二つの光が照らす時



サッカー協会から送られたFF参加のための代表選別大会。
その会場は僕たちが住む場所では行われない。なんだったら日帰りで帰れるような距離ではない。つまり、会場がある場所へ泊まり込みとなるのだ。

だんだんその日は近づき、そして遂に……地元を離れ会場のある場所……福岡へ移動する日が。



『ふわあぁ……うぅ、眠い』



時刻は朝六時代。
普通だったら起きて間もないくらい時間帯だ。
しかし、この時間から移動しないといけなかった。


『到着までは時間がかかるから、飛行機の中では寝られるよ』

『はーい』


兄さんの言葉に眠気が混じった返事をし、前を歩くため重い瞼を開ける。すると、そこには見知った顔が!



『『『名前、悠さん!! 大会頑張って!!!』』』

『お前たち、こんな朝早くから……!』


そう、チームメイトのみんなが見送りに来ていたんだ。
出発日時は話していたけど、まさか見送りに来てくれるなんて思ってなかったから、一瞬で眠気が飛んだよ。


『俺たちの自慢の代表なんだ。見送るのが当然でしょ』

『僕たちの分まで頑張ってきてください!』

『現場には行けないけど、こっから応援してるぜ!』


音也兄さん、心兄さん、真太郎がそう声をかけてくれた。ほかのみんなも、それぞれ言葉をかけてくれて。


『みんな、ありがとう……!』

『ここまでされちゃあ、代表に選ばれないとだな』


残念ながら出発の時間が来てしまい、みんなと思う存分話すことはできなかった。けど、良い報告と共に帰ってくることを約束したんだ。一生の別れじゃない、良い結果をお土産に戻ってくるから!



『みんなの期待に応えないとだね!』

『あまりプレッシャーに感じるなよ。緊張で実力を出せなかったら元も子もないからな』

『会場の大きさにビビるかもしれないけど、たぶんすぐ慣れるよ。もう昔の僕じゃないもん!』


昔の僕だったら緊張していただろうし、実力を出せないまま終わるかもしれない。けど、チームメイトと一緒にいろんなチームと練習試合を繰り返したことで自身を着けることができたし、堂々とプレイすることも覚えた。

最初から実力以上を出せるとは思ってないけど、最後までそんな状態でいるようなことはない。絶対に!


『その意気だよ、名前』


完全に目が覚めた僕は、兄さんと一緒に来てくれたじいちゃん、ばあちゃんと話に盛り上がった。じいちゃんとばあちゃんは大会という場所で僕たちがサッカーをすることが嬉しいようで、ずっとニコニコしてたなぁ。


『二人のかっこいいところが早く見たいわぁ』

『この一眼レフで綺麗に撮ってやるからな!』


じいちゃんとばあちゃんの話を聞いていた時、ふと兄さんが隣の席を見ていたことに気づく。
そこには家族と思われる団体がいた。

再び兄さんの方へ視界を向けると、兄さんはその一団を少し寂しそうに見ていた。
……僕は両親の顔を覚えていないから、兄さんと同じ気持ちにはなれない。けど、父さんと母さんが生きていたら、あんな感じの日常もあったのかな。


『兄さん!』

『!? ど、どうかしたか?』

『じいちゃんとばあちゃんにあの技、見せてやろうよ!』


気持ちを理解できなくとも、兄さんの支えにはなれるはず。
別のことに意識を向かせることくらいしか、当時の僕にはできなかったけど……考えてしまうよりはマシじゃないかって思うんだ。


『……ああ。”ツイン・エンジェル”で決めような』

『うん!』

『ついんえんじぇる?』

『俺と名前の必殺技だよ。ずっと練習してたんだ』

『ほぉ! 見るのが楽しみだよ!』


こんなことしかできないけど、兄さんが元気になってくれればそれでいいんだ。
だって、兄さんは僕を助けてくれた人で、誰よりも大切な人なんだから。





2024/05/26


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