10月31日。一般的にハロウィンの日だ。 けれど僕、椿佐介はこういったイベントごとの日は上手く周りになじめずにいた。 クラスで可愛らしいラッピングした小さな袋を周りの友人に配る生徒の姿を度々みかけたし、僕もいくつかもらった。 そんな午前中は終わり、放課後。 定例会議のために生徒会室に向かうとそこはいつもの部屋の空気と打って変わり、ハロウィンにちなんだオレンジ色の飾りがそこら中に散りばめられていた。 「あら。遅かったですわね椿君。」 「丹生なんだこれは!」 「何・・と言われましても。ハロウィンパーティーですよ椿君。」 「そうそう。かぼちゃのケーキも焼いたんだよ。美味しそうでしょ?」 にっこりとほほ笑む丹生の横からケーキを見せる榛葉さん。 「はっ・・はぁ・・・」 「相変わらず冷めたリアクションだな空気読め男。KNS!」 「・・?けー・・何?」 「かぼちゃに呪われて死ね!」 「え・・えええ・・・!!?って・・それにしてもいつの間に・・。この飾りはみんながやったのか?」 「いいえ。午前中私達が授業をしている間に丹生グループが全てご用意してくれましたわ。あ、でもお菓子類は私とデージーちゃんで用意したんですのよ。」 「なるほど・・。(しかし毎度毎度学校に不法侵入だぞ丹生グループ・・・・。)」 と、ここまでの会話でまだ登場していない人物が一人。 「そういえば会長の姿が見当たらないが・・・」 「そういえば遅いですわね。」 「またどっかで昼寝かな・・俺ちょっとそこらへん回ってくるよ。」 と、榛葉さんがドアをあけた瞬間。 「あ!安形!」 タイミングよくその相手は目の前に現れた。 「かっかっか!悪ぃなぁ遅くなっちまって。」 ふわぁ・・と欠伸をしながら手に持っていた上着を羽織る。 どうやら榛葉さんの予想通りどこかで眠っていたようだ。 乱れたネクタイをある程度直し、会長席に向かう会長。 「まったくもう・・。ま、とりあえずこれで全員そろったし始めようか。」 こうして、榛葉さんの合図とともにプチパーティーが開始され、暫くその雰囲気を楽しんだ。 その合間に会長がふと思い出したように「あ、いけね。」と呟いた。 「ん?安形どうかした?」 榛葉さんが問うと会長はいつの間に仕掛けたのか部屋の端っこにある細い紐を引っ張った。 すると。パンっと軽い音とともに飾りの一部の風船が割れ、中から小さな小袋類の飴玉やチョコが僕らの机の上に見事に降ってきたのだ。 一番驚いた榛葉さんがびっくりしていう。 「えっ!?こんな仕掛け安形が?」 「おー。本当はパーティー始まる前にいきなりしてやろうと思ったんだけどすっかかり忘れてたぜ。」 さすが会長。サプライズとしてのクオリティが高い。 「で。」 「・・・?」 いきなり会長が僕の方を向いて問いかける。 「皆それぞれ色々用意したみて―だけど、お前は何かないのか?」 あ・・・・。 そうだ。これまでの全ては自分以外のメンバーが用意したこと。 自分は何も。菓子の一つも用意していない・・・ 「ちょっと、椿ちゃんはそういうの疎いこと知ってんだろ?そんなこと言ったらかわいそうだよ。」 榛葉さんはそういってくれるが事実は事実だ。 「いいんですよ。本当のことですし。」 でもどうして・・。いつもはこんな空気の悪くなるようなこと言ったりしないのに。 「それにしてもこの季節になると日が落ちるのも早いな・・。そろそろ帰った方がいいんじゃないか?」 「デージーちゃん?あら、大変お外が真っ暗ですね。」 「あ、じゃあそろそろ閉めようか。」 「私とデージーちゃんでゴミ類を片付けますわ。」 「じゃあ男組で飾り付けとるよ。ほら、安形も。」 「んー。」 この後も普通に片づけを終えてそれぞれの支度を終える。 「じゃあ途中まで二人を送るよ。女の子二人だと危険だからね。」 「あら。ありがとうございますミチルさん。では宜しくお願いしますわ。」 「DOS!」 「なんで!?」 こうして三人は生徒会室を出ていき、僕と会長だけになった。 静かな部屋で二人きりになるとなんとなく気まずく、僕はさっさとこの場を去ろうとし、扉に手をかける。 すると、後ろからいきなりがばっと体を抱きしめられた。 「え・・!?」 僕はびっくりして思わず扉を開ける手を自分の体の横に戻した。 「会長・・?」 振り向かないで呼ぶときゅっ・・・と、甘えたように僕を抱きしめる腕を強める会長。 「(わっ・・・)」 それだけで心臓の鼓動は高まり体はどんどん火照る。 「あっ・・あの、どうかしました?」 「なんでマジで何もなかったんだよ。」 後ろから聞こえたのはそんな拗ねたセリフ。 「え?って・・お菓子のことですか?すみません・・。そもそも今日がハロウィンだということを学校に来るまですっかり忘れていまして・・」 「ま、それがお前だもんな。」 「では、来年は今年を反省して何か用意し「来年俺いないけどな。」 あ・・・・・そうだ。この人はもう・・。 「ごめんなさい。」 振り向いて謝ると、今度は向かいあった状態で強く抱きしめられる。 謝罪したい気持ちでいっぱいなのに、優しく抱きしめられると、気持ちよくて。 「椿・・・物はもういらねーよ。そのかわり今ここでお前とふたりでしたいな、俺は。」 いつもみたいに体制を、場所を変えている余裕なんてなくて僕達は冷たい床に膝立ちで座り込んだ。 気を抜いたら会長に押し倒されるような気がして無意識に体に力がこもる。 背中に片腕を回され密着すると唇が重なる。 「お菓子くれなきゃいたずらされるって・・知ってるだろ?」 意地悪く楽しそう笑う会長。 照れて俯く自分の耳元で「絶対許さないからな」と静かに囁いた。 静寂の生徒会室に自分の鼓動だけが響いているようで。 それをこの人に聞かれているような気がして。 寒い部屋のはずなのに体は熱くて・・ 「なぁ・・さっき俺があげた飴まだ持ってるか?」 「はい。」 僕は会長に言われ上着のポケットから小さな飴を何個か取り出した。 「一個返せよ。」 「えっ?・・どうぞ。」 「じゃあ、これ貰うな。」 そう言って会長は僕の手に置かれた飴を一つ、自分のところへ戻した。 僕はその動作を無意識にそれを目で追う。 それに気が付いた会長はまた意地悪く笑う。 「ん?この味欲しかったか?」 「いっ・・いいえ!別にそういうわけでは!というか、なら最初から会長が持っていればよかったじゃないですか!」 むすっと、僕が睨めば余裕の表情で。 「好きなもの取られるお前が見たかったから・・ついな。」 「・・・!!」 むかつく。だけど・・この人のこういうところに逆らえない。 「なんだよ。返してほしいなら返すぜ?」 「別に。どこでも売ってる物ですし買おうと思えばいつでも・・」 「おいおい。返して欲しいなら素直に言えって。」 「いりません。そんな物で駄々をこねるなんて子供ですよ・・・」 「子供じゃねーか。好きなんだろ?苺味。」 言いながらもう一度僕の前にその飴を取り出す会長。 「なっ!」 「欲しいんだろ?」 「いりません。」 そいって額に皺をよせ俯く。 「無理すんなって」 「いりません。」 「椿ぃー」 「しつこいです!」 そう顔を上げた瞬間。 「んっ!」 