「ぅぅ…またランキング最下位……」

皆が一心不乱に汗を流すトレーニングルームで、一人椅子に座り込み鬱々と息を吐いているのは、折紙サイクロンこと先輩である。
僕達ヒーローはただ市民を守るのではなく、活躍の如何によってポイントが振り分けられる。そのポイントでランキングがつけられ、スポンサーを背負う身としてはなるべく上位を位置したいところだ。しかし折紙先輩は中々それが叶わず、携帯で自分のランキングを確認しては肩を落としていた。
一通りトレーニングメニューを終え、僕はタオルで汗を拭いながら先輩の横に腰掛ける。

「先輩、あんまり気にしちゃいけないですよ。先輩はよく頑張っています」
「しかし…またスポンサーに何か言われてしまいます……」

先輩は背を丸め、すっかり頭を垂れている。どう声を掛けていいかわからなかった。
後から入ってランキングの上位にいる僕が言っても、嫌味にしかならないのだろうと以前にバイソンさんに軽く言われたことがある。勿論そんなつもりは全くない。純粋に先輩を元気づけたいと思っている。
純粋に、というのは少し語弊があるのかもしれない。僕は先輩を一人の男として好いているのだ。いつも一生懸命で、礼儀正しくて、人を自然と気遣える彼が可愛くて仕方なかった。
最初は恋心を自覚した時にどうしたものかと悩んだ。相手が自分と同じ男だという問題は、先輩の愛らしさでそこまで気にならなかった。ただ僕はこの何年かはずっと両親の復讐に囚われて生きていたので、恋愛経験が極端に少ない。しかも自分で言うのもなんだが、大概は僕の外見目当てで寄ってくる女性ばかりだった。それはヒーローになってから更に顕著である。放っておいても向こうから寄ってくるという環境で、自分から想いを告げたことなんてなかった。あとは、もう一つ告白に至れない理由がある。
とにかく僕は自分の気持ちを悟られないよう、日々ヒーローの一員として彼に接していた。

「ヒーローがスポンサーだの順位だの気にしてたら市民は助けられないって!」

大声を出しながら同じく先輩の横にどっかり腰を下ろしたのは、相方のおじさんだ。彼が勢いよく座ったせいでパイプ作りの椅子が片方に大きく傾く。
コンビで先輩を挟みながら、僕はずれた眼鏡を掛け直した。

「貴方はもう少し気にして下さい。昨日だって賠償金について注意されたばかりでしょう」

冷たく一瞥すると、カチンとしたおじさんはまた勢いよく立ち上がった。

「賠償金のことは今は関係ないだろーが!」
「もう少しヒーローとしての自覚を持って頂きたいんです。貴方のせいで僕まで色々言われるんですよ」
「なんだと!」
「なんです?」

僕も立ち上がり、二人して先輩の頭の上で睨みあった。先輩は所在なさげに肩を竦める。
他のヒーローはトレーニングを終えてこちらの騒ぎに気付いていたが、また始まったみたいな顔をして無視を決め込んでいた。先輩は僕達の顔を交互に見上げ、おろおろしている。

「二人ともやめてください!喧嘩はよくないですよ、バーナビーさん」

喧嘩を始めたのはおじさんだが、折紙先輩が僕のシャツの裾を掴んで懇願するので折れることにした。渋々と再び椅子に座ると、いたたまれなくなったおじさんはドリンクを取りに行くという名目で去っていった。やっと落ち着けて肩の力を緩める。

「先輩すみません。気を遣わせてしまって…」
「いえ、お二人が羨ましいです」
「そうですか?」

今の一連の流れに、どこか羨ましいと思われる部分があっただろうか。顎に手を当てて思索する。

「喧嘩するほど仲がいいと言います。僕もバーナビーさんみたいな相棒が欲しいです」

前半は賛同しかねないが、後半の言葉にぐっと唇を結ぶ。先輩は何気ない世間話のつもりだろうが、僕からしたらこれ以上の言葉はない。
先輩は無邪気に笑うので、僕も微笑を返した。

