二つの光が照らす時



僕が人間不信に陥り、それを治すために兄さんが始めてくれた自分たちだけのサッカーチームは、一年もたたず、半年くらいで11人が揃った。

徐々に知名度も上げていき、地元では子供たちだけのサッカーチームだからと舐めてはならないと言われるほどまでに成長した。


おかげで様々なチームと練習試合をすることができて、そこで成長できた実感や、直さなきゃいけない課題を見つけられた。

そんな日々を過ごしていた中、日常が大きく変わる起点としてあるものが届いた。


『名前ちゃん、悠くん。二人宛てにお手紙きてるわよ』


それはあの日から約二年が経ち、僕が小学三年生、兄さんが小学五年生に上がったころの出来事だった。
帰宅した時にばあちゃんから言われた手紙の存在。僕は勿論、兄さんも知らないようで首をかしげていた。


『手紙?』


兄さんはばあちゃんから2枚の手紙を受け取り、僕宛てのものを渡してくれた。それを開けると僕の名前が一番上に書かれた紙が目に入った。

難しいことが書いてあって当時の僕にはわからなかったけど、今ならちょっとだけわかる。この時僕が一番に開いた紙は、僕本人に充てられた招待状だった。


『サッカー協会……! 名前、それ見せてくれる?』

『え、うん』


兄さんはまだ封を開けていなかったみたいで、遠くに開いていた僕の紙を覗き込んだ。

あぁ、そうそう。招待状って言ったと思うんだけど、これはサッカー協会からの招待状だよ。何の招待かって?


『……! 小学生部門の全国大会、それの選手選抜試合招待だって……!?』


今兄さんが言った通りの内容ではあるんだけど……当時の僕には名前だけ言われてもピンとこなかったんだ。


『どういうこと?』

『サッカーの全国大会。その大会に出られる選手を選ぶ試合に俺と名前は参加する資格を得たってことだ』

『え、全国大会に出られるの!?』

『選手に選ばれたらな。これはその全国大会に出る選手を決める試合の参加券だな』


兄さんの説明でやっと理解できた。
そもそも、サッカー協会という組織があることもこの時知ったんだよね。


『フットボールフロンティア。FFとも言われるんだけど、それの小学生部門に出られるかもしれない……!』


それも、俺たち兄妹が!
この時の兄さんの笑顔はいつまでも忘れることはないだろう。それほどに僕と出られることを嬉しそうにしていた。

けど、それは僕も同じで。


『絶対に選ばれようね、兄さん!!』


二年前のある日に思い描いた必殺技”ツイン・エンジェル”は完成はしていたけど、当時から想像していた威力には到達していなかった。
それでも、僕たちの必殺技を大会、それも全国という舞台で見せられる。それが何よりも楽しみだったんだ。


『内容を見るに、各地方から20人ずつ人を抽出するみたいだ。俺たちは九州地方の会場に招待されているから、もし代表に選ばれたら九州地方の代表として参加するって感じか』

『ちゅうしゅつって何?』

『そうだな……たくさんの人の中から決まった数だけ選ぶって意味だな。今回で言えば、参加人数が何人かは分からないけど、たくさんの中から20人だけ選ばれるって感じだ』

『分かったよ、兄さん!』


兄さんの説明で理解したと同時に浮かんだことがあった。
それは……。


『ねぇねぇ兄さん、空と亜久たちにもこの招待状届いてるのかなぁ?』


チームメイトにもこの招待状は届いたのか、ということだ。
中学からは部活動として大会に参加できるけど、時代だったのかそれとも小学生ではクラブ程度だったからなのか。

定かではないけど、学校を通してと言うより個人への正体だった。多分、本人確認とかで所属している学校とかは把握していたと思うけどね。


『どうだろう……この招待状の存在を今日知ったから、届いているのならもらった人がいるかもしれないな』

『もし届いていたらみんなで全国大会に出られるのかな!?』

『うーん、どうだろう。出られるのなら嬉しいけど、俺たちのチームは学校公認じゃなく、個人の団体だ。全員で出場は現実的じゃない……難しいと思う』

『そ、そっか……』


今だから分かるけど、当時の僕かなり夢物語を言ってたなぁ。それほどにチームメイトが大好きだし、信頼してたんだ。


『とにかく明日練習で集まるんだ。みんなに聞いてみよう』

『うん!』


みんなに届いているといいな、招待状……!
そう思いながら次の日を迎えた。





2024/05/26


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