「…はっ…ひっ…はぁ…はっ…はぁ」

「会長いいですよ。その調子。ゆっくりね。」

個室・二人きり・そして汗だくの会長。

危険な三拍子が揃い踏みなわけだが、今は決してそんなロマンチックな状況ではない。

話は数十分前に遡る。





今日は生徒会のメンバーと夏祭りに来ていた。

地域の小さな遊園地で行われるわりと本格的な祭りを楽しんでいたときのこと。

「あ。」

スケット団とあほの藤崎に出くわした。

「アホてなんだよ!!しかも俺がリーダーなのに俺だけスケット団から隔離!?」

「なんやキリに椿に…ああ、生徒会皆で来たんか。」

『ごきげんよう。』

「えぇ無視!?なんでお前らが話進めてんだよ!!」

「こんにちは皆さん。浴衣がよくお似合いですわ。」

「ミモリンかてかわいいわあ!!デージーさんももうみんなめちゃくちゃ似合てるで!!」

「ありがとうございます。」

「ART(ありがとう)」

「おほっ。なんだお前らもいたのか。」

「やあ、みんな久しぶりだね。」

やんややんやとなんやかんやで仲のよい女子。

きゃんきゃんと喧嘩しはじめる藤崎と会長。

藤崎がイラついたのでクナイぶっ刺してやろっかなと思っていたときのこと。

上級生連中に出会った。

「会長!!お久しぶりです!!」

ぱあっと花が咲く会長。

「かっかっか。もう俺は会長でもなけりゃ開盟の生徒でもねぇだろうが。」

「椿ちゃん久しぶり。浴衣似合うねぇ。あ、デート中だった?」

会長の浴衣をすっと整え、うなじが見えるよう後ろを引いてから俺にウィンクしてくる。

「そんなっ!!デートだなんて!!か…き、きょおは生徒会皆で…」

会長は無駄にうなじを開けてくるふわふわ頭(名前とか知らねぇけど)の手を振り払いあわてて否定する。

「テンパりすぎだ、テンパりすぎ。いいじゃねぇかデート。」

「まあ、ぶっちゃけ私たちは椿くんがキリといきなり二人では緊張するというのでついてきただけだしな。」

「あ、浅雛!!そ、それは内緒だって……あ。」

いつの間にか女子の輪を抜け、こっちに来ていた浅雛(先輩)が口を挟む。

やあ、デージーちゃん久しぶり。わああ、その浴衣かわいい!!などとガールズトークを始めたふわふわ頭(名前とか以下略)はほっといて。

「会長…今の話本当ですか?」

「あ、えっと……」

もじもじと効果音がつくほどに目をそらす会長。

や、正直かわいくて仕方ないんでやめてください。

「おン前ら何やってんだこのすっとこどっこいども!!せっかく祭り来たんだからさっさと自然を装って二人きりになっちまえよ!!加藤!!お前エスコートしろや!!」

「ちょ、会長!!」

「ほんとだよ。いいじゃないデート。わあ、若いっていいなあ。」

「榛葉さんまで!!」

ひゅーひゅーなんて同級生にも先輩にも後輩にもからかわれもう会長はかわいいかぎりだ。

あ、間違えたお気の毒なかぎりだ。

「おい、てめーら会長に向かって無礼だろ!!ほら散りやが」

『やや!!あんなところに観覧車がぁ〜!!』

「あ!?」

と、俺の言葉を遮ってスケット団の眼鏡がわざとらしく観覧車を指して言った。

そりゃあるだろ。小さいとはいえとりあえず遊園地なんだから。

「おほっ!!こりゃ行くしかねぇよなあ!!」

「観覧車ええなあ!!うちらも行こうやあ!!」

「行きましょう行きましょう!!」

「え?ちょ、」

「花火が上から見えるかもしれませんわね。」

「加藤ぉ〜観覧車で二人きりですることいったらなあ?」

「うるせぇ触んな!!」

とゆうわけで。

女子たちは女子たち。

スケット団はスケット団。

などと各々グループに別れて観覧車に乗り込み俺はもちろん会長と二人でつめこまれたわけである。

「たく、あいつらはしゃぎやがって。会長、大丈夫ですか?」

「ま、まあたまにはいいんじゃないか…?」

「…それもそうですね。」

暗くなりはじめた辺りに遊園地のアトラクションとは呼べないまでも十分楽しめる遊具のライトアップ、屋台の祭りらしい灯り。

そして浴衣の会長。

楽しくないわけがないわけで。

俺は柄にもなく自覚するほどに浮かれていた。

「会長?」

俺たちの乗るカゴも高さは中盤くらいに差し掛かったかな?くらいのころ。

会長がそわそわと落ち着かない。

「…っ、…え?…なっなんだ?…」

「会長?大丈夫ですか?なんだか顔色が…」

「…な、なんでも…」

「どうしました?酔いましたか?」

風はないので揺れてもいないが独特の感覚があるのでご気分が優れないのかもしれない。

向かいの席から会長の隣に移動しようとすると

「うわっ!!来るなァッ!!」

「ッ!!」

大声で拒否されてしまった。

「…会長?」

「あ、ご、ごめ、キリ、だけど僕、やっぱり無理だ降ろしてほしい、」

「え?」

そう言って立ち上がると会長は中から入り口の扉を開けようとする。

「はっ…はぁ…ごめ、ほんと…やっぱり無理だ!!」

「ちょ、落ち着いて下さい。大丈夫ですから。落ちませんよ!!」

高所恐怖症…か?いや、でも、脚立の上には平気で乗っていらっしゃるし…。

会長は完全に取り乱して浅い呼吸を繰り返していた。

「ふぁッ!!いやだっ!!」

「大丈夫ですから!!すぐ降りられますから!!」

扉の隙間から外の空気を吸おうとする会長。とりあえず暴れられては危険なので後ろから抱き締める。

「うわあぁッ!!」

「え!?」

落ち着かせようと思ってした行動は裏目に出たようで、会長は耳をふさいでうずくまってしまった。

「ふぇッ離れて、くれっ早く…ふっく…お願…ごめっ…」

「……。」

とにかく会長からすぐさま離れ距離をとる。相変わらずガタガタ震えている会長は痛々しくて見ていられないが解決策も見つからない。

一体どうしたらいいのか何も行動に移せずにいたその時。

どおぉおぉぉぉおん

「花火…。」

「…ひっ…ひっ…」

花火が上がると同時に観覧車の電気が消え、真っ暗な中花火だけが写し出される。

風情のある演出だが今は会長の様子が気になった。

「…はぁ…はあ…ふ…」

「大丈夫ですか会長?高いところダメなんですか?すいません。俺舞い上がっちゃって…気が回らなくて…」

「…はぁ…ひっく…その…違っ…て」

会長はその後、辺りが急に暗くなったことには特にパニックに陥ることもなく、むしろより美しく映える花火に気が紛れて落ち着いたようだ。

「会長…?」

「…はっ…すまな…キリ、僕、狭い…とこすごく苦手で…ふぅ…」

「え?あ、狭い…?ああ!!」

低い天井に圧迫感のある観覧車の中。閉塞感に耐えられず外の空気に触れたくなるのは高所恐怖症ではなく閉所恐怖症のほうだ。

「すいません!!俺知らなくて!!」

「謝らなくていいんだ!!…なんか…視力のせいか、実際よりうんと狭く感じて、すごく窮屈で、呼吸ができなくて、どんどん狭くなる気がして、」

俺は目についた非常用の窓を開けた。せめて少しでも空気が変わればもうけものだと思った。

「会長、窓開けましたから外だけ意識してください。俺はできるだけ離れてますから。」

「ご、ごめ、せっかく祭りに来たのに…」

「いいんですよ。せっかく来たのに無理をしてはいけません。ね?」

ちゅ

頬に軽くキスをして距離を取ろうとする。

と、くっと会長に手を引かれた。

対角線上に座る俺の手は会長と手を繋ぐ形になったためにぴんと伸びきっている。

「ちゃんとた、楽しかったし…その、僕も浮かれてて、…君がいれば大丈夫かなって乗ってしまって、…その、本当に」

どおぉおぉぉぉおん

ぱちぱち

ああ、華が綺麗だ。あ、ちげぇや。

「月が綺麗ですね、会長。」

「っ…ひっく…」

「また来ましょうね。」











ひっくひっく…ぽけー

「椿ぃ!?どしたんだお前!?」

「観覧車の中で号泣させるくらい激しいのするか普通?」

「な!!これは違っ」

「フレンチキスってしらないの?かわいく甘くロマンチックなのを求めてたんだよ。」

「な、な、」

「「「加藤(キリ)、お前最低(と伝えてください)。」」」

「なんでだああああああ!!」

加藤希里、高校生の夏。










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あらいやだの明里さんから5000hit小説を強奪してきましたあああ!!

掲載許可を下さった明里さん、ありがとうございます!

明里さんの書かれる椿ちゃんは本当に守ってあげたくなります(^///^)キリも優しくてかっこいいのに、それが椿ちゃん以外に伝わってないのが素敵です!

それでは、ありがとうございましたー!!
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