対 御影専農中
「イライラする試合だな……」
変わる事のない状況にイラついていた時だった。
「えッ!?」
雷門ゴール前から誰かが…って、一人しかいないけど。
なんとキャプテンさんがゴール前を離れたのだ。
しかもキャプテンさんはボールを奪って、攻め上がっているではないか!
誰にもパスする事なく、キャプテンさんはボールを蹴った。
御影専農のキャプテンさんはそのシュートをキャッチしたが、やはりキャプテンさんの行動には驚いているようだ。
「は、はは……っ」
「どうした、嬢ちゃん」
「い、いや……っ、意外な行動だったものでさ。あははっ」
急に腹を押さえて笑い出した僕に、鬼瓦のおっさんが声を掛けてきた。
11番の人に怒鳴られて、ゴール前へと戻っていくキャプテンさんを視界に入れる。
「GKがシュートって、はははっ。………やっぱり面白いや、雷門」
雷門夏未。
前に貴方に言った言葉、撤回するよ。
確かに雷門中サッカー部は弱いし、最初は興味なかったよ。
でも、あのキャプテンさんがいるから、見てて飽きない。
「認めるよ。…僕は、彼らの試合を見てサッカーがやりたくなってしまった。弱いくせに面白いからこうして見に来てしまう。暇つぶしなんて嘘さ」
キャプテンさんの影響で動きが変わった雷門中を見ながら、本心を述べる。
始まりはあのキャプテンさん。
彼らの試合を見れば見るほど、その魅力に惹かれている自分がいる。
「あ、背中から倒れた。……痛そ〜」
背中から倒れながらも、キャプテンさんは御影専農のエースストライカーさんの必殺シュートを防いだ。
……貴方の行動に、僕は既に惚れているんだろうね。
だからと言ってサッカー部に入るわけじゃないからね。
御影専農のコーナーキックで試合再開。
ボールは御影専農の選手が取ったが、息があってなかったのか、二人同時に飛び上がってボールを取ろうとした。
さっきまでの連携が嘘のように崩れたのだ。
そのボールは御影専農のエースストライカーさんの前へと跳ねていった。
御影専農のエースストライカーさんが拾い、先程打った必殺シュートが雷門中ゴールへと迫ってきている。
「……は?」
なんとキャプテンさんはゴールを離れたのだ。
目の前でシュート放ってんじゃん!見えてないの?!
「! 豪炎寺修也が、キャプテンさんに近づいて行く…?」
まさか、二人で打ち返す気?
そう思った瞬間、キャプテンさんと豪炎寺修也は相手の必殺シュートを打ち返したのだ。
御影専農のキャプテンさんは必殺技を使わずにボールを止めようとしたが、ゴールを許してしまった。
1-1
同点だ。
「あのシュート……新必殺技かな」
「そうなのか? 嬢ちゃん」
「今日初めて見たから、多分そうだよ」
鬼瓦のおっさんの言葉にそう返事をする。
さ、この流れに乗るんだ。雷門。
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2021/02/18
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