対 秋葉名戸学園



試合当日
現在僕は、3つの問題に頭を悩まされていた。



一つ目


「貴方……、名前に似ているわねぇ……」

「別人です」


目の前にいるのは、何故かメイド服を着ている春奈。
……可愛い格好してるなぁ。なんて、おっさんみたいな事を思い浮べてしまった。
まあ、自分があまり女性らしい格好を好まないからこんな風に思っちゃうんだろうけど。


「あ、そういえば前に名前が兄さんがいる、って言ってたわね……。もしかして、名前のお兄さんですか!?」


僕に詰め寄りながら春奈はそう言った。


「そ、そうそう!そうだよ!!」

「自分とそっくりな兄がいるって言ってたけど、こんなにも似てるなんて……」


とりあえず春奈は僕の事を、兄と認識したようだ。
……良かった、兄さんと自分の顔はよく似ているっていう事しか言ってなくて。
似ているとよく言われるんだけど、圧倒的に違いが分かる部分がある。
それは___髪の色だ。

兄さんの髪の色は綺麗な黒だ。
なので、似ているとは言われているけど違いは分かりやすい。


「名前は何処にいるんですか?」

「イ、家ニイルンジャナイカナー」


ちょっと棒読みになってしまったが、春奈は特に気にすることはなく木野さんの所へと向かった。
……まずは一つ目の危機をクリアした。
改めて思うけど、なんで僕は春奈に対してこんなにコソコソしているのだろうか……。



2つ目


「カオリちゃああああん!!」

「だーかーらーっ!!僕はカオリじゃないって言ってるだろ!?」


先日、メイド喫茶で会った秋葉名戸学園サッカー部の一部メンバーに追いかけ回されている事だ。
しかもメイド服持ってるし!?


「それ、マネージャーが着るんだろ!?僕は選手なんだけどッ!!?」

「君にも似合うよ!!是非着て欲しい!!いや、着てくれぇーっ!!!」

「嫌だあああああッ!!!」


メイド服とカメラを片手に僕を追いかけ回している今日の対戦相手の選手達。
試合前だぞ!?此処で無駄な体力を使わせるなよ!?


「誰か助けてよおおおおっ!?」


僕のSOSの声が届いたのか、円堂さんと風丸さんが助け出してくれた。
感謝……っ!



3つ目


「“光のストライカー”ではなかったんじゃないのか?」

「嘘つきました実は本人です……」


ベンチに座り腕を組んで、こちらを見てちょっと楽しそうな口調でそういったのは豪炎寺修也だ。
ここ数日いなかったから忘れていた。……この人の存在を。


「此処にいる、と言うことは“光のストライカー”だと捉えて言いんだな?」

「好きにして下さい……」


そもそもこの人に話さなくても、それ以外の人(春奈を除く)にはバレているんだ。隠しても無駄だろう。
っていうか、複雑な僕の心を読んで気を使ってよ!?


「……その怪我」

「ああ、これか?決勝までには治る。心配するな」


怪我している足に視線を持っていくと、豪炎寺修也はそう言った。


「御影専農との試合、見てたよ。……残念だね、あんたのプレーを見れないのは」

「俺が怪我をした事でお前は呼ばれて此処にいるんだろう?……俺としては嬉しいけどな」

「…?うれ、しい?」


豪炎寺修也の言葉に首を傾げていると、


「あーっと!!?あの姿はもしや!?」


と、試合でよく聞く実況者の声が聞こえた。





2021/02/20


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