二つの光が照らす時



選別大会の会場がある福岡へ到着した僕たち。
普通ならホテルを取るんだけど、どうやら血縁関係のある人が福岡に住んでいて、会場からそれほど離れていない場所に家があるようで、その人たちの家にお邪魔することになっている。

その人の家に着いたわけだけど……。



『立ち向かう……居?』

『たちむかいって読むんだよ』


表札に書いてあった文字が読めないでいると、兄さんが教えてくれた。知ってる感じだけど、組み合わせで読み方が変わる漢字ってあるよねー。


『すごい! なんで兄さん分かったの? もしかして会ったことあるとか?』

『ないよ。それに俺、ずっとお前と一緒だっただろ……』


それもそうか……。ごめんなさい、兄さん。
僕と兄さんは二歳差だし、仮にすごく小さいときにあってたとしても覚えてないかも……?


『名前ちゃーん、悠くーん!』

『ばあちゃんが呼んでる!』

『いこっか』


ばあちゃんに呼ばれ、声の聞こえた方へ兄さんと一緒に向かうと、そこにはじいちゃんとばあちゃん、そして知らない女の人がいた。


『今日からお世話になる立向居さんよ。挨拶しなさい』

『お世話になります。俺は悠、こっちは妹の名前です。よろしくお願いします』

『よろしくお願いします!』

『よろしくね、名前ちゃん、悠くん。朝早くからお疲れ様、けど昼過ぎにはもう出発するんですよね?』


僕たちに挨拶をした後、立向居さんはじいちゃんとばあちゃんに確認を取る。そうそう、実は当日入りだったんだ。


『ええ。ここからなら地下鉄に乗ればそんなにかからないし、12時頃には出発予定よ』

『まあそうなんですね! では、それまでには食事をとれるように準備しますね!』


さあ、上がって下さい!
そう言われ、僕たちは立向居家にお邪魔することになった。止まる場所もここで、たしか1泊2日って言われたよ!


『あ、そうだ!』


荷物を置いていると、立向居さんが僕と兄さんに話しかけてきた。
なんだろうと思いつつも、僕は立向居さんを見る。


『名前ちゃん、悠くん。二人はいくつ?』

『僕は9歳だよ。小学三年生!』

『俺は今年で11です』

『そうなのね! という事は、名前ちゃんは勇気と同い年か』

『ゆうき?』


立向居さんから出てきたゆうきという人物に首をかしげる。人の名前なのは分かるけど、一体誰だろう?


『私の子供でね、名前ちゃんと同い年なのよ。それに、あの子もサッカーしているからよければ仲良くしてね。今日は朝早くから遊びに行っているからいないんだけど、二人が返ってくる頃には戻ってきていると思うから』


立向居さんの子供……それも、同い年。
つまり、関係を言うと……。


『俺たちにとって従兄弟ってわけか』

『そうなの?』

『ああ。じいちゃんに聞いた話だと、父さんとさっきあった女の人が兄妹なんだって。だから、そのゆうきって子は俺たちにとって従兄弟になるんだ』


血縁関係っていうものはまだよくわからないけど、同年代の人がいるってものはテンションが上がるよね!

ちなみにどんな感じでコンタクトを取ったのかというと……じいちゃんとばあちゃんが立向居さんと何度か会ったことがあって、その際に福岡に住んでいたことを知っていたから今回大会で泊めてくれないかとお願いしたところ、快く了承してもらえたって話らしい。


『終わったら会えるって言ってたよね! どんな子か楽しみ!』

『けど、まずは目の前のことに集中しないと。大会はほぼぶっつけ本番みたいなもの。サッカーだから個人戦はないはず……予想できるのは、知らない人とランダムでチームを組まされるとかかな』

『えぇ、兄さんと離れちゃうの!?』

『あくまで予想だよ。もし俺の予想が合っていたとしても、外れていたとしても……なかなか厳しい状況を作ってくれたものだよ、協会は』


こんなところまで予想できるなんて、すごいな兄さん……。今改めて考えてもすごいって思ってしまう。
けど、当時の僕はそのすごさよりも兄さんと離れてしまうということに意識が向いていた。


『僕、不安になってきた……兄さんは緊張しないの?』

『勿論しているさ。でも、みんなの期待を背負ってるから、緊張で失敗なんてできないよ』


そうだ。みんなの期待を背負ってるんだ。
それにさっきまでの自信を思い出すんだ……よし、大丈夫。もう昔のように知らない人ばかりで怯えたりしない。でなきゃ、チームを作った意味がないでしょ?





2024/05/26


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