受験生の冬は、今まで過ごしたどの冬よりも冷え込む気がする。 気温の話だけではない。受験へのプレッシャー、勉強のストレス、将来の不安。自分の人生を問い質され、考えなければいけない。それらが向かい風になって吹き付けてくる季節だ。 「もしもし、椿。夜遅くに悪いな。明日の事なんだけどさ…」 深夜、薄暗い自室で恋人に電話しているのは安形惣司郎だ。IQ160の隠れた天才と呼ばれる彼に、受験のストレス云々は関係のない話だ。 しかしいくら成績が良くても、やはりある程度の受験対策はしなければいけない。生徒会業務をこなしていた放課後も、今は引退して図書室で自主勉強に励む日々だ。 彼にとって勉強自体は苦痛ではない。 「ああ、明日は一日中家にいるから。一時な、わかった」 現役の生徒会会長として活動している、椿との時間が極端に減ったのが何より辛かった。 一年生が二人加わり、慣れない環境の中で向こうも忙しい。 今まではほとんど毎日一緒に過ごしていた。 それがなくなり、土日に安形の模試や椿の生徒会業務が被れば、一週間丸々会えないなんてざらだ。 「じゃあ、また明日な。おやすみ」 勿論メールや電話で連絡は取り合っている。しかし若い二人には、直接の触れ合いはとても重要だ。 「……あーやりてーなー……」 安形は携帯を握りしめたまま机に突っ伏した。正直な話、受験のストレスより性欲の方が溜まっているのだ。 「先週会ってないから、前にしたのが二週間前か……」 体を起こして椅子にもたれ掛かる。頭の後ろで手を組み、天井を仰いだ。 目を瞑り、二週間前を思い出す。 『会長…んっ…、あ…』 乱れた衣服、紅潮した頬、熱い吐息、切なそうに自分を呼び、首にまとわりつく。 「……あ、やべ。勃っちまった」 こうなると勉強どころではない。下半身の疼きを治めなければ、集中して勉強なんて出来ない。 安形は引き出しにしまっていたDVDを取り出し、自分のパソコンで再生した。 『ああん!』 椿に少し似た、ショートカットの女が高く喘いでいた。目も胸も大きくて可愛らしい感じだが、椿の方が肌が白くて睫毛が長い。 『ん、気持ちいい。もっとしてっ』 声がでかくてわざとらしいのが耳障りだ。 安形は媚びた笑顔よりツンとした顔の方が好きだ。 しかしいくら文句をつけても反応してしまうのは、男の悲しい性である。 安形はぼんやり眺めながら自分のものをしごいた。時々目を細めて椿の姿を被せる。うるさい矯声が邪魔したが、呆気なく射精した。 「………はあ…」 手の平に垂れる精液を見てると空しくなる。 体はすっきりするどころか、倦怠感に覆われた。一人で吐き出す性欲は、まるで事務処理だ。 結果は同じでも、椿と睦言を言いながら体を重ねる行為とは全く違う。 「…もう寝るか」 画面の女はまだ苦しげに鳴いていたが、もうどうでもいい。ティッシュで手を拭き、電源を落とした。 ―ピンポーン― 玄関のチャイムと同時に目が覚めた。 時計を確認すると、丁度約束の一時だ。普段から暇があれば寝ているが、よりによって大切な日に寝過ごしてしまった。 来る前に部屋の掃除をしたかったが仕方ない。 簡単に着替えて玄関に向かった。 「お邪魔します。…会長寝てましたね」 「え?なんで?」 「寝癖ついてますよ」 椿がフフ、と小さく笑った。その可愛らしさに抱き締めたくなるが、玄関先なので我慢した。 「これ、ケーキなので良かったらご家族と食べて下さい」 「おお、わざわざ悪いな。上がれよ」 椿は白いシャツに濃い緑のセーターを着込んでいた。黒いマフラーを巻いていたが、外の冷気で頬っぺたが赤くなっている。昼まで寝ていた自分を恥じた。 手土産を冷蔵庫にしまい、暖かい自室へ誘う。 「飲み物淹れてくるけど、コーヒーでいいか?」 「はい。あ、手伝いますよ」 「いいって。体冷えてるだろ。部屋で待っとけ」 腰を上げようとした相手を制し、安形はリビングに降りていった。 会長と副会長という関係が体に馴染んでいて、椿は待つ事に慣れていない。