「相棒にはなれませんが、今夜良かったらご飯でもいかがです?美味しいスシバーを見つけたんです」
「スシバー!?」

途端にキラキラと目を輝かせ、幼い雰囲気になる。
スシバーは前に雑誌で新しくオープンしたのを目をつけていたのだ。念のために店の雰囲気や味を一回試しに行ってみたが、申し分ない店だった。きっと先輩も喜ぶだろう。

「行きたいです!」
「では、今夜七時にジムの前で」

約束を取り付けて、あとは急な要請が入らないことを祈るだけだ。その日はうまいこと呼び出しがかからず、それぞれメディアの仕事を終えてからジムに向かった。



早めに仕事を切り上げれたので、先輩と出掛ける前にジムで軽くシャワーを浴びた。熱いお湯で、心地よい疲れと解放感が体に染みていく。さっと髪を整え、服を来たらジムを出た。いつもの正面入口ではなく、裏口の方に向かう。
外はまだ陽が落ちきっていない。時間はまだ五分前なのを確認し、正面入口へ回った。

「先輩!」

先輩はジムの前で携帯を見ながら待っていた。声がする僕の方を見て、びっくりして目を大きく開いている。それも仕方ないだろう。
僕はバイクに乗り、エンジン音を響かせながら先輩の前に現れたのだ。勢いよく飛び出し、少しカーブをつけながらスピードを落とす。きゅっと最小限の動きで目の前に止まれば、先輩は驚いて後ろに跳ねた。フルフェイスメットのグラス部分だけ上げる。先輩は口をぽかんとさせながら僕を見ていた。

「バーナビーさん?」
「お疲れ様です。お待たせしてすみません」
「それは大丈夫ですが…これは社用車では?」

先輩は繁々とバイクを眺めている。
そう、バイクと言ってもこれは個人の物ではなく、普段出動の時におじさんと一緒に乗るものだ。白地に赤いラインが入り、頭の部分が突きだしたようなデザイン。ただいつもはおじさんが乗っているお間抜けな座席のジョイントは外していた。

「会社に貸して貰ったんです。僕は顔も割れてるし、事故やスキャンダルを起こさなければ使ってもいいと。むしろ宣伝になるって」
「成る程…」

頷きながら納得する先輩に、後部座席に掛けていた小ぶりのヘルメットを渡した。これはフルフェイスタイプではなく、普通の頭を覆うタイプの物だ。

「これは?」

先輩はヘルメットを両手で抱えながらクエスチョンマークを顔に浮かべていた。

「後ろに乗る人も被らないと違反になるんですよ」

僕が諭すように笑うと、先輩は目を丸くしていた。

「えぇ!?僕が後ろですか?」

先輩はヘルメットを落としそうになり、僕が手を伸ばして拾った。直接彼の頭に被せる。小さいかと思ったが、ぴったりだ。
先輩はどうやらバイクに二人乗りするとは思わなかったらしい。顎の下のベルトを締めると、擽ったそうにしていた。

「先輩は運転出来ないでしょう?」

ちょっと意地悪く笑ってしまう。
先輩は戸惑いながらバイクの後ろへ寄った。元々は一人用だが、僕が腰を前に寄せれば華奢な先輩は難なく収まる。座席に手をつき、足を掛けて跨ぐ。結構高さがあるので地まで足が届かず、横に倒れそうになっていた。先輩は慌てて僕の背中にしがみつく。座っても慣れない場所は不安定で落ち着かないらしく、怯えた小動物みたいにプルプルしている。

「す、すみません…バーナビーさん……」
「大丈夫です。落ちないようにしっかり掴まって下さい」

正直背中に先輩の温もりを感じられるのは嬉しい。照れを隠すようにアクセルを一気に回した。
ブウウンと轟音が響き、砂煙を後にしてバイクは走り出した。

「う、うわ……!」

最初は突然の加速に、慣性の法則に従って体が後ろに引っ張られる。先輩は頭が大きく仰け反り、僕の背中に再びしがみつく。ジャケットに顔を埋め、ヘルメットを擦りつけていた。
ギアチェンジをしながら徐々にスピードを上げていく。風を直に受け、髪の襟足が後ろに吹き付けられた。一般道路で車が交差する中を抜けていく。コーナーを曲がるとバイクが傾き、体も一緒に倒れそうになった。大きな道に出るとブリッジに差し掛かかる。
店は隣の都市にあり、下道を通るよりこの橋を渡る方が早いのだ。海の真上にある、都市と都市を繋ぐ赤い鉄橋に入っていく。向かい風は拒否しているかのように更に強く、潮気を含むようになった。少し湿気ている潮風は鬱陶しく、早く橋を越えようと急いだ。

「バーナビーさん」

突然先輩にシャツを引っ張られる。彼の声は潮騒に紛れて聞こえにくかったが、どこか弾んでいた。

「先輩、どうしたんです?」

運転中で後ろを向くことが出来ないので、バックミラーから盗み見た。彼はいつの間にか僕の背中に埋めていた顔を上げ、その横顔は赤く照らされていた。

「すごくきれいな夕日です」

僕も一瞬だけ彼が向いている方に視線をやった。
先輩の言う通り、夕日は確かに綺麗だった。丁度太陽が海の水平線に沈もうとしているところなのだ。真っ赤な空が海に反射し、水面がグラデーションを落としながら、一日の終わりを告げようとしている。眩しかった。

「そうですね…とても綺麗です」

美しい景色に感銘を受けながら、僕はそれを素直に受け入れないでいた。普段は通り過ぎていくだけの景色を、先輩は違った目線で見ている。同じ場所でも見える世界が全く違うのだ。
彼のいいところでもあり、僕の好きな理由もそこにある。しかし同時に、純粋な彼と居合わせる僕はとても不釣り合いに思えた。私怨に駆られ、見える筈のものが見えていない。これが僕が先輩に告白出来ないもう一つの理由だ。
寂しいような、羨ましいような気持ちに陥りながら、橋はもう終わりに来ていた。





「すごい!アクアリウムが店の中にありますよ!」

店は橋を降り、海に面した繁華街にある。窓から夜景と一面に広がる海が見え、とてもいい雰囲気だ。中に入るなり、先輩は拳を握りしめて中を見渡していた。気持ちが逸る彼をさりげなく席にエスコートする。

「日本では生け簀というらしいですね」
「おお…これが…!」

生け簀と言うには少々派手かもしれない。店中の壁一面は天井まである水槽になっており、中では優雅に魚達が泳いでいる。コの字型のカウンターが中央にあり、周りはシックなテーブル席が点々とある。薄暗い照明にジャズが流れ、あまり日本風ではないが気に入って貰えて良かった。僕達はカウンターにつき、一枚のメニューを二人で覗きこんだ。

「ううん…悩みますね……」
「先輩は何が好きですか?」
「やっぱりマグロは定番ですね!あとは海老とかサーモンとか……」

無邪気に語り、メニューとにらめっこしていた。その仕草がとても可愛い。

「じゃあそれを二人分お願いします。あとは今日のお勧めをいくつか」

ウェイターに注文すると、小気味のいい返事が返ってきた。僕達は出されたお茶を飲み、談笑しながら料理を待つ。静かで心地よい時間に、美味しい料理に舌鼓を打っていた時だ。

「あの…バーナビーさんですか?」

呼ばれた方に振り返ると、いたのは二人組の女性だった。二人ともカクテルカラーのワンピースを着て、スラリとしたいかにもなブロンド美女だ。胸の下で手を組み、体のラインを強調していた。

「ええ、そうですよ」

先輩との時間を邪魔されて内心腹立たしいが、それを出していけないのがヒーローである。如才ない営業用の笑顔で接したら、女性達は手を合わせてキャーと黄色い声をあげた。

「握手してください!」
「いいですよ」

礼儀正しく椅子から立ち上がる。僕が右手を差し出すと、両手で握って上下へ大きく振った。凍り付いた笑顔に汗がながれるが気付いていない。

「良かったら少しの間だけ一緒に飲みません?」

うっとりと目を細め、頬は紅潮している。すぐ終わるかと思いきや、女性達は思いの外酔っているらしい。両脇から強引に腕を引かれる。

「ちょ、ちょっと待って下さいっ…」

ヒーローという建前、邪険にすることも出来ない。
僕がこっそり先輩を見ると、ほったらかしにされていた彼はぽつんと座っていた。椅子から降り、彼も平静な笑みを向けてくる。

