おめでとう! ムックルは ムクバードに しんかした!



「モウカザル、戻って」


モウカザルの出番は終わりだ。
彼も分かっていたようで、こちらを向いて頷いた後ボールへと戻っていった。


「へぇ、引っ込めちゃうんだ。こんなに有利な状況なのに?」

「今回はこの子の試練と決めたんです。モウカザルは助っ人ですから!」


ナタネさんの言葉にそう返答しながらボールを投げた。
ポンッと音を立てて飛び出してきたのはムックルだ。


「もう”リフレクター”の効果が切れているのは分かってます。……いくよ、ムックル! ”つばさでうつ”攻撃!」

「っ! ……やったなー!」


ムックルの攻撃はチェリムに命中。
攻撃は効いているようだけど、防御力が高めなのかムックルの攻撃に耐えた。


「くさタイプらしい粘り強い戦いを見せてあげる! チェリム、”やどりぎのタネ”!」


ナタネさんの指示した技は聞いた事のない技だった。
チェリムはムックルに向け、種を飛ばした。
命中したその種は発芽し、ムックルの身体に根を生やしたかのように成長していくではないか!


「何、その技……?」

「おや、知らないのかな? ”やどりぎのタネ”っていう技は分類は変化技になるんだけど、相手の体力を徐々に減らしていく技なの!」


私の中でくさタイプは、トリッキーな技が多いイメージだ。
相手の体力を吸い取って自分の体力を回復させる、といえばくさタイプが一番に浮かぶほどにね。
現にスボミーも”すいとる”という技を覚えている。

それ以外にも、状態異常を付与する技を多く覚えるイメージがある。
どく状態やまひ状態、ねむり状態とかね。


だから、”やどりぎのタネ”というその技の効果に、くさタイプらしい技だと思った。

……くさタイプのポケモンは早めに行動不能にする
長引くとこちらが厄介になるポケモンが多いから

幼馴染たちがそんなこと言っていたなぁ、と思い出した。


「さあどうする? カントーからの挑戦者さん?」

「……交代はさせません。これはムックルへの挑戦ですから」


私がムックルを見つめると、向こうもこちらを振り返った。
そして、「まだやれる」といった強い眼差しをこちらに向けたんだ。


うん、分かってるよ。
これは君の……ムックルの挑戦だ。

モウカザルとルクシオと同じく、強さを求める君にとって。


「いける? ムックル」


こちらを振り返りムックルは私を見て頷いた。
ムックルと過ごしてまだ数日しか経っていないけれど、彼の事は分かってきたと思っている。


ムックルは本来、群れで行動するポケモンだ。しかし、この子は群れから仲間外れにされていた。
その理由について正確には分からないけれど、前に自分がいた群れであろうムックル達に立ち向かっているところをみると、彼は強さの違いで孤立してしまったのではと思うんだ。

……まるで、強くなりすぎて自分と周りの差に悩んでしまった(ruby:レッド:かれ)のようだ。


「さあいくよ! ”つばさでうつ”攻撃!」

「チェリム、”マジカルリーフ”!」


”マジカルリーフ”
この技は必中技であるため、躱すことができない。


「いっけええええっ!!」


ムックルは”マジカルリーフ”を受けながら、チェリムへ向かって降下する。
そして、その翼はチェリムへと直撃したのだ。


「チェリム!」


ムックルの攻撃が衝突したチェリムは、後ろへ吹き飛ばされた後フィールドに倒れた。
暫く待ったが、立ち上がる様子がない。
ということは……ムックルの勝ちだ!


「やったね、ムック……」


ムックルに褒め言葉を送ろうとしたときだ。
ムックルの身体が輝きだしたではないか!

もしかして、これは……!


「うっそぉ……! ここで進化を見れるなんて!」


光が収まりそこから姿を現わしたのは、進化して姿が変わったムックル。
すぐさま図鑑を取りだし、彼へと向けた。


「ムクバード……ムクバードって言うのね!」


進化してどこか逞しくなったように見えるのは気のせいではないだろう。
まさか、こんなにも早く進化した姿を見られるなんて!


「さて、感動的なものを見せてもらった後だけど、あたしには切り札がいるんだよ!」


そう言いながらナタネさんがボールを投げた。
そこから現れたのは、どこかスボミーと共通点のあるポケモンだった。

持ったままだった図鑑をそのポケモンへと向けた。


「ロズレイド……そうか、あのポケモンが……!」


ジュン君が言っていたポケモンの名前は、あのポケモンのことだったのか……!

スボミーの最終進化形態、ロズレイド
なんて綺麗なポケモンなんだろう……!


「!?」


そう思っていると、突然ボールから誰かが飛び出して私の隣に降り立つ。


「スボミー……?」


ボールから飛び出してきたのは、スボミーだった。
……もしかして、見たいのかな。
自分の進化の果ての姿であるロズレイドを。





2022/2/4


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