高3文化祭捏造










一年前、ほんの一年前の今日、ボクに、オレに、兄が、弟が、出来た。


よそよそしくて、兄弟というにはあまりにも遠すぎる存在の君、お前。


あの日のボクは、オレは
君が、お前が、嫌いだった。

だけど、巡り巡って四季過ぎて、今はこんなにも君が、お前が、好き。






ドンッ


「ちょっとボッスン、邪魔なんだけど」


「わ、わりぃ……」


「暇なら他のクラス見てきなよ」


「お、おう……そうするわ」


今年も藤崎の仕事は準備段階の美術系で、一年前と同じくクラスの女子から邪魔者扱いされていた。



「なあスイッチ、椿は?」


レジを担当するスイッチに話しかける。


『椿は生徒会の仕事だ。ん?最愛の弟と回れなくて寂しいのか?ん?』



「う、うるせぇな…んじゃあまあ、その辺うろついてくるわ」


『ああ。あ、ボッスン、今日文化祭が終わったら椿と一緒に生徒会室へ行ってくれ』



「は!?なんで…まあいいや、わかった。」


『ヨロシク\(^o^)/』



藤崎は校舎の中を歩き回る。


知り合いは殆ど同じクラスであるためわざわざ見に行くクラスもない。
しいて言うなら妹、ルミのクラスだが自分が顔を出したら何と言われるか分からない。


「寂しいな」


気づけば口からはこんな言葉が漏れていた。






あてもないまま歩いていくと着いたのは校門で、椿を始め5人の生徒会メンバー達が入場者へ声掛けをしたりしていた。


椿は去年安形が着けていた鼻眼鏡を着けていて、遠くから見ても非常に笑えた。女子メンバー達に強いられたに違いない。


「おーい、つば…………」


滑稽な格好をしながらも目を輝かせながら働く椿に藤崎は話しかける事も出来ず、彼を呼ぼうと挙げかけた手をおろしクルリと身体を反転させ重い足取りで歩き始めた。


そんな藤崎の後ろ姿を椿は気づいていた。
寂しげな瞳で呟く。


「…………ふじさき?………」





独り歩く藤崎がたどり着いたのは去年と同じグラウンドの隅。

周囲は賑やかで楽しげな声が取り巻き、何ともキラキラとしていて1人佇む藤崎は目を細めた。


歩いている途中親交のある生徒に貰ったあめ玉を掌の上でコロコロと転がし暇を潰す。


はあ、と俯き1つ溜め息を吐いたその時。



「………………藤崎!」




バッと顔を上げるとそこには息を切らした椿がいた。



「…………つばき………?」

「……っはあっ……よかった…会えて…」



「……なんでここに?生徒会の仕事あるだろ…」


「いや…落ち着いてきたから任せてきた。今日は僕らの誕生日だから、少しでも一緒に過ごしたくて…」


「……………つばきっ……」


藤崎は椿に抱き着く。ぎゅうっと力を込めると相手からも同様に力が込められた。
椿の気取らない柔らかな匂いがして、何とも心地が良い。涙が出そうにさえなった。


「藤崎、誕生日おめでとう」


「椿、誕生日おめでとう…」






どのくらいの間こうしていただろうか。気づくと文化祭終了のアナウンスが流れ、キャンプファイヤーの準備が始まる。


辺りは次第に暗くなり、生徒達も校庭に集まり始めた。


2人は去年と変わらず校庭の隅にしゃがみこみ、生徒達の楽しげな声を聞く。



一年前は自分達が兄弟と知った日だった。仲も悪く、あの日だって喧嘩していた。

だが季節が巡り様々なことを乗り越えた今では全く違う。ただの兄弟でもなく、2人は恋人同士になった。




その証拠に今2人の手は固く繋がれている。


「椿…好きだよ」


藤崎はキャンプファイヤーの方を見つめたまま呟く。

「なんだいきなり…」


椿は驚き藤崎の方を向いた。


すると、藤崎も椿の方を向く。
2人の金色の瞳は炎でゆらゆらと揺らめいていた。


「ボクも好きだ。」


2人の瞳が閉じる。キラキラとした柔らかな雰囲気の中、唇が触れあった。


それは何とも甘く優しいキスだった。


どちらともなくゆっくりと舌を絡める。味わう様に、大切に、甘い音を立てながら長い長いキスをしていた。



すると、ポケットの中で藤崎の携帯が震える。



名残惜しそうに唇を離し藤崎は携帯を取り出す。


着信:ヒメコ と出ていて、
藤崎は不思議そうに電話に出た。



「………………もしもし?」


「あっ!ボッスン!あんたどこに居るん!?椿連れて早よ来んかい!」


「は!?どこに?」


「スイッチから聞いたやろ!生徒会室や!」


「あ、おお…聞いたような…」


「いいから早く来い!わかったな!」


そう言うとヒメコはいきなり携帯を切った。



「鬼塚か?」

藤崎の肩に身を寄せていた椿が問う。


「あ、ああ…今から生徒会室来いってさ」



「は?なんで……」


「知らねえ、まあ行くぞ」


藤崎は椿の手を引いて歩き出した。




並んで歩く2人の後ろ姿はやはりそっくりで、誰がどう見ても仲良し兄弟である。


生徒会室に向かう途中、藤崎が口を開いた。



「どれだけ時が流れても、ずーっと一緒だからな」



椿も驚いたようだがにっこりと微笑んで言う。


「ああ、ずっと一緒にいてくれ」




このあと、生徒会室で2人の誕生日会が盛大に行われた。


手を繋いで現れた2人が散々からかわれたのは言うまでもない。






幸せな、幸せな1日だった。










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肉球だよりの茶助様から双子誕生日フリー小説を強奪してきました!

もうこの情景が目に浮かぶような繊細な文章…そして幸せそうな双子……キュンキュンするわ〜(^///^)

双子が幸せで私も幸せです。
この度はフリーに甘えさせて頂きました!茶助さん、これからも更新頑張って下さいませ(^∀^)
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テーマ「人外ファンタジー」
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