あまいミツを てにいれた!



「ムックルっ!!」


”どくガス”を受けてしまったムックルはその場に倒れしまった。
苦しそうに呻くムックル。

”どくガス”は受けた相手を『どく状態』にする技だ。
どく状態とは、ポケモンが受ける状態異常の一つで、その中でも厄介なものだ。

他の状態異常と比べ、分かりやすい状態ではあるが、その中でも受けるダメージが大きい。更にどく状態にはもう一段階上の『もうどく状態』というものが存在する。

今回はどく状態であるが、厄介なことに変わりはない。
速攻で相手を倒すか、ムックルのどく状態を治すか。


「……! ムックル」


毒に苦しみながらも体勢を立て直したムックル。
可愛らしい顔は毒を受けた影響で青白くなっている。


「……分かった。君が現状を望むのなら、このままいくよ」


迷っていた二択は前者を選ぶことになった。
ムックルを長時間毒で苦しませたくない。


「ムックル、”つばさでうつ”!」


なるべく攻撃は受けたくない。
物理技でも”つばさでうつ”は軌道を変えやすい。

先程使用した”でんこうせっか”は先制攻撃を狙いやすいけど、”つばさでうつ”と違って相手に体当たりする技だ。先程のように躱しやすい技を受けやすくしてしまうリスクがある。

それだったら多少リスクの低い方を選ぶ。
これ以上ムックルに無理をさせたくないから……!


「終わらせる……”でんこうせっか”!」

「スカンプー、”ひっかく”だ!」


もしあの時モモンのみでどく状態を治していたら、先程と同じように”どくガス”を使われていただろう。
もしかして、それを分かってムックルは解毒を選ばなかったのだろうか。


ムックルの”でんこうせっか”は、スカンプーに攻撃の隙を与えることなく直撃。
スカンプーは目を回してその場に倒れてしまった。


「……だからいつまでも下っ端なんだよな、オレ」


下っ端?
ここにいる彼らはギンガ団という団体の中では下っ端という立ち位置だということは、幹部、ボスが存在しているはずだ。


「……どこまでも似てるな」


黒い服を着てカントー地方で悪事を働いていた人達……ロケット団に。

隣でもう一人のギンガ団の下っ端と戦っていたコウキ君も勝ったようだ。
彼を見ていたら目が合い、ニコリと笑みを見せてくれた。


「この子供ら! 強いぞ! すごい強い! なんて言うか、強いぞ! 仕方ない。ひとまず発電所に戻るか……」


そう言ってギンガ団の下っ端達は花畑から去って行った。
これで男性も人安心なはずだ。

しかし、目的だった発電所キーを取り返すことはできなかった。そう思ったのだが……


「あれ、これなんだ? あいつらの忘れ物かな?」

「これ……発電所の鍵ではありませんか?」

「俺たちが探しているやつですか!?」

「うん、発電所キーって書いてあるよ。探してたのかな?」

「はい!」

「分かった。とりあえずキミ達に渡しておくね」

「ありがとうございます!」


なんと、あの下っ端達は慌てて逃げ去ったからなのか、発電所キーを落としたことに気がつかなかったようだ。
これは運がいい。


「キミ達助かったよ! あいつら甘いミツを寄越せって無理矢理に奪おうとしてね……。おかしな格好でおかしな事言って、よく分からない連中だった!」

「ということは、最近になって活動し始めた人達なのかな……」

「そうなんですかね? 俺はコトブキシティで会ったのが初めてでしたよ」


どうやらコウキ君はコトブキシティでもギンガ団のしたっぱと遭遇したらしい。その時はヒカリちゃんとナナカマド博士が居合わせていたそうだ。


「そうだ! お礼をしないと! この甘いミツ! 沢山持って行っておくれ!」


男性は甘いミツの入った容器を沢山分けてくれた。
この甘いミツはシンオウ地方に生息するミツハニーというポケモンが作っているそうだ。

後でムックルに分けてあげよう。
頑張ったお礼だ。


「もしかして、向こうに沢山飛んでいる虫ポケモンがミツハニーですか?」

「そうだよ。ビークインっていうミツハニーの進化形がいるんだけど、彼女に喜んで貰うために花の蜜を集めているのさ」


ニコニコとした可愛らしい表情で周りを飛んでいた虫ポケモンは、やはりミツハニーという。
男性の会話に出てきたビークインというポケモンはミツハニーのメスが進化した姿なのだという。


「って、こうしている場合じゃないよ!」

「早く発電所に行かないと!」

「それでは! 甘いミツありがとうございました!」

「気をつけてねー!」


慌てて花畑を去る私達を、男性は見えなくなるまで手を振り続けていた。





2021/12/14


prev next

戻る














×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -