対 御影専農中



僕が昔の記憶にうなされている間に話は進んでいたようで、どうやら決闘という名の勝負をする事になったらしい。
キャプテンさんと御影専農のやりとりを見ていると、漫才を見ている気分だった。


「…ま、そのお陰で嫌な事忘れられたし」


ありがとう、キャプテンさん。
心の中でお礼を言っておく。


「私、橋の所で動画撮りにいくけど…。名前はどうする?」

「ここで見ておくよ。この決闘を見たら帰る」


ビデオカメラ片手にそう尋ねてきた春奈に、僕はそう答えた。


「さっき具合悪そうだったし、部活終わるまで待ってて?送ってくわ」

「大丈夫だってば。大袈裟だなぁ春奈は。それに、サッカー部の練習の後って結構暗いし、送って貰ったら春奈の帰る時間が遅くなっちゃうよ」


本当……どうしてこんなにも優しいんだろう。
春奈はどんなときでも隣にいてくれて、僕に取っては大切な存在だ。
もし、僕を送っていった後に不審者とかに襲われたら、と思うとその優しさに頷けない。
春奈は自分の顔に自信ないって言ってたけど、結構人気なんだよ?
僕が男だったら彼女にしてたかも。……なんてね。


「……そう、分かったわ。じゃあ先に言っとくわね」

「うん、バイバイ春奈」

「マネージャーやりたかったらいつでも言ってね!大歓迎よ!!」

「え」


そこはバイバイじゃないの!?
春奈の発言に心の中でツッコむ。


「あ、あはは。ま、マネージャーね!う、うんっ、考えとくよ」

「分かったわ!じゃあね名前!気をつけて帰るのよ?」

「うん〜」


ぎこちなく返事を返した後、橋へと向かった春奈に手を振る。


「……マネージャーなんてやらないけど」


マネージャーなんかに入ったら余計に抑えられなくなる。
そう思いながら、ベンチに座ったまま河川敷のグラウンドで行われようとしている決闘とやらを眺めていた。
内容は、互いにシュート1本を打って止められるか止められないか、というもの。
先程春奈に聞いたが、御影専農のキャプテンはGKらしい。


「どんな内容になるのか……御影専農、見せて貰おうか」


マネージャーさんがホイッスルを鳴らす。
御影専農のエースストライカーさんがドリブルを開始し、キャプテンさんがいるゴールに向かって行く。
そしてボールを高く上げてシュート体勢に入った。


「! あれは……!」


豪炎寺修也の必殺技“ファイアトルネード”じゃないか……!
まさか、必殺技をコピーしていると言うのか?


「本当はロボットなんじゃ…」


前回の雷門中の対戦相手が動物でしょー?次の対戦相手はロボットってか?
……まともな人間はいないのか。

キャプテンさんは御影専農のエースストライカーさんの必殺技を、尾刈斗中で初めて見せてくれた必殺技“熱血パンチ”で迎え撃った。
直撃したボールは、ゴールのクロスバーに直撃したが、ゴールの中へと入っていった。
……まるで、それすらも計算のうちのように。


「……どうするの、豪炎寺修也」


チラリと本来の必殺技の持ち主である人を見る。
どうやら本人も思うところがあるようで、黙ってフィールドの中へと踏み入れた。


「あの技は貴方の技だ。……彼らに証明してあげなよ」


偽物コピーは本物に勝てない。それを教えてやれ。

フィールドにはボールを片足で踏んでゴールを見つめている豪炎寺修也、ゴールには、御影専農のキャプテンさんがいる。
マネージャーさんのホイッスルの音が鳴り響く。
豪炎寺修也はドリブルを開始し、“ファイアトルネード”の体勢に入る。


「“ファイアトルネード”!」


豪炎寺修也の必殺シュートが御影専農のキャプテンさんに向かって行く。
…勝てないと次の対戦相手に向かって堂々と言った自信、見せて貰おうか。


「“シュートポケット”!」


御影専農のキャプテンさんの必殺技が展開される。
ボールは段々と威力が弱まっていき、御影専農のキャプテンさんはボールをキャッチした。
…なるほど、確かによく調べているようだね。


「……さて、サッカー部はどう対策するのかな。ロボット人間に対して」


そう言葉を呟いてベンチから立ち上がり、帰路へと向かった。





2021/02/18


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