「ちょっとトイレに行ってきますね。僕のことは気にしないでゆっくりして下さい」

先輩はすっと席を去った。連れがいなくなったので調子に乗った女性達に強引にテーブルへ引かれる。一杯だけで終わろうと急いで酒をすすめたが、女性達は勢いよく飲む様子を見て更に酒を注いでくる。アルコールで陽気になった彼女達は、僕の懸念に気付かずしきりに語りかけてきた。何度か後ろのカウンターを見たが、先輩は戻ってきていない。気をきかせているのだろうか。
僕はへべれけになった女性の手をそっと外した。

「か弱い女性がこんなに飲んではいけませんよ」

顔を近付けてにっこり最大の笑みを向ける。彼女は元々赤い顔を更にぽっとさせ、小さく「はい…」と返事した。
やっと解放され、一目散にトイレに駆け込む。ドアを開けると手を洗いながらぼんやり立っている先輩がいた。

「あ、バーナビーさん」

先輩は水道を止め、いつもと変わらず僕の方を振り返った。息切って入ってきたのを悟られないよう、平静を装う。

「すみません。中々離してくれなくて…」
「いいえ。バーナビーさんはかっこいいし、仕方ないです。本当に羨ましいです」

彼が微笑むと、僕の眼鏡には影が落ちたような気がした。
食事に誘われて放っておかれたのに、いい気なわけがない。それでも相手を気遣う優しさを持っている。先輩の無垢な部分に惹き付けられるのに、どうしても自分の愚かさを呪ってしまう。僕は彼が思うような人間ではない。無性に腹立たしく、恥ずかしい。

「あ、もしかしてバーナビーさんもトイレですか?すみません。出ますね」

トイレは黒張りの濃淡な壁で正方形に囲まれた、一人用の個室だ。大理石で出来た洗面所から離れ、先輩は僕の横を抜けようとした。しかし僕は彼の行く先に腕を伸ばし、バンッと壁に手をついた。通れなくなった先輩が躊躇して止まる。頭一つ小さい彼を見ると、つむじがキラキラしていた。
不安げに見上げる彼に視線を下ろす。

「別に僕はトイレに来たわけじゃありませんよ」

壁に手をついたままジリジリと距離を縮める。
僕は自分が思っている以上に、さっきの女性と飲んだ酒に酔っているのかもしれない。理路整然とした口調ながら頭は真っ白だ。普段は内に溜めているものを、彼にぶつけようとしている。先輩は何も悪くないのに。
こんなことをする僕はやはり相当酔っているのだろう。

「あの…」

僕の邪な想いなど知らず、先輩の瞳は澄んでいた。彼の顎に手を添え、上へと向かせた。形のいい唇に自分の唇を重ねる。

「んっ…」

先輩は肩を竦め、逃げる為に首を動かそうとしていた。僅かに身動ぐ度に手の力を強め、壁に押し付けて唇を追いかける。

「バーナ、ビー…さん……」

呼ばれて薄目を開けると、彼の紫の目が僕を捉えた。クスッと笑い、舌で先輩の唇をなぞる。アルコールで熱くなった舌を拒否して唇を噛んでいた。先輩はギュッと目を閉じ、長い睫毛を震わせていた。

「先輩…」

前が開いたスカジャンの下にあるタンクトップに手を這わせた。彼は大きめの服をわざと着ているが、中身はとても細い。脇腹を擦り、胸の飾りを探す。
平たい場所が続く胸をまさぐり、目的の場所をようやく見つけ出す。僕はそこを指で摘まんだ。

「ぅあ……!」

初めてされたであろう行為に、ビクッと体を震わせていた。そこを引っ掻き、押し潰す。先輩は頭を嫌嫌していた。
後輩の愚行に殆ど抵抗せず、怒鳴りもしない。僕の行為は増長し、彼のベルトに手をかけた。

「ぁ……!」

怯えて垂れている性器を擦る。肌の色と同様に白く、幼い。少しずつ固くなっていくそこを愛撫し、僕の勃ち上がった物も先輩の腰に押し付けた。

「ぅぅ…」

言葉も交わさず、二人で荒い息を漏らす。先輩の表情を伺うと、眉を下げて今にも泣き出しそうだった。罪悪感に苛まれながらも止められない。
僕は再び先輩にキスをした。油断して開け放した口に舌を差し込み、歯列を辿っていく。深いキスで顔はより近くなり、密度の濃い睫毛が眼鏡を突いた。眼鏡を取れば良かったなと後悔する。

「ん、ふっ…ぅぅ……」

彼の舌を僕の口へ導いていく。短いそれを絡めとって吸えば、びっくりして歯を立てていた。僕も痛みに一旦退いた。
先輩は口端から唾液を垂らし、目を潤ませている。

「……バーナビーさん…」

懇願するような、すがるような、彼の声が震えている。僕のジャケットの裾を頼りなさげに掴んだ。僕も彼の長い前髪をかきあげる。

「…なんで」
「え?」
「なんでこんなことをするんですか…?」

先輩は大きな瞳からボロボロと涙を溢していた。大粒のそれは頬に伝って跡を残す。
僕はようやく、自分のしたことがどれほど重大で愚かしいか思い知った。途端にすっかり酔いが冷め、頭がずきずきする。体を退けて洗面所の立派な三面鏡を見た。情けない自分の顔がこれでもかと写される。

「…すみません。さっきの人と飲んだ際に酔ったみたいで。忘れて下さい」

我ながらせこく苦しい言い訳だ。
普通ならこんなので納得するわけがない。先輩は涙を手の甲で拭いながら、ふるふると首を横に振った。顔を上げ、目を腫らしても笑う。

「大丈夫です。僕も泣いちゃって、すみません」

こんな時でも先輩は僕を気遣う。彼は悪戯されたズボンを戻し、先にカウンターに帰った。僕は暫くトイレで反省と、興奮している自分の物が静まるのを待った。お互いが席についた時、何もなかったように振る舞ったが、それもぎこちないままだ。寿司の味がよくわからないまま会計を済ます。
外に出て、そういえば僕達はバイクで来ていた事を思い出した。このまま帰ったら飲酒運転になってしまう。

「先輩すみません。今すぐタクシー呼びますね」
「あ、はい…」

携帯で近辺のタクシー会社に電話する。忙しいのか、何度かコール音を鳴らしても中々出ない。少し気が急くと、横にいた先輩と一瞬目が合った。

「バーナビーさん…今日のことは、」
「え?」

先輩が何か言い掛けた時に、丁度ガチャと音を立てて電話が繋がった。出た人間がまた声が異常に大きく、耳がキンキンする。

「ええ、そうです。店の前で待ってますので…はい。お願いします」

通話が切れ、画面が暗くなる。僕は途切れた先輩の会話を始めようと努めた。

「先輩、さっき何か言いかけましたよね」

暗がりで彼の表情はよくわからない。ブリッジが遠くに見え、鉄橋は夜の闇を照らす為に明々とイルミネーションを輝かせていた。
ボー、と船の汽笛が聞こえる。アンカー船が水面の先を見ようとランプを回し、それに反射した時の先輩の顔は、赤いように見えた。でもランプの照明自体が赤いのだから、彼の顔が染まっただけだろう。船が迂回し、またふっと視界が悪くなる。

「なんでもないです、すみません」

タクシーが来た。
ヒーローの朝は早いのだ。先輩が言おうとしたことは気になるが、早々に家路についた。










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相互記念に、タイバニの兎折小説を書かせて頂きました!(^∀^)

まずは卯月さんとタイバニファンの皆様に一言だけ。





すみません(土下座)



助団以外の小説、しかもタイバニを書くのは初めてで…色々設定とかキャラとか大いに間違ってると思います……ガタガタ。

しかも話がトイレでもにょもにょとか、もう一つのスイ椿とかぶってる!かぶってるよ!!?書き終わってから気付きました…つまり私の発想が貧困なのが悪いんです。あ、ちなみに今回は兎→折のようにみせかけて実は兎→←折だった…らいいね……みたいな、ぐだぐだ小説です。卯月さん本当にすみません……!でも書いててとても楽しかったです(^∀^)

これからも更新頑張って下さいませ!(^///^)