対 野生中



「ボロボロ…。間違ってはいないな」

「正直、豪炎寺が来てくれたから勝てたしな…」


僕の返した言葉に2番の人とキャプテンさんが苦笑いを浮べる。
あ、やっぱり自覚あるんだ。


「なあ、サッカー部どうかな?見に来てたって事は、ちょっと興味あるって事だろ?」


こちらを見てそう言うキャプテンさんを、麺を啜りながら横目で見る。
…ああ、今の格好。学校帰った後に着替えてきたから、パーカーにズボンで僕の事『男』と思ってるのか。
最後の麺を啜って、水を飲む。


「悪いね。…サッカーはやらないよ」


キャプテンさんのお誘いにそう答えて箸を置く。
…僕は、サッカーをやらないって決めたから。

置いていたヘッドフォンを首に掛けて財布を空ける。
食べたラーメンの金額ぴったりのお金を出して、その場に置く。


「ごちそうさまでした!」

「はいよ。…いつもその場に置いていくのはやめろって言ったろ」

「ちゃんと払ってるんだからいいでしょ〜?それも、お釣りでないようにさ!」


雷雷軒のおっさんの言葉を聞き流しながら席を立つ。
じゃあまた来るね〜、と言いながら出口へ向かって歩く。


「…ん?」


急に前に進めなくなった。


「あ、あれ?」


必死に前に進もうとしたが、全く前に進めない。
……誰かに腕を掴まれてる?
そう思い後ろを見ると、鋭い視線と目があった。


「おい」

「はい?」


なんということでしょう。僕の腕を、豪炎寺修也が掴んでいるではありませんか!
しかも、何故か睨まれてるし!!
…っていうか、なんで僕腕掴まれてるの?


「お前………。もしかして、光の」

「別人です」


つい反射的に出てしまった。
だって、『光の』って言ったよこの人!!その続きはもうストライカーじゃん!!
つい先日…尾刈斗中であった帝国の2人(鬼道さんと佐久間さん)にバレたばっかなのに!!


「いや、絶対光のスト」

「だから別人だって!!!」


僕が大声でそう言うと、腕を掴む力が弱まった。
その一瞬に気付いて、掴まれていた手から逃れる。
「おっさんまたね!!」と言ってぴしゃりとドアを閉めて、雷雷軒を出た。


「………もう少し強くなって貰わないと、サッカー部には入れないかな〜。…そもそも僕、女なんだけど」


女子ってFF出られるのかな?小学生部門は出場出来たけど……。
そうボソリと言って、雷雷軒を離れた。

手に持ったままだった財布をポケットにしまって、首に掛かっていたヘッドフォンを耳に当てる。
携帯を取り出して、音楽アプリを起動し曲を再生した。


「……サッカーは、もうやらない」


だって、僕と同等のレベルでできる人なんていないんだから。
そんな事を考えながら、転がっていた石を軽く蹴った。





2021/01/17


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