二つの光が照らす時



『FFからの招待状?』

『そんなもの来てないよ』


次の日。
学校は休みで、僕たちの練習日でもある日。

いつもの練習場所に着けば真太郎と颯太の姿があり、二人に招待状について聞いてみたんだけど、二人の元には届いていなかった。


『そっか……うわっ!?』

『おっはよ〜名前ちゃん、真太郎くん、颯太くん!』

『おはよう』

『お、おはよう空、亜久……空、急に飛びつくのはやめってって言ったじゃん……』

『えへへ』


真太郎と颯太と話していた僕の背中に飛びついてきたのは空だ。その後ろからのんびりと亜久が歩いて来ているのが見えた。


『あ、そうだ。ねぇ空、亜久。二人はさFFから招待状来なかった?』


空を引きはがしながら、真太郎と颯太に聞いた内容を尋ねる。しぶしぶと言った様子で離れた空は亜久と目を合わせた後、こちらを見た。


『ボクのところに来てないよ。招待状って感じのやつ』

『新聞なら入ってた』


空と亜久のとこにも来てなかったのか……。
そう思っていると、『名前』と僕を呼ぶ兄さんの声が聞こえた。


『四人に聞いてみたか?』

『招待状のことなら聞いたよ。けど、みんな来てないって』

『そうか……俺も聞いてみたんだけど、来てないみたいでさ』


兄さんは僕が尋ねた四人以外に聞いたみたい。けど、誰の元にも来ていなかったそうで。


『あと聞いていないのは、まだ来てない翆だけだな……おっ』


兄さんの目線を辿れば、そこには今話に上がっていた翆兄さんがあくびをしながら歩いて来ているところだった。


『はよーございます。てか、そんなに集まってどうしたんだ?』

『招待状の話を……って、翆兄さん髪濡れてる! また朝からサーフィン行ったでしょ!』

『なんだよ名前、誘ってもらえなくて寂しかったのか? わりー』


だる絡みしてきた翆兄さんには、とりあえずタオルをぶん投げておいてっと……。まぁ、なんなくキャッチされたけど。


『で? さっき招待状って聞こえたけど、なんの招待状なんだ?』

『フットボールフロンティア。FFからの招待状さ。全国大会代表を決める選手選抜大会へのね。サッカー協会から来ているから、正真正銘本物で、開かれることはよほどのことがない限りすでに確定していると見ていい』

『フットボールフロンティア!? マジかよ、そんなのに出られるかもしれねー招待状が……けど、俺のとこには何もなかったな』

『翆もか……』


翆兄さんにも来てないとは。
サッカー協会はどんな基準で対象者を選んでいたんだろう。今でも分からないや。本部のみが知るってやつだね。


『その言いぶりだと、悠さんとこには来てるってことか?』

『ああ。あと、名前にもね』

『そうなの!? 名前ちゃん、すごいすごい!』

『流石キャプテン』


そういえば僕の元に招待状来てたって話、尋ねた四人には言ってなかったや……。兄さんにばらされたことで、同級生4人組に詰め寄られたんだよね。


『けど、これはさっきも言った通り代表を決めるための大会だ。俺と名前は代表になれるかもしれないってだけだ。どのような基準で決められるかは分からないから、勝てばいいのか、自分の実力をアピールすればいいのか……そこは大会側の評価次第だから何とも言えないけど、選ばれなければ代表にはなれない』

『けど、二人なら選ばれますよ』

『いや、むしろ入ってもらわないと! 俺たちの代表としてさ!』


修二兄さんと萄兄さんの言葉に対し、他メンバーも頷いていた。


『だったら、名前ちゃんと悠さんは別で練習したほうがいいんじゃないかな』

『いいのか?』

『大丈夫っすよ。悠さんからもらった練習メニュー、まだまだ課題点が残ってますし』

『分かった、ありがとう心、音也』


心兄さんと音也兄さんの言葉もあって、僕と兄さんは別々で練習することになった。その間、みんなをまとめる役として剛兄さんと翆兄さんが名乗り上げては軽い口げんかになってた……。



『あ、そうだ。名前、面白い話があるぞ』



兄さんと一緒に別の場所に移動していた時。
少し楽しそうな雰囲気で兄さんが声をかけてきた。面白い話って一体なんだろう?


『今回の選手選別大会、お前が最年少だ』

『!』

『そして、女の子は名前ただ一人』


これ、すごいことだからな?
……最年少、唯一の女の子。
こんな特別なことが同時に2つも付いてきたとなれば、自信にならないわけがなかった。


『僕、すごいんだ』

『ああ。俺はお前が大会で選ばれる自信しかないよ』

『兄さんもいないとやだ』

『ははっ。俺だって選ばれるように頑張るさ。FFなんてサッカーやってる人からすれば、出たい大会なんだぞ』


だから、一緒に出られるように頑張ろうな
この言葉は、大会までの練習で僕を支え続けくれたんだ。





2024/05/26


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