対 千羽山中



「さて、約束通り来てあげたよ。鬼道さん?」


目の前に見えているのは、フィールド。
現在、僕は帝国学園対世宇子中との試合を見にフットボールフロンティアスタジアムに訪れていた。

鬼道さんはベンチに座っている。
地区予選決勝戦、雷門中との試合で負傷した為、大事をとってベンチに下げられているようだ。


「しかし、世宇子中か……。特別出場枠である帝国学園と、招待推薦校の世宇子中。どんな試合展開を見せてくれるのかな?」


腕を組みながらフィールドを見つめる。
あの実況していた人さえ知らなかった学校。


「……」


帝国と対峙している世宇子中の選手をジーッと見つめていると、試合開始のホイッスルが鳴り響いた。


「ま、帝国は昨年優勝しているくらいだし、勝てるでしょ」


背もたれに寄りかかり、足を組んで笑みを浮かべた。
……しかし、それは数分後に崩れる事になる。



***



「……ぁ、」



言葉が出来なかった。
目の前に見えているのは、幻なのではと思うほど酷い光景だった。
ありえない。帝国学園のメンバーが、ボロボロの姿で地に倒れているなんて。

モニターに映っているスコアは、0-10と表示されている。
……その10というスコアは、帝国ではなく世宇子中のもので。
それだけなら良かった。


「あの人の技……、」


視線を向けたのは、キャプテンマークを付けた世宇子中の選手。
あの人の使っていた必殺技……、


「僕の必殺技に、そっくりじゃないか……!!」


僕が使う必殺技に酷似していたのだ。
僕の必殺技は兄さんが考案したもので、見ただけで習得出来るものではない。
同じ技ではないみたいだが、あそこまで似ているとは思わなかった。
……真似など出来るわけがない、と思っていたのに。

観客席からの声援は“無”だった。
長い髪を靡かせて、フィールドを後にした人物が視界から消えるまでジッと見つめた。





2021/02/21


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