いきなりの口付け。そしてすぐに口の中に広がる甘い味。 いつの間に・・・ 「んっ・・・はぁ・・・あっ・・!」 カラカラと転がる音を立て、小さな飴は僕と会長の口内を何度も何度も行き来する。 会長はその舌先を使い、自分と僕の間で甘い味をするそれを転がしていた。 角度を変え、何度もくる口付け。 自分の唇からは、ぽたりとだらしなく甘い液が零れていた。 口を離したくても、僕の後頭部を静かに抑える会長の手がそれを許さない。 瞳をきゅっと閉じて耐えていると、いきなりその手に優しく爪を立てられ、髪を刺激される。 「やっ・・・!」 ゾクゾクした感覚に身震いすると、互いの口が離れ、そこを銀糸が繋ぐとようやく会長は口を離してくれた。 「髪を指でなぞられて感じるとか女かよ・・」 口内の熱で溶けた飴はまだ僕の口の中にある。 これ以上行為を続けるのが恥ずかしくて僕は残りの飴をガリガリと歯で砕いた。 「あ。なんで砕いちまうんだよ。」 「えっ?・・・わっ!」 僕の行動にやや大きめの声をあげ、無理やり僕を押し倒す会長。 制服越しでもこの季節の床はひんやりと体を冷やしたが、濃厚なキスであつくなっていた体にはちょうど良く・・。 「まだ残ってたじゃんか。つまんねーなー。」 「もっ!もういいじゃないですか!・・十分です。」 さっきの行いのせいでなんとなく一言一言が恥ずかしい。 「何言ってんだよ。」 「え?」 「十分かどうかは俺が決めんだよ、椿。」 僕が疑問符を浮かべると会長は黒く笑った。 「甘いもん食ったばかりだからだなぁ・・・。」 「へっ!?わっ・・・!」 僕の上にいる会長はさらに体を密着させ指先で首をなぞられる。 むずむずする感触に思わずでそうになる声をぐっ・・と堪えて我慢する。 「椿・・我慢すんなよ。」 そしてそのままそこに舌を這わされる。 「ひゃ・・!」 時々こうされることがあるもののこの感触には、いまだになれないでいた。 「んっ・・・甘い味する・・」 耳元で響くそんなセリフに体中がむずむずする。 「えっと・・冗談・・ですよね?」 そう言って会長の反応を窺えば、彼はふっと笑って僕と目を合わせた。 「嘘じゃねーよ。ちゃんとするぜ?・・・・お前の味。」 僕の味? ・・って・・なんだろう・・。 またクラクラしてきて・・・のぼせてしまいそうで。 「会長・・」 「ん?」 「あの・・少し熱いので上着だけ脱いでもいいですか?」 別に、誘ったとかじゃなくて、本当に熱くて本心だった。 だけど、当たり前だけど会長は嬉しそうに笑って僕の頭を撫でていう。 「なら俺が脱がしてやる。体うかせよ。」 僕は言われた通りに腰から上を少しうかすとすぐに会長はその手で器用に制服を脱がしてくれた。 僕の後ろにぱた・・とブレザーが落ちる。 そのまま僕の背中に会長の腕が回った状態で顔が寄る。 「もっと脱ぐか?」 「え?」 長い指できっちり締められたネクタイに触れられる。 思わず数秒それを見つめてしまい、ぼーとしているとそこをしゅる・・と簡単にほどかれてしまう。 邪魔なものがなくなった首元はさらに同じ人物の手によってゆっくりとボタンもはずされていく。 途中まではずされたボタン。 「あれ、今日はあのだせぇシャツじゃねーのな。」 会長はさらに全てのボタンをはずし、肩まで服を脱がされる。 「おっ・・なんか・・中途半端の方が可愛いな。・・寒くないか?」 優しく笑う会長。でも僕は逆になぜか面白くなくて「寒いんですが。」と拗ねた。 「暑いから脱ぐって言ったのは椿だろ?」 「上着だけで十分ですよ・・」 「我儘だなー。・・よっと。」 「ひゃあ!!」 いきなり下から腕を服の中に挿し込まれ中をまさぐられる。 「手・・あったかいだろ。」 「あっ・・・!」 確かに入れられた腕はあったかくて気持ちがいい。 でも・・ 「うっ・・動かさないでください・・」 「やだ。」 否定も言葉と共にもう片方の腕も今度は直接背中の肌をなぞる。 ごそごぞと服の中を這う会長の腕。 離れたくても背中に回された相手の手、そして脱ぎかけのワイシャツが自分の腕を締め、それぞれ拘束し、結果身動きが取れないでいた。 「まだ首だけだったな。あれだけじゃあ終われねーよな。」 「え・・・?」 会長の言葉に先ほどの感覚が蘇る。 「あっあの・・・会長・・いつまで・・」 「俺が満足するまで。」 「そんなっ・・いつまで・・ひゃあ!」 あれから。 なんだか僕も夢中になってしまい、結局いつものようにソファーに移動するとすぐに会長の下に敷かれてしまいワイシャツも脱がされていた。 でもそこに寒さはない。 「椿・・・」 名前を呼ばれ濡れた舌で体のあちこちを舐められる。 「んっ・・くすぐったいっ・・・」 「でも嫌ってわけでもない・・だろ?」 時々歯で甘噛みされたり、ちゅううっと、きつく吸われたそこには赤い痕がくっきりとのこった。 「会長・・」 「なに?」 「もし、僕がイベントに忠実に何かお菓子を用意して普通に過ごしていたらこうはなりませんでしたよね?」 ふとした疑問を口にすると会長は柔らかく笑って。 「さぁ?どうだかなー。かっかっか!」 「もう・・」 しかたないなこの人は。そんな目で会長を見つめていると、静かだった部屋に不似合の機械音がなった。 電話の着信。 「お前の携帯?」 「はい・・」 「でろよ。」 「え?あ、はい。」 僕は寝ころんだ状態のまま隣りのテーブルに置いてある携帯に手を伸ばした。 「もしもし?」 『もしもし佐介?どこにいるの?もうこんな時間よ。』 「え?」 母に言われ時間を確認すると時間はもうすぐ7時になるところだった。 5時にパーティーを終えて・・じゃあ、あれから2時間も? 「あっ・・ごっごめん母さん!すぐに帰ります!はい!少し生徒会の仕事が長引いてしまって・・はい・・はい・・・じゃあ。」 電話を切って会長の顔を窺う。 「あの・・僕もう・・」 「心配してんだろ?もう帰ろうぜ。ほら服着ろよ。」 ほれ、と会長が服を渡してくれる。 僕は急いでそれらを羽織り支度をすませた。 会長が扉を開けようとしたその時、隣りにいた僕はきゅっ・・と会長の袖を掴んで甘えた。 「椿?」 「さっきのは・・本心ではないですからね?」 「ん、さっきのって?」 「すぐに帰りますと、母さんには言いましたけど・・本当はもう少し会長と一緒にいたいんですけど・・」 袖を掴む力が強くなる。 「まったく・・」 「離せなくさせるつもりかよ・・すげー嬉しい。」 再びぎゅうっと抱きしめられて、僕も答えて背中に腕を回す。 気が付けばまた唇が重なっていた。 次の日の放課後。 「あれ?昨日不機嫌だったのに今日はやけにご機嫌だね安形。何かあった?」 榛葉さんに言われ会長は 「んーまぁな。」 と、幸せそうな顔をして僕を見た。 FIN ------------------ 左の腕章の椿さとみ様からハロウィンフリー小説を強奪してきました! 私、さとみさんの書かれる安形さんが大好きです(唐突)安形さんならハロウィンと言わず年中悪戯されたい。むしろしてください椿ちゃんに! 今回はフリーに甘えさせて頂きました!さとみさん、これからも無理なさらず更新頑張って下さいませ(^∀^) |