ギンガだんかんぶ ジュピター



「ナマエさん! 大丈夫でしたか!?」

「コウキ君。うん、大丈夫だよ。そっちは?」

「大丈夫です! 今度はこっちが行き止まりだったみたいです」


コウキ君と合流するまでの間、他の下っ端を相手していた。
中には研究員もいて、ギンガ団が何をしているのか考えたくない。


「……また二つですね」

「今度は私が奥の階段に行くよ」

「じゃあボクは手前の階段ですね」


結局正解と不正解の階段の見分けが着かないまま、既に3階である。
見た所、このビルは4か5階のように見えるけど……どこまであるんだろう。

そう思いながら奥の階段を上り、広がった内装は……。


「薄暗いな……」


初めに思ったのはそれ。
次に誰もいないこと、部屋が狭いことに気づく。


「ハズレか……!」


急いで階段を降り、コウキ君が向かった階段へと走る。
その時、近くに貼ってあった”この道を迷わずに行け! それがサクセスロード!”と書かれたポスターに気づく。


「まさか……!」


そういえば3階へ続く階段に上る前にも、こんな感じで意味の分からないポスターがあった。
まさか、これが貼ってある階段が正解……?


「!」


コウキ君が向かった方の階段を上りきると、目の前に広がったのは廊下。
まさか、ポスターが目印だったなんて……!

廊下を走って角を曲がると、そこには男性が立っていた。
私の足音に気づいたのか、男性がこちらに気づいた。


「もしかして、貴方が自転車屋の店長ですか……?」

「そうだけど……君もあの子もどうしてここへ?」

「貴方が帰ってこないと言っていた子がいたんです。そして、ポケモンセンターでポケモンがいないと困っていた子がいて、もしかしたらギンガ団が絡んでいると思ってここへ」

「その、いなくなったっていうポケモンは、ミミロルのことかい?」


男性が視線を向けた方へ首を動かす。
そこには、ギンガ団であろう女性と、見た事の無いポケモン。
そして、それと対面しているコウキ君がいた。

図鑑を取りだして、女性の後ろにいるピッピの隣で震えているポケモンに向ける。


「あれがミミロル……そして」


今度は女性の使用ポケモンであろうポケモンに図鑑を向ける。


「スカタンク……スカンプーの進化形なんだ」


……油断できない相手だって事ね。


「スカタンク、”つじぎり”」

「!! ユンゲラーッ!」


ユンゲラーはスカタンクの攻撃により倒れてしまった。

つじぎり
悪タイプの技で、急所に当たりやすい特徴を持つ厄介な技だ。
それに加え、ユンゲラーに悪タイプの技は効果抜群。
毒タイプだけど悪タイプを持っているから、エスパータイプの攻撃は全く効かない。
相手が悪かった、というわけだ。


「……頼む、モウカザル!」


コウキ君が投げたボールからモウカザルが飛び出す。
彼の手持ちは2体。モウカザルがやられてしまえば負けになる。

……その時は私が相手をするだけ。
でも、何となくなんだけどさ。


「モウカザル、”かえんぐるま”!」

「!」


コウキ君はいろいろと持っていると思うんだ。
バトルの才能や運とか。
今まさに目の前で起こった事とか、ね。

何が起こったのかというと、”かえんぐるま”の追加効果でスカタンクがやけど状態になったのだ。
やけど状態はダメージを受けると共に攻撃が下がる。
相性で見ると悪タイプの技ならモウカザルはほとんどダメージが入らないと思う。
だけどスカタンクは毒タイプでもある。モウカザルには毒タイプの技で攻めてくるはず。


「スカタンク、”えんまく”」

「っ、見えない……!」


どうやら相手は守りに入った様子。

えんまく
この技はダメージを与えない代わりに相手を不利にする変化技に分類される。
えんまくの場合、相手の攻撃の命中率を下げる。


「モウカザル、”かえんぐるま”だ!!」

「ふふっ、どこに技を出しているの?」

「な……っ!?」


見ての通り、モウカザルの技が不発に終わってしまった。
この煙幕をどうにかしないと技は当てにくいだろう。

だが、スカタンクにとっては有利だ。
モウカザルの攻撃を躱しやすいし……


「スカタンク、”どくガス”」


相手の不意を突きやすい。

スカタンクの”どくガス”が命中し、モウカザルはどく状態になってしまった。


「さて、お互い状態異常になったわね。どちらが先に落ちるのかしら」


この状況を楽しんでいるかの様子な女性。
……コウキ君、完全に舐められている。

でもね、私少し思うところがあるんだよね。
相手のスカタンクの方が強いと思うんだけど、何故こうも弄ぶような真似をするのか。
向こうにとって私達は侵入者、さっさと片付けたいはず。

なのにどうしてバトルを終わらせるような戦い方をせず、徐々に追い詰めていく戦い方をするのだろう。


「随分と余裕そうですね。いいんですか? こんなに長く相手をしていて」

「あら、気を使ってくれるの? なら負けてくれるかしら」

「それはできない話です……モウカザル、”マッハパンチ”!」


コウキ君がモウカザルに指示を出す。
だが、この煙幕の中じゃ……。


「!」


モウカザルの攻撃は外れたけど、コウキ君の狙いは分かった。


「……なるほど、そういうことか!」

「あらあら、当たっていないわよ? スカタンク、”いやなおと”」


いやなおと
その名の通り嫌な音を出して相手の防御を下げる変化技だ。

……これでスカタンクの覚えている技すべてが分かった。
相手のスカタンクの攻撃技は”つじぎり”しかない。
先程”いやなおと”を指示したのは、タイプ相性によるダメージ半減と、やけど状態による攻撃力低下の影響を少しでも軽くするため。

そして、”どくガス”でモウカザルをどく状態にしたのは、少しでも早くバトルを終わらせるため。
……舐めていたわけじゃない。
様々な条件が揃ったからこその戦い方だった訳だ。

でも、もう”えんまく”は効かないと思うよ。
だって……


「モウカザル、もう一度”マッハパンチ”だ!」

「!」


どうやら向こうもコウキ君の意図に気づいたらしい。
だって明からにさっきと状況変わっちゃったもんね。


「なるほどね……”マッハパンチ”ばかり指示していたのは、視界を元に戻すため」


先程までは部屋いっぱいに広がっていた煙幕も、モウカザルによって段々と視界がはっきりしはじめた。
これでモウカザルが攻撃を外すことはなくなる。


「正解です……今だ! モウカザル、”かえんぐるま”!!」

「!!」


今度こそスカタンクに攻撃が直撃した。
そして、度々負っていたやけどダメージもあってスカタンクが倒れた。


「……お子様に負けるだなんて、油断って怖いわね」


そう言いながらギンガ団幹部の女性は、スカタンクをボールへ戻した。
ということは……コウキ君の勝ちだ!


「ふうん、強いのね……いいわ。ポケモン像の調査も終わった、発電所のエネルギーもマーズが集めた」


ひとつだけ教えてあげる
ギンガ団幹部の女性はそう言いながらこちらへ近付く。


「あたしたちのボスは、神話を調べ伝説のポケモンの力でシンオウ地方を支配する……。あなた達、ギンガ団に逆らうのはやめておきなさい」


では失礼
それだけ言ってギンガ団幹部……ジュピターはその場を去った。
同時にビルが静かになった。





2023/2/4


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