対 秋葉名戸学園



練習後
……あれが練習と呼んでいい内容だったかは分からないけど。


「はいこれ。貴女のユニフォームよ」

「ありがとう」


現在
僕は約束通り理事長室に訪れた。
部屋の中には雷門夏未がいた。

相手の手には『17』と書かれた雷門のユニフォームがあり、それを渡された。
受け取るものは受け取ったし、もう用はないので部屋を出ようと雷門夏未から背を向けた。


「サッカー部に入るなら、入部届が必要なんだけど?」

「ああ、そのことなんだけど…。僕、サッカー部には“まだ”入らないよ」

「何故?彼らの前に現れたのは、“認めた”って事じゃなくて?」


帰ろうとした所、雷門夏未から呼び止められた。

そっか。
この人の前で僕は、何故か強がって“認めていない”って言ったんだった。
昔からずっと兄さんに言われている、僕の『悪い所』だ。


「御影専農中との試合を見て、やっと気持ちの整理がついたよ。……僕は彼らを認めている。だからって、すぐにサッカー部に入る訳じゃない」

「…つまり?」


雷門夏未の方を振り返る。


「今回、秋葉名戸学園との試合に出て、僕に合うチームなのか実際に見極める事にする。…それから入部するかしないかを決めるよ」

「…やっぱり貴女、生意気ね」


腕を組んでこちらを見、微笑む雷門夏未。


「その言葉、僕にとって褒め言葉なんだよね」


雷門夏未に向かってニッ、と笑い返す。


「見せてみなさい、“光のストライカー”と呼ばれる貴女の力を」

「あんなチーム、本気なんて出さなくても勝てるよ」

「へぇ? 随分と余裕そうね」

「余裕だよ。僕の事勝手に調べたあんたなら分かってるだろうけど……僕、世界レベルだから」


言う事言って僕は理事長室を後にした。
荷物を持って外に出たとき、ある事に気付いた。
制服ではなかったことに。


「…このまま帰るか。着替えるの面倒だし」


ジャージのズボンにTシャツの格好のままだったことを思い出したが、面倒だったのでこのまま帰った。
雷門夏未から受け取った雷門中サッカー部のユニフォームをバッグに入れて。





2021/02/19


prev next

戻る














×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -