二つの光が照らす時



立向居家でお昼をいただいた後、僕たちはすぐに出発した。
そして、地下鉄という初めて見た乗り物で移動すること数分……。地下鉄ってあっという間に着いちゃうからびっくりしたよ。

んで、それを降りて少し歩いたら……もう会場は目の前。


『想像よりも大きいな……あそこで受付してるみたいだ。行こう、名前』

『じいちゃんとばあちゃんは観客席にいるからなー』

『ああ。見ていてくれ、じいちゃん、ばあちゃん』


会場に着いたらじいちゃんとばあちゃんとはしばらくの間お別れ。僕は兄さんに手を引かれて受付へ向かい、手続きを終わらせる。


『いよいよだね名前』

『う、うん』

『代表になる。そして、一緒に全国大会のフィールドを走るんだ』


こちらを振り返った兄さんがこぶしを突き出す。それを見て、僕もこぶしを突き出し、兄さんのそれに軽く当てた。



『勿論!!』




***



『なあ、あの人苗字悠じゃないか?』

『マジ? 自信なくなってきた……』


通された場所へ入ると、騒がしい中聞こえたその声は、兄さんに関するものだった。改めて兄さんが有名なんだってことを再認識させられたよ。

……それよりも、想像より人が多いなぁ。何人いるんだろう?


『苗字悠の隣にいる奴は誰だ?』

『弟じゃね?』

『へー、弟がいたんだ。そっくりじゃん』


……兄さんの隣にいる奴、弟?
どう見たって兄さんの傍にいるのは僕だけ。というころは。



『名前。お前のことだよ』

『き、聞こえてたの!?』

『はっきりとね。んで、相変わらず名前は男の子と誤認されてるみたい』


ひそひそ声でに兄さんが言ったけど……どうやら僕は男の子と間違えられているらしい。地元で練習試合するときも男の子に見間違えられるくらいだし……もういいや。

それに、僕が望んでこの髪型にしているんだ、間違えられても仕方ないよね。


『それに、俺に似てるってさ。血がつながった兄妹なんだから当たり前だろってな』

『そ、そうだね……?』


戸惑う僕と、どこか楽しそうな兄さん。なんで楽しそうなのか、今思い出してもよくわからないなぁ……。
けど、この髪型兄さんを真似した結果気に入っちゃったんだよねぇ。


『けど、今はお前がその髪型で良かったと思ってる』

『どうして?』


そう問うと、兄さんの手が自分の頭に乗る。
首を上げて兄さんを見れば、僕とおそろいの金色のような瞳と目が合った。


『この大会で名前は女の子一人。けど、これは全体に公開されているわけじゃない。きっと参加者の誰もが男しかいないって思ってるよ』

『えっと、つまり……?』

『お前を守りやすいってことさ』

『!』


兄さん、僕が女の子だからサッカーするなって言われていたこと、覚えてくれていたんだ……!
気にしていないと言えば嘘になる。けど、特別感から特に気にしていなかった。可能性として言われるかもしれないからと兄さんは気にかけてくれていたんだ……!


『じゃ、じゃあ。女の子って言わないほうがいい……?』

『ああ』

『それなら大丈夫! チームでも同じような状態だし!』

『それもそうだな』


……実は僕、初め空のこと女の子って思ったんだよね。今も思うときがあるけど。だって明らかに女である僕よりしぐさが可愛いんだもん……。


『うん? ……名前、もうすぐ始まるよ』


兄さんにそう声を掛けられた直後。



『お集まりいただき、ありがとうございます。これより、フットボールフロンティア小学生部門、九州地方代表選別大会を開催いたします』



壇上に上がり、マイクの前で立っていたのは男性だ。
ついに始まるんだ、選別大会が……!





2024/05/26


prev 

戻る














×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -