フォルムチェンジ
以降もムックルに攻撃の指示を出したけど、ナエトルに決定的な攻撃を与えられていない。
向こうも攻撃を出しているけれど、ムックルにダメージを与えられているか、と言われたらまずまず、と言った所。
何が言いたいかというと、戦況が変わらず、どちらかが倒れるか、共倒れがするか。
……それは状況的に嬉しいものじゃない。
「ナエトル、”にほんばれ”!」
「!」
辺りが眩しくなる。
そして、肌に暖かな光が当たる。
___この状況を突破するには、これしかない。
「……ムックル、交代よ」
「!」
私の判断に、ムックルはこちらを振り返った。
その表情は「どうして」と言っているように見えた。
「違うよ、一時的に交代するだけ。それに、今の状況は(ruby:彼:・)に適している」
今回はムックルに経験を積ませるため、彼をあまり出していなかった。
だけど、今の状況はあの子に適している!
「だから、一時的に休んで。すぐに貴方の出番はくるよ」
ムックルは私の言葉が通じたのか「わかった」と言うように頷いた。
それを見て、私は呼応するように頷いた後、ムックルをボールへ戻した。
腰のベルトにムックルのボールを直した後、その下にセットしていたボールを手に取った。
ボールを握れば、燃えるような熱い感覚がする。
……この時を待っていたんだね。
「お待たせ。……出番だよ、”モウカザル”!!」
ボールを投げ、飛び出してきたのは、シンオウ地方で私の初めてのパートナーになってくれた相棒……モウカザルだ。
「へぇ、モウカザル。コウキ君も持っていたね」
「例え同じポケモンでも、私のモウカザルはコウキ君のモウカザルと違う事を見せてあげます!」
何故私がモウカザルに交代を選んだのか。
一つは今の天候だ。
今の天候は”にほんばれ”という、日差しの強い状況だ。
この天候にはある特性がある。
それは……ほのおタイプの威力を上げるというものだ。
「いくよ、モウカザル! ”ひのこ”!!」
いつもより威力が上がった”ひのこ”がナエトルに向かって行く。
以前、モウカザルは”かえんぐるま”という技を覚えた。
しかし、その技を覚える前に使用していた”ひのこ”を忘れたわけじゃない。
相手は”リフレクター”を貼っている。
”かえんぐるま”ではダメージを軽減される。
だから、特殊攻撃である”ひのこ”で戦う!
「……っ、ナエトル!」
”にほんばれ”の効果で威力があがった”ひのこ”がナエトルに直撃。
それと同時に発生した煙により、ナエトルの状況が分からない。
「……!」
煙が晴れた。
そこに広がった状況は、ナエトルが目を回して倒れている光景だった。
「……なるほど、あたしの選択を利用したってわけね」
「……貴女よりは短いけれど、私もポケモントレーナーですから!」
2人の才能ある幼馴染と一緒に旅に出て、ポケモンにも、バトルにも、ポケモンを使った様々な事も知った。
そんなのはナタネさんには及ばないだろうけど、私だってポケモントレーナーというものに1歩踏み入れた者。
ならば……ポケモンと心を通わせることや、ポケモンを知ることは当然のこと!
「やられたよ。だったら次は……この子だ!」
ナタネさんは次のポケモンを繰り出した。
そこから出てきたのは……見た事のない可愛らしいポケモン。
咄嗟に図鑑を取りだし、ポケモンに向けた。
「チェリム……。あ、ジムトレーナーが使っていたチェリンボの進化形なんだ……!」
チェリム及びチェリンボはくさタイプのポケモンだ。
チェリンボは愛らしい赤色のポケモンだ。
しかし、その進化形であるチェリムは何というか……表すならつぼみのような姿だ。
そう思った時だ。
「姿が……変わった……?」
なんと、花を咲かせるようにチェリムは姿を変化させたのだ。
これは一体……?
「その様子だと、この姿のことを知らないようだね」
「これは、進化ですか? でも、進化のようにはとても……」
「これは”フォルムチェンジ”っていうんだ。今のチェリムの姿は”ポジフォルム”っていうの。最初に出てきた時の姿は”ネガフォルム”。チェリムは”にほんばれ”によって姿を変化させるポケモンなんだ」
フォルムチェンジなんて初めて聞いた。
カントー地方でそんなポケモンを見た事も、聞いた事もない。
「その反応、初めて聞いたのかな?」
「はい。カントー地方にはそんなポケモンいなかったので」
「じゃあ、シンオウに来た意味があったね! というわけで……バトルに戻ろうか!」
オーキド博士も言っていたけど……ポケモンって本当に不思議な生き物だ。
それは脅威で、未知であるけれど、それを知るのが楽しい。
私はまた一つ、ポケモンについて知る事ができたかな。
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2021/12/20
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