手持ちぶさたになり、くるりと部屋を見渡す。 安形の部屋はシンプルだが、棚にはたくさんの本がある。 漫画や雑誌もあれば、椿でも理解出来ない難しい本や洋書も置いてあった。 机の上には昨夜の勉強の跡が乱雑に残っている。 ノートと教科書が開きっぱなしだ。横には空のDVDケースとパソコンがあった。 「?何を見たんだろう?」 何気なくケースに書かれているタイトルを読むと、それは卑猥なタイトルだった。 再生しなくても内容が想像出来る。 勉強机に似つかわしくないそれを突然目にして、椿の顔は真っ赤に染まった。 「…これを…会長が…」 恥ずかしさと、勝手に見た後ろめたさと、嫉妬が込み上げてくる。悲しいのか怒りたいのかよくわからない。 同時にたくさんの感情が渦巻き、彼の頭はパニックになった。 「椿ーコーヒーはミルクと砂糖いるか?」 何も知らない安形が間抜けにドアを開ける。お盆にはコーヒーとケーキが二つづつ乗っていた。 「あ、会長、ありがとうございます…」 椿は咄嗟に振り返ったが、机の上を見ていたのは一目瞭然だ。申し訳なさそうに俯いている。 しまった、と安形は額を押さえた。 「……見ちゃったか?」 コクン、と無言で頷いた。眉を下げて複雑そうな顔をしている。それは安形も同じだ。 「こんな物を未成年が見てはいけません!」といつもの調子で怒鳴ってくれた方がましだ。 どうすればいいのか頭を悩ませる。 弁解するべきか、開き直るか、いっそ何も無かった様に過ごすか。いや、久しぶりの二人の休日だ。変な空気で過ごす訳にはいかない。 「…怒んねーの?」 盆を机に置き、腰を下ろした。椿もそれに従う。 「別に怒ってはいません」 声は少し素っ気なく、明らかにムッとしていた。自分でもその事に気付いたらしく、一つ咳払いをした。 「若い男子なら仕方ないと思います。我慢出来るものではありませんし…」 お前も若い男子だろ、と安形は苦笑いした。椿は両拳を膝に置き、こちらを伺っている。目が合うと、ぷい、と逸らした。 「それに…」 よく見ると目の縁に涙を溜めている。苦しそうに息を吐いた。 「僕、では…あまり、満足させれ、ない…と思いますから……」 途切れ途切れに言葉を並べる。わかりやすい強がりが可愛い。下げている頭を安形はくしゃくしゃに撫でた。 「泣くなよー」 「泣いてません…」 ぽろぽろと涙を溢す彼を自分の胸へ引き寄せた。椿は顔が見られないように隠していたが、服が濡れていくのがわかる。安形は困ったような、しかし愛しそうに目を細めた。 「椿が一番に決まってるだろ。会えないからこういうの借りてるけど、このDVDだって椿に似てる子探して、見てる時もお前の事考えたんだぜ」 そう言うと、照れた顔を上げた。困惑しているようだが、もう泣き止んでいる。 「…会長のバカ…」 頬を染めてまた胸に埋まった。 短い前髪で剥き出しになっているおでこまで赤い。安形はその前髪をかきあげ、額にキスした。 再び視線が交じり、見つめあう。 「…出来れば、あんまりああいうのは見て欲しくないです」 「わかった」 今度は唇にキスを落とす。舌でなぞると、ゆっくり口が開いた。そこから深く口付け、吐息すらも相手に吹き込んでいく。 「…ん、会長、コーヒー冷めますよ…」 「また入れればいいって」 シャツに手を入れ、腰を撫でる。骨ばっていて薄い。椿は身動いだが、抵抗はしなかった。 「あ、ん、会長…」 首筋を舐めあげた。見える所に痕を残すと怒るので、肩口を甘噛みして付けていく。 「んっ、や」 再び唇にキスしながら、椿のベルトを器用に外す。 下着の中で半立ちになっているものを握りこんだ。 「…あ、う…会長ぉ……」 快感に耐え、吐息だけ漏らそうとするが、たまに堪えれず喘ぐ。その声が安形は好きだ。 わざとらしい大きな喘ぎ声より、この方がいやらしい。鳴かせたくなる。 「っん、ふっ、あ…」 この椿を毎日見れたら、と考えた。 こんな風に毎日触れ合えれば、別にDVDなんて借りなくてもいい。