・」
「ん?」
「誕生日おめでとうございます。」
「え?」

あれ?
自分は何を言っているんだ!
まずは「助けてくださってありがとうございます」って・・
冷静になりすぎた!いや、むしろテンパっている?

「あ!間違えました!えええ・・えっと、助けてくださってありがとうございます!!」
だめだ。恥ずかしさで体が熱を帯びて、もう今すぐここから立ち去ってしまいたい。
「椿・・」
「かいちょ・・」

「ありがとう」

確かに聞いたその言葉。
幸せで、また今度は別の理由でクラクラしてる。

「あ、でも僕プレゼントも何も用意してなくて・・その・・会長は何か欲しい物ありますか?」
「別に?お前から何か貰えたらなんでもいいけど?なくても、そうやって考えてくれてたならそれだけで十分だ。」
相手の優しい言葉は逆に自分の胸に針を刺す。
今日は特別な何かをするつもりだった。それはあまりにも自分の予定と違いすぎる。
それはだめだ。
「あっあの!」
「・・・?」
「会長はぼっ僕に何をされたら嬉しいですか!?」
「へ・・?」
「え?」
「何をって・・・?」

あれ?自分は今何言って・・・!!

「なんだよそれ。 それがお前なりのプレゼントってやつか?」
喉奥で笑われ、いつもの黒い表情で瞳を覗かれる。
「なぁ・・・なんでもしてくれんのか?」
「っ・・・!」
否定の言葉を述べる前に、僕は冷たい床に強引に押し倒された。
「いっ・・痛い・・」
背中をすこし痛め、顔を歪めているとすぐに自分の上に乗る相手の体。

「その気にさせて誘ったのはお前だからな。もう・・次の授業でれると思うなよ?」

人目につかないところとはいえ、さっき倒してしまった机の物音に不振がって誰かが登ってくるかもしれない。
というか、まずはこの机や椅子をもとに戻す方が先だとか、色々と考えなければいけないことはやまほどあるのに。
目の前にいる相手に優しくキスされると全ての事がどうでもよくなってしまって。
これでは生徒会失格なのではと思うのだが、でも今この人がこの状況をのぞんでいるのだと思うと体は勝手に言いなりになってくれる。
頭が痛くならないように、後頭部を手で包み、何度も角度を変えていつも以上に荒々しいキスが送られる。
乱れるブレザーなど気にせずに会長の背中に腕を回す。
僕の服の中を空いたもう片方の手でまさぐる感触に体がおかしくて。
「かいちょお・・」
熱く潤んだ目は相手をどんどん欲情させてしまって。
「もう・・・次の授業間に合わないよなぁ?」
いいながら敏感な首に舌が這う。
「ひゃっ・・!」
思わずでてしまった高い声がエリアに響く。
「あんまでかい声だすと誰か来ちまうぞ?」
そういう相手はとても楽しそうで。
「あの・・ばっ・・場所を移しませんか?」
もう少しこのままこうしていたいけど、他のことに気を取られているのが嫌だった。
だからそう提案したのだが。
「はぁ?なんでだよ?まったく・・お前は本当に空気よまねぇよなぁ・・。せっかくこうしてんのにそこに行くまで冷めるだろーが。それに、あとで色々片付けなきゃなんねーもんもあるしよ。」
「・・・・・・・。」
そうだ。その通り。でも・・
「誰か来るかと思うと・・」
小さく言うと、相手は僕の体からおりて上半身を起き上がらせると、僕の腕をぐいっとひっぱり、床に座ったまま向かいあった状態で強く抱きしめられた。
背中に回された腕が床で冷えた体を温める。
が、会長の次の言葉で僕は冷や汗をかき、体に悪寒がはしった。
「何そんなもんに怯えてんだよ。お前なんでもしてくれんだろ?まだ俺満足できてねーから、他のやつに見つからないようにお前・・・この先でかい声出すなよ?」
「・・・・!?」
一瞬だけ恐怖したけれど、それでこの人が満足するならそれでもいいなんて。

ゆるみかけていたネクタイを完全にほどき、ブレザーを脱ぎ捨てる。
この季節にすることでないけれど、少しでも寒さに身震いすればすぐにぎゅううっ・・と会長が抱きしめてくれるからそんなこと気にならなくて。
そんなぬくもりに幸せを感じていると相手がそっと口を開く。
「・・・まさか自分の誕生日に授業さぼってお前とこんな風にできるなんて思わなかったなぁ・・」
「会長は・・こんなのでよかったんですか?」
嬉しそうにしてるけど、本当はもっと何かあげたり色々してあげたかった・・・
そっと瞳を覗くとまた、今度は耳まわりを舌で擽られる。
「・・っ・・!」
たまらず目を瞑ると、余計に感覚は敏感になり、相手の舌と吐息に体が熱くなる、
顔が離れ、そっと目を開ければ嬉しそうにしてる会長が見える。
「これ以上もっと何かしてくれんのか?」

それは相手からの挑発に思えて。
つい、口にしてしまった。

「好きなだけ好きにしてください。なんでもしますから・・」
僕はそう笑った。

それから、僕たちは結局、六限もサボってしまった。
会長の欲しいと言った物を「渡す」のに、僕がとても時間をかけてしまったから。
「んっ・・・んー・・」
「何遠慮してんだよ。早くしろって。」
「でも・・・」
「俺がしろって言ってんだからお前は黙ってしてくれよ。」
「・・・・・・・・はい。」

会長に何でもすると約束をした僕は、あれからそのお願いを必死にかなえようとしたけれど、ある意味、いつもの甘ったるい性行動より恥ずかしくてなかなかそれができなかった。

また、頭を優しく抑えられ、僕の顔は今会長の胸元にある。
ただ、そこはシャツのボタンを全て外し、肌が露わになっている。
「お前がくれるまでどんだけ時間かかってもこの体制変える気ねぇからな?」
この体制・・というのは先ほどまでと変わらず床に向かい合って座り、抱きしめられている形だ。
会長の服のボタンを外したのは僕。
この人に命令されたから。
さらにこの人は命令してきた。

痕が欲しいと。
唇で吸えばその位置はうっ血し、いわゆるキスマークができる。
この人はそれが欲しいわけで・・。

「どっ・・どこに・・その・・」
「それはお前の好きにしていいぜ。」

場所はどこでもいい。
それならばやはり他人に見られないところがいい。
僕はゆっくりと目の前の堅いラインを口に含んだ。

「へー。鎖骨にするのか。お前のカチカチの脳みそにしてはマニアックな事考えるなぁ・・かかか・・。」
喉で嬉しそうに笑う相手の声に体が火照る。
それでも、相手の欲する物を与えようと、頑張って僕はそこをくちゅ・・と静かに吸い上げた。
そっと顔を離すと吸い上げたはずのそこはたいしたことはなく、ただ舐めただけのように自分の唾液で濡れているだけだった。
ゆっくりと相手の表情を窺おうと顔を上に向ければ、会長は僕の耳元に唇を寄せ静かに呟いた。
「・・・へたくそ。」
「・・・・!!」
相手の言葉に悔しさと羞恥が胸にこみ上げる。
「しょうがねぇな。手本ないとできねぇ?」
「えっ?・・・・わっ!かっ会長!!」
次の瞬間。
「ひゃっ・・だっ・・駄目ですよ。」
「くく・・んなこと知るかよ。・・・んっ・・・」
会長は思いっきり僕の首筋をちゅううっと音を立てて吸い上げ、短い髪や制服の襟では隠せない場所にその印をつけた。
鏡などがないため直接確認できないがおそらくかなりくっきりしたものができてるはずだ。
「・・・・・・・・。」
どうしよう。
僕が困っていると、そんなことお構いなしに、また顔をもとの位置に戻された。
「ほら、早く吸えよ。」

強い口調。
逆らえないこの状況。
早く終わらせてしまうのが一番だ。

僕はまるで吸血鬼のごとく会長の肌に唇を這わせ強く吸い上げた…。



次の日。
案の定放課後の生徒会室で僕はメンバーに心配された。
「あれー?椿ちゃん首に絆創膏って大丈夫?また他校の生徒と喧嘩したの?」
「えっ!?あーはい・・・。ちょっと・・・」
「あまり無茶しちゃだめだよ?」
気をつかった口調の榛葉さんと、心の中で苦笑いをするしかない自分。
そんな中、そんな状況を作った人物が遅れて生徒会室に入ってくる。
「遅れて悪い。昼寝してたら時間忘れちまって・・お、椿ぃ。」
相手にいきなり名前を呼ばれ、肩がびくっと震えた。
その相手は自分の椅子の後ろに立つと
「昨日ありがとな。まだ残ってるぜ・・・・あれ。」
と、前にいる榛葉さんに気が付かれないようにそっと耳打ちされた。

ドキドキと心臓が鼓動を速め、他の人間にばれないかひやひやとするものの、それでもお互いの愛がカタチとしてあるこの状況に

幸せを感じていないわけがない。


FIN

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左の腕章の椿さとみさんから安形誕フリー小説を頂きました!


安形さん誕生日おめでとうー!(^O^)
私もプレゼントに椿ちゃんが欲しい!!うやらまけしからん!それでは、ありがとうございました〜!!
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