実際、生徒会で会ってる時は一度もそんな事はしなかった。 ふと、視界の隅で携帯を捕らえた。昨夜働かなかった頭脳が動き出す。 この文明の利器で溢れる現代には、簡単に欲望を満たす便利な物がある。 これに彼の姿を収めればいいのだ。 「あ、ん!」 カシャ、無機質な機械音が響いた。いつの間にか床に倒され、ズボンを半分下ろされた椿が思わず目を開く。 甘い交わりの最中に聞こえたそれはひどい違和感だ。今はそれが鳴るタイミングではない。しかし視線の先で、安形は携帯を片手に見下ろした。 「……会長、何をっ…!」 椿は腕を伸ばしてきたが、ひょいとかわして背中を向ける。 丸めた背中から携帯を覗いてきた。 局部が丸見えになっている画面が見えたのだろう、息を呑むのが聞こえた。 「消してください!」 肩から再び腕を伸ばしてきたが、背中で押し返した。 「さて椿」 身を引きながら笑顔で振り返った。椿はずっと背中を押していたので、その勢いで安形の胸にもたれ掛かる形になる。 「なんです?」 携帯を持つ手を上げ、親指は画面の決定ボタンに触れている。椿は嫌な予感がして、額に汗が流れた。 「俺も男だから定期的に性欲処理をしておきたい。けど肝心のお前は忙しいし、俺も孤独な受験生だ」 どこか演技かかった口調で話し出す。 わざとらしく大きいため息をついた。 「会えないけど溜まるものは溜まる。その処理を手伝うDVDを、お前は見て欲しくない。俺もお前の悲しむ顔を見たくない。どうすればいいと思う?」 「どう、するって…」 椿は言い淀んだ。 「椿、DVDの代わりにお前のいやらしいとこ動画に撮らせてくれよ」 ふぅ、と耳に息を吹き掛けると、ビクン、と体を強張らせた。 下の服はさっき脱がされて剥き出しのままだ。安形は小さな尻を撫でた。擽ったそうに震えている。 「…そんなの、出来ません…」 二人の時に、お互いを見ながら体を重ねるのはいい。 しかしそれを撮影され、データとして半永久的に保存される。そしてそれを、自分の知らないところで一方的に見られる。例え見るのが安形だとしても、その行為には抵抗があった。 椿は訝しげにこちらを睨んだ。しかし安形もなんの策もなしに交渉する男ではない。 「じゃあさっきの写真、生徒会の皆に送るぜ?」 「はっ……!?」 親指に僅かに力を入れれば、例の写真を一斉送信出来る。安形は確信めいた笑みを浮かべた。 「どうする?」 携帯を目の前でチラつかせた。メール画面には浅雛、丹生、榛葉と並んでいる。 椿は先程一瞬見えた写真と、三人の顔を思い浮かべた。ぐっと唇を噛む。 「…選択権なんてないじゃないですか」 「よくわかってるじゃん」 安形のいつもの高笑いが疎ましい。椿は一瞥の目を向けたが、本人は気にしていなかった。 「…どうすればいいんですか」 「おお、そうだな」 安形はふむ、と考え込む動作をしたが、携帯は絶対手放さなかった。 「じゃあズボン脱いだままそこのベッドに座れ。ちゃんと俺に見えるように足を開けよ」 まだ時間は午後に入ったばかりの明るい部屋だ。 普段の安形にされるがままの行為ですら恥ずかしいのに、自ら足を開かなければいけない。椿は後ろを向いて足に引っかかっていたズボンを脱いだ。下半身は清潔な白い靴下だけになる。 重い腰を上げ、倒れこむようにベッドに座った。安形はニヤニヤしながらそれを見ている。その視線から逃げるように距離を置いたが、ベッドの上では壁際までが限界だ。 「………っ、」 椿は安形に向き直った。 正座から足を外に向けて座っている。足の角度を更に外に向け、両膝を伸ばした。そこから膝を曲げて体育座りの形に変える。 今はまだ見えていない、ここからだ。 爪先に力を入れ、ゆっくり足を開いていく。顔を上げると安形と目が合い、下を向くと自分のそこが見える。結局、俯いたまま目を瞑った。 「…これで、いいですか」 羞恥に震えながら足を開く姿。レンズ越しに映る彼は娼婦のようで、処女のようでもある。 安形は感嘆の息を漏らした。 携帯を握る手が汗ばむ。喉がゴクリと鳴った。 「じゃあその格好で自慰してみろ」 「そんな…!」 「わかってるだろ?」 安形が諫めるように目を光らす。椿は先程の一方的な取引を思い出した。 安形に逆らうということは、つまり写真が露呈してしまうという事だ。くっと唇を結び、利き手である左手で自分のものを掴んだ。 そこは行為への恐怖と抵抗で萎えている。ギュッと力を入れて無理矢理上下に動かした。 「っふ、う」 椿は声が漏れないように右手で口を押さえていた。 しかし安形が退屈そうに頬杖をついている。 あのDVDの様に大声を出せばいいというものでもないが、これではつまらない。 「おいおい椿ー、動画なんだからもっと動きとか声がないとつまんないだろ」 「そんな事、言われても…」 椿は涙目になっている。こなすのに精一杯で、どうしたらいいかわからずにただ手を動かしていた。 安形は画面に映る彼を観察する。どうすればいい映像が撮れるか、考え込む様はまるで監督気取りだ。 「お前だって一人ですることくらいあるだろ?そん時どうしてるんだ?」 一人でする、そう言われて思わずドキッとした。事実だが、指摘されると恥ずかしいものだ。 「俺に撮られてる事は一旦忘れて、普段やってるみたいにしてくれよ」 安形は宥めるような優しい声だ。 「普段みたいに…?」 椿は言われた通り、思考を現在ではなく時折過ごす寂しい夜へと動かす。 そんなに一人でする回数は多くない。ただ、無性に寂しくて眠れない夜がある。安形の事を考えると体が熱くなり、疼いてくる。 そんな時はベッドの中で目を瞑り、抱かれる妄想に浸る。 「会長…んっ…会長ぉ……」 現実の椿は途端に色っぽい声を出した。肩をすくめ、切なそうに眉をよせている。自身も立ち上がり、先走りが溢れていた。自分の名前を呼びながら自慰にふける、安形は画面の中の彼に見入った。 「…エロいな」 たまらなくなった安形は自分もベッドに登った。勿論録画は続けている。 開いた足の間に体を割り込ませた。突然迫られ、椿は驚いて体が跳ねる。 「え、会長…なに…」 「手伝ってやるよ」 空いてる手で先走りを掬い取る。粘液がドロリと垂れた。 それを秘部に塗り付けた。ツプン、と長い中指が入る。 「ひぁ!」 楽しむように指を自由に動かした。根元まで入ったところで第二関節を曲げる。そうすると丁度椿のいい場所に当たるのだ。 「や、あ、っあ!」 「手がおろそかになってんぞー」 自分を慰めるところを撮影されながら、後ろを攻められる。異様な状況に椿は混乱していた。 短い呼吸を繰り返し悶える顔をアップで映す。恥ずかしさのあまり手を画面に突き付けたが、安形が指を三本に増やすと抵抗をやめた。 「あ、あ…ん会長……」 「もういくか?」 「…はい、もう…」 言い終わる前に中が痙攣した。 椿の自身から勢いよく精液が飛び出し、安形の服にかかる。溜まっていたのだろう、量が多くて濃い。 「あ、ごめんなさい…」 黒いセーターに白いそれはよく目立つ。 指を引き抜き、かかった精液を掬う。挑発的な表情で舌を出し、見せつけるようにそれを舐めた。 「これはお仕置きだな」 器用に片手でベルトを外し、自分のものを取り出す。 既に硬くなって天を仰いでいた。久しぶりに見るそれを思わず目で追う所も、カメラは拾った。 安形はニヤリと口の端を上げる。 足を下ろしてベッドに腰かける状態にした。そして椿の腕を引き、床に座らせる。 「口でしてくれよ」 自分の陰茎と不安な顔で見上げる椿が映る。 彼は目の前にあるそれと、携帯を交互に見た。 「…これも撮るんですか?」 「当たり前」 椿の瞳が揺らいでいる。安形は躊躇している頭を引き寄せた。柔らかい頬に、硬くいきり立ったそれが当たる。 「椿」 促すように名前を呼んだ。両手を添えてそっと舌を這わし出す。 乾いているものを舐めて、全体を濡らしていく。そこからくわえ込み、口の中で懸命に舌を動かした。ちゅぷ、と薄い唇から音が漏れている。 「んっ…ふっ、う」 安形は椿の頬を撫でた。 「こっち向けよ」 くわえたまま目だけをこちらに向け、レンズの光に怯える表情に、ゾクゾクした。上から見ると睫毛の長さが改めてよくわかる。携帯を通した向こうで安形は妖しく笑う。椿はすぐに視線を逸らした。 「もっとちゃんと舐めろよ」 「…はい」 口に入れたままモゴモゴと返事をした。 まだ半分だけだが、もういっぱいになっている。椿はなるべく舌を使って全身に刺激を与えようとしていたが、安形はまた頭を押さえた。 「んむっ、ふぁ、あ」 椿は喉に当たって嗚咽が込み上げていた。 強引な抜き差しの中、限界が近付いてくる。もうそろそろか、安形はそう感じると、口からそれを引き抜いた。ドクン、と脈打ち、白い液が椿の顔にかかる。 綺麗な顔が白濁に凌辱された。 「ちょ、会長…」 「俺にもかけたからこれでおあいこな」 「だからって…」 さっきまで喉を突かれたせいでうまく喋れなかった。 睫毛にも精液が飛んでいて、瞬きするとポタリと涙のように落ちる。 安形は興奮で息を呑んだ。 自分も床に降りて、相変わらず携帯片手のまま椿を押し倒す。 彼は軽く頭を打ち、汚れた顔が痛みで歪んでいた。その一瞬の隙に膝裏を持ち上げ、カメラでそこを捉えた。 「やっ、会長…やだ!」 「嫌じゃないだろ。口でしてるとこ撮られて興奮しやがって」 椿のものは再び立ち上がっていた。安形に詰られて、そこがピクンと震える。 「違っ…」 「違わねーよ」 安形も興奮していた。掴む足を押し、秘部をぐっと広げる。先程指を入れていたおかげで、そこは濡れていた。 自身を差し込むところをズームで映す。いつも見ている光景が生々しいような、非現実的にも感じた。 「やぁ…っあ、あ」 椿の足を自分の肩に乗せ、深く挿入する。腰を強く打ち付け、激しく出入りした。ぐちゅぐちゅと肉の抉れる音が耳も犯す。 「あ、ん、ん、んんっ」 「なんかいつもよりきつくねえ?撮られるの好きなのか?」 「そんなの、好きじゃない、です」 律動しながら途切れ途切れに答えた。 自身を痛いくらいに締め付けていて、体の方が正直だ。 安形は椿の陰茎の根元を掴む。ギュッと強く握ったせいで、痛みで顔をしかめた。 「嘘つくといかせないぜ」 「嘘なんて……っあ!」 根元を掴んだまま、いいところを緩く突いた。快楽の波が渦巻いているのに、塞き止められて苦しい。椿は腹筋に力を入れた。 「会長…意地悪しないで……」 「なら言えよ」 顔を覗きこまれ、携帯が眼前に迫る。 レンズに映る自分が見返していた。その表情は快楽に支配され、絶頂を望んでいる。こんなところをずっと撮られていたのか、椿の頭はぼんやりしていた。 「カメラに撮られて……気持ちいいです…会長、いかせて…」 「仕方ねーな」 陰茎を掴む手を離し、奥を遠慮なく突く。塞き止めていたものが急に解放され、椿はあっという間に達した。 中がきつく収縮して、その衝撃で安形も欲を吐き出した。 「……はぁ、」 肩で息をしながら携帯を確認すると、再び飛んだ白濁の液で画面は白くなっていた。 録画停止ボタンを押し、椿を抱き締める。 「…会長」 「ん」 彼の冷えた体はすっかり熱くなっていた。そういえばずっと携帯を持っていたから、今日初めて体を密着したのだ。 安形は強く強く、抱き締めた。 「おほっ!これ本当にエロいよなー何度見ても飽きないわ」 「…あんまり本人の前で見ないで下さい」 二人は情事後、ベッドで寝ながら過ごしていた。汚れた衣服を洗濯機に放り込み、洗い終わるのを待っている。 「お前だってノリノリだったじゃん」 安形はうつぶせに寝転がりながら、ずっと携帯を眺めていた。 椿はそれを横目で見て、安形の腕に擦りよった。 「ん?」 「動画じゃなくて、本人を見てください…」 椿は顔を赤くして目を伏せていた。睫毛の影が目尻に落ちている。 安形は枕元に携帯を置いた。 コーヒーは冷めているし、洗濯機の終了した音が下から聞こえる。 しかし久しぶりに会う愛しい恋人の姿を目に焼き付ける為、二人はそれらを無